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聖女が引き起こしたという「奇跡」の実態をさらに探るため、私は新しい接触先を見つけようと王宮内を歩き回っていた。
すると、偶然にも聖女に仕えている侍女の一人と顔を合わせる機会が訪れる。
薄暗い廊下の片隅で、その侍女は深いため息をついていた。
「失礼ですが、もしかして聖女様のご侍女ではありませんか?」
私が声をかけると、侍女は一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに視線を落とした。
「ええ……ですが、私などが伯爵令嬢にお話しするようなことは……」
遠慮がちに答える彼女の姿には、何か重いものを背負っている気配が感じられる。
「私はただ、聖女様の祈りによって被害を受けている方がいるのではないかと心配しているのです。あなたが見たこと、感じたことを少しでも聞かせていただければ、と」
そう丁寧に頼み込むと、侍女はしばらく逡巡していたが、やがて意を決したように口を開いた。
「……本当は、黙っていた方が身の安全は保障されるのでしょうけど。私も胸が痛くて仕方ないのです。聖女様の儀式の裏で奇妙な薬品や器具を用意するよう指示されることがあり、正直、その意図がわからなくて」
その言葉に私の心は大きく揺れる。
侍女が言うには、聖女は祈りの際に特定の液体や粉末をこっそり持ち込むことがあるという。
しかも、それを取り扱う際には誰も近づけないようにし、後片付けは聖女の“取り巻き”が厳重に行う。
「爆発音や煙が発生して、周囲が慌てる場面にも遭遇しました。でも、それを“神の奇跡”だと無理やり言いくるめているように思えます」
侍女の言葉は衝撃的だった。
奇跡と呼ばれていたあの騒ぎが、実は怪しげな薬品による現象なのだとしたら、すべてが大掛かりな演出に過ぎない可能性がある。
「それはずいぶん……大胆な手口ですね。でも、なぜそんなことをするのでしょう?」
私が素直な疑問を口にすると、侍女は首を横に振った。
「分かりません。もしかすると、誰かを脅しつけたり、偽りの成果を見せつけたりする目的があるのかもしれません」
侍女は急に周囲を警戒しはじめ、声をさらに落とす。
「ここだけの話、私の同僚は聖女様の正体を探ろうとして捕らえられたか、あるいは追放されたようなのです。だから、私もいつまでも無事でいられる保証はなく……」
その言葉を聞いて、私の背筋に冷たいものが走る。
以前から“聖女付きの女中が行方不明になった”という噂は耳にしていたが、どうやら事実らしい。
「お気をつけください。伯爵令嬢がここまで介入するのは危険です。アレクサンドル殿下が後ろ盾にいる以上、何が起こるか……」
侍女は心配そうな表情で私を見つめる。
私は微苦笑しながら、小さく首を振った。
「ありがとうございます。でも、私はもう引き返す気はありません。彼らが何を企んでいるのか、最後まで見届けたいのです」
侍女は申し訳なさそうに顔を伏せ、
「私が知っているのは、聖女様が祈りの儀式で“薬品”を使うらしいということと、儀式の後に体調を崩す人が多数いるという事実だけです。大した情報ではありませんが……」
それでも、これは大きな前進だ。
私は侍女に礼を言い、何かあったら連絡をほしいと伝えてから、その場を後にする。
こうして、聖女の“奇跡”の正体がますます怪しくなってきた。
アレクサンドル殿下は彼女を絶対的に支持しているが、その背後には何か恐ろしい目的が潜んでいるのではないか。
私は、この謎を解き明かすために更なる手段を講じる必要があると思いながら、再び王宮の廊下を歩き始めた。
すると、偶然にも聖女に仕えている侍女の一人と顔を合わせる機会が訪れる。
薄暗い廊下の片隅で、その侍女は深いため息をついていた。
「失礼ですが、もしかして聖女様のご侍女ではありませんか?」
私が声をかけると、侍女は一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに視線を落とした。
「ええ……ですが、私などが伯爵令嬢にお話しするようなことは……」
遠慮がちに答える彼女の姿には、何か重いものを背負っている気配が感じられる。
「私はただ、聖女様の祈りによって被害を受けている方がいるのではないかと心配しているのです。あなたが見たこと、感じたことを少しでも聞かせていただければ、と」
そう丁寧に頼み込むと、侍女はしばらく逡巡していたが、やがて意を決したように口を開いた。
「……本当は、黙っていた方が身の安全は保障されるのでしょうけど。私も胸が痛くて仕方ないのです。聖女様の儀式の裏で奇妙な薬品や器具を用意するよう指示されることがあり、正直、その意図がわからなくて」
その言葉に私の心は大きく揺れる。
侍女が言うには、聖女は祈りの際に特定の液体や粉末をこっそり持ち込むことがあるという。
しかも、それを取り扱う際には誰も近づけないようにし、後片付けは聖女の“取り巻き”が厳重に行う。
「爆発音や煙が発生して、周囲が慌てる場面にも遭遇しました。でも、それを“神の奇跡”だと無理やり言いくるめているように思えます」
侍女の言葉は衝撃的だった。
奇跡と呼ばれていたあの騒ぎが、実は怪しげな薬品による現象なのだとしたら、すべてが大掛かりな演出に過ぎない可能性がある。
「それはずいぶん……大胆な手口ですね。でも、なぜそんなことをするのでしょう?」
私が素直な疑問を口にすると、侍女は首を横に振った。
「分かりません。もしかすると、誰かを脅しつけたり、偽りの成果を見せつけたりする目的があるのかもしれません」
侍女は急に周囲を警戒しはじめ、声をさらに落とす。
「ここだけの話、私の同僚は聖女様の正体を探ろうとして捕らえられたか、あるいは追放されたようなのです。だから、私もいつまでも無事でいられる保証はなく……」
その言葉を聞いて、私の背筋に冷たいものが走る。
以前から“聖女付きの女中が行方不明になった”という噂は耳にしていたが、どうやら事実らしい。
「お気をつけください。伯爵令嬢がここまで介入するのは危険です。アレクサンドル殿下が後ろ盾にいる以上、何が起こるか……」
侍女は心配そうな表情で私を見つめる。
私は微苦笑しながら、小さく首を振った。
「ありがとうございます。でも、私はもう引き返す気はありません。彼らが何を企んでいるのか、最後まで見届けたいのです」
侍女は申し訳なさそうに顔を伏せ、
「私が知っているのは、聖女様が祈りの儀式で“薬品”を使うらしいということと、儀式の後に体調を崩す人が多数いるという事実だけです。大した情報ではありませんが……」
それでも、これは大きな前進だ。
私は侍女に礼を言い、何かあったら連絡をほしいと伝えてから、その場を後にする。
こうして、聖女の“奇跡”の正体がますます怪しくなってきた。
アレクサンドル殿下は彼女を絶対的に支持しているが、その背後には何か恐ろしい目的が潜んでいるのではないか。
私は、この謎を解き明かすために更なる手段を講じる必要があると思いながら、再び王宮の廊下を歩き始めた。
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