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第20話:倉庫帰還とさらなる脅威の暗示
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どうにか廃墟の街を抜け、夜明け前に倉庫へ戻ってきた俺たち。トラックの荷台には子ども連れの女性、負傷者、さらに疲れ切った数名の男性などが詰め込まれていて、狭いどころの騒ぎじゃない。
「すみません、怪我人が多くて……倉庫にお邪魔させてもらいます」
「大丈夫です。狭いですけど、今はここが一番安全だと思うので」
陽菜が優しい声で生存者を迎え、マユも慌てて寝具をかき集めて簡易のベッドスペースを作る。サヤは出入り口を警戒しながらライフルを構え、自警団の偵察が近づいていないか目を光らせていた。
「人数が増えるのはいいけど、その分食料の消費も一気に増えるわね」
マユの言葉に、俺は苦い顔をする。実際、今の備蓄ではすぐに底をついてしまうだろう。しかも子どもや負傷者には栄養と安静が必要だ。いったいどうやって維持していくのか?
「何とか探しに行くしかないだろうな。俺もサヤも陽菜も、少し休んだら物資探索に出るかもしれない」
「私も手伝う。連れてきた人々は、一部が回復すれば自警団との対抗戦力になるかもしれないし」
サヤがちらりとトラックを見て呟く。倉庫には人が増え、しばらくは混乱が続きそうだが、これで自警団に対抗できる可能性が出てきたのも事実だ。もっとも、彼らをまとめあげるのは至難の業かもしれない。
「まあ、まずはみんなの体力回復が最優先だな。俺たちもヘトヘトだし」
トラックのドアを閉め、鍵をかけておく。続々と倉庫に運び込まれる新たな生存者たちにとって、ここは一時的な避難所。だが、長くは持たない。さらに外には大型モンスターの足音すら感じられるようになった。
そんな不安の中、サヤの通信機がまたノイズを発する。さっきまでの救難信号とは違う、何か別のチャンネルからの割り込みっぽい。注意深く耳を澄ましてみると、
「……軍部――研究……試作体……脱走……危険……情報を共有されたし……」
フラッシュのように断片的なワードが流れ、すぐに通信が途絶えた。サヤは目を見開き、固い表情を浮かべる。
「試作体が脱走? まさか、人間やモンスターを実験していた研究施設の話か」
「待てよ……そんな噂、本当にあったのか? 異世界技術とか言ってたけど」
耳を疑いたくなるが、サヤが考え込む姿を見ると、どうやら軍内部ではそうした危険な実験をしていた可能性が高そうだ。もし試作体が街に放たれたなら、自警団やモンスター以上の脅威になるかもしれない。
「とにかく、まだ情報が少ない。だけど、何か……嫌な胸騒ぎがする」
倉庫の裏で生存者たちが必死に寝床を確保し、子どもが「お腹すいた……」と訴える声が聞こえる。こんなに多くの人々を抱えながら、未知の試作体や大型怪物に対抗するのは容易じゃない。
「だが、逃げても始まらない。人が集まるなら、それだけ手も増えるってことだ。俺たちは……この状況を乗り越えるしかない」
そう自分に言い聞かせていると、工房の周辺で妙に大きな足跡の痕が見つかったと誰かが知らせに来た。広い爪痕が地面を抉り、まるでドラゴンか何かのような巨大生物を想像させる。
「嘘だろ、こんな都心部にドラゴン級の化け物がいるとか、勘弁してくれよ」
サヤは硬い顔でその足跡を眺め、「軍の資料に似たような例があった。ヘリが墜落した事例もある」と不穏なことを言う。なんだそれ。もうモンスターの枠を超えている。
「これは……マジでシャレにならないな。大人数で集まっても、下手にドラゴン相当の化け物が襲ってきたら一瞬で終わるぞ」
重苦しい空気が漂う中、倉庫に増えた人々からも不安の声が漏れ聞こえる。もはやモンスター、自警団、そして軍の陰謀――三重苦どころじゃない混乱の中に俺たちは放り出されているんだ。
「だけど、諦めちゃいない。ここまで来たら、もう必死にやるしかないんだ」
新たな脅威の暗示を前に、俺は拳を握りしめる。サヤと視線を交わし、マユと陽菜もぎこちなくうなずく。これからが正念場だ。人も増えれば問題も増えるが、その分だけ力になってくれる人もいるだろう。
「とりあえず、みんなが落ち着いたら作戦会議だな。自警団の再襲を警戒しつつ、今度はドラゴン級の化け物まで見据えないと」
頭痛が再びズキズキと疼き、UIがノイズを発する。「権限レベルA到達間近――制御不安定」というメッセージがちらついている。まるで俺の能力が誰かに操作されているようで気味が悪い。
「何があっても、俺は生き延びる。それでみんなを守るんだ……」
自分自身を鼓舞しながら、増えた仲間たちのいる倉庫へと足を向ける。大きくなる戦力と、迫り来る未知の脅威。歯車は否応なく回り続け、終末のサバイバルはさらなるステージへと進もうとしていた。
――多くの生存者を救い帰還した倉庫だが、圧迫する物資不足と巨大足跡の衝撃。
“制御不安定”と表示されるUIに不穏な影がちらつき、物語は次なる局面へと動き出す。
「すみません、怪我人が多くて……倉庫にお邪魔させてもらいます」
「大丈夫です。狭いですけど、今はここが一番安全だと思うので」
陽菜が優しい声で生存者を迎え、マユも慌てて寝具をかき集めて簡易のベッドスペースを作る。サヤは出入り口を警戒しながらライフルを構え、自警団の偵察が近づいていないか目を光らせていた。
「人数が増えるのはいいけど、その分食料の消費も一気に増えるわね」
マユの言葉に、俺は苦い顔をする。実際、今の備蓄ではすぐに底をついてしまうだろう。しかも子どもや負傷者には栄養と安静が必要だ。いったいどうやって維持していくのか?
「何とか探しに行くしかないだろうな。俺もサヤも陽菜も、少し休んだら物資探索に出るかもしれない」
「私も手伝う。連れてきた人々は、一部が回復すれば自警団との対抗戦力になるかもしれないし」
サヤがちらりとトラックを見て呟く。倉庫には人が増え、しばらくは混乱が続きそうだが、これで自警団に対抗できる可能性が出てきたのも事実だ。もっとも、彼らをまとめあげるのは至難の業かもしれない。
「まあ、まずはみんなの体力回復が最優先だな。俺たちもヘトヘトだし」
トラックのドアを閉め、鍵をかけておく。続々と倉庫に運び込まれる新たな生存者たちにとって、ここは一時的な避難所。だが、長くは持たない。さらに外には大型モンスターの足音すら感じられるようになった。
そんな不安の中、サヤの通信機がまたノイズを発する。さっきまでの救難信号とは違う、何か別のチャンネルからの割り込みっぽい。注意深く耳を澄ましてみると、
「……軍部――研究……試作体……脱走……危険……情報を共有されたし……」
フラッシュのように断片的なワードが流れ、すぐに通信が途絶えた。サヤは目を見開き、固い表情を浮かべる。
「試作体が脱走? まさか、人間やモンスターを実験していた研究施設の話か」
「待てよ……そんな噂、本当にあったのか? 異世界技術とか言ってたけど」
耳を疑いたくなるが、サヤが考え込む姿を見ると、どうやら軍内部ではそうした危険な実験をしていた可能性が高そうだ。もし試作体が街に放たれたなら、自警団やモンスター以上の脅威になるかもしれない。
「とにかく、まだ情報が少ない。だけど、何か……嫌な胸騒ぎがする」
倉庫の裏で生存者たちが必死に寝床を確保し、子どもが「お腹すいた……」と訴える声が聞こえる。こんなに多くの人々を抱えながら、未知の試作体や大型怪物に対抗するのは容易じゃない。
「だが、逃げても始まらない。人が集まるなら、それだけ手も増えるってことだ。俺たちは……この状況を乗り越えるしかない」
そう自分に言い聞かせていると、工房の周辺で妙に大きな足跡の痕が見つかったと誰かが知らせに来た。広い爪痕が地面を抉り、まるでドラゴンか何かのような巨大生物を想像させる。
「嘘だろ、こんな都心部にドラゴン級の化け物がいるとか、勘弁してくれよ」
サヤは硬い顔でその足跡を眺め、「軍の資料に似たような例があった。ヘリが墜落した事例もある」と不穏なことを言う。なんだそれ。もうモンスターの枠を超えている。
「これは……マジでシャレにならないな。大人数で集まっても、下手にドラゴン相当の化け物が襲ってきたら一瞬で終わるぞ」
重苦しい空気が漂う中、倉庫に増えた人々からも不安の声が漏れ聞こえる。もはやモンスター、自警団、そして軍の陰謀――三重苦どころじゃない混乱の中に俺たちは放り出されているんだ。
「だけど、諦めちゃいない。ここまで来たら、もう必死にやるしかないんだ」
新たな脅威の暗示を前に、俺は拳を握りしめる。サヤと視線を交わし、マユと陽菜もぎこちなくうなずく。これからが正念場だ。人も増えれば問題も増えるが、その分だけ力になってくれる人もいるだろう。
「とりあえず、みんなが落ち着いたら作戦会議だな。自警団の再襲を警戒しつつ、今度はドラゴン級の化け物まで見据えないと」
頭痛が再びズキズキと疼き、UIがノイズを発する。「権限レベルA到達間近――制御不安定」というメッセージがちらついている。まるで俺の能力が誰かに操作されているようで気味が悪い。
「何があっても、俺は生き延びる。それでみんなを守るんだ……」
自分自身を鼓舞しながら、増えた仲間たちのいる倉庫へと足を向ける。大きくなる戦力と、迫り来る未知の脅威。歯車は否応なく回り続け、終末のサバイバルはさらなるステージへと進もうとしていた。
――多くの生存者を救い帰還した倉庫だが、圧迫する物資不足と巨大足跡の衝撃。
“制御不安定”と表示されるUIに不穏な影がちらつき、物語は次なる局面へと動き出す。
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