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第29話:地底の魔物との激突
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下層に転移した先は、思いのほか広大な空間だった。
天井らしき部分は闇に溶け込み、壁際には巨大な岩が突き出している。
そこかしこに地下水が滴る音が響き、薄ら寒さが肌を刺す。
「アシュリー、この先のマップはあるのか?」
「ないわ。上層の構造すら解析途中なのに、下層まで調べた人はいないのよ。完全な未踏領域ってことね」
「やっべー、燃えてきた!」
俺がそう言うやいなや、ブレイドが鋭い視線で制止の手を挙げる。
「シャレじゃ済まんぞ。奥から魔物の声が聞こえる。構えろ!」
遠くから唸り声のような不気味な音が近づいてくる。
暗がりから姿を現したのは、体長が人間の倍はある巨大なトカゲのような生物。
鱗はどす黒く、背に生えたトゲから紫色の液体が垂れている。
「毒か……厄介そうだな。みんな、リリィの魔道具を身につけておいて正解だったかも」
「ガルス、行くぞ。ブレイドは盾を前に出して、アシュリーは援護射撃。サラ、回復とサポートを頼む!」
ブレイドとガルスが前衛で魔物を迎え撃ち、アシュリーが素早い動きで後方から矢を放つ。
俺は安全圏で様子を見ながら、何かあればアイテムを渡す準備だ。
「うおおおっ!」
ガルスの大剣が魔物の鱗を斬り裂く。
しかし、頑丈なうえに毒のトゲがあるため、接近戦はリスキーだ。
ブレイドも盾で攻撃を受け止めるが、毒液が飛び散り、シールドが溶けそうな音を立てる。
「チッ、装備がもたねえ!」
アシュリーが特製の毒矢を魔物の首元へ放つと、かすかに悲鳴のような声が聞こえた。
弱点かもしれない。
しかし魔物はすぐさまバックステップし、逆に大きく口を開いて紫色のブレスを放ってくる。
「まずい、あれは猛毒ブレスだ! みんな避けろ!」
とはいえ、狭い空間では完全に避けきれない。
俺は迷わず背負っていたアイテム袋から「クールベルト」と「毒耐性指輪」の予備を掴み、前衛組に投げる。
「ガルス、ブレイド、これを使え! 少しでも毒の効果を抑えられるはずだ!」
ガルスがとっさにそれを受け取り、ブレイドにも渡す。
毒ブレスを浴びながらも、なんとか動きは鈍らない様子だ。
「助かったぜ、リオン!」
「まだやれるなら、今のうちに反撃だ!」
サラが回復魔法でブレイドのシールドのダメージを軽減し、ガルスとブレイドが同時に魔物へ突撃する。
アシュリーの矢が魔物の注意を引き、その隙にブレイドの斧が頭部を、ガルスの大剣が首元を深く切り裂く。
「ガアァッ……!」
魔物が苦しげにのたうち、やがて動かなくなった。
大きな死骸からは毒液が滴り落ち、床をじゅうじゅうと焼いている。
「ふう、危なかった。流石に下層の魔物は強ぇな」
「全員無事か? 毒の被害は……大丈夫そうだな」
回復と耐性装備があったおかげで、致命傷には至らず済んだようだ。
俺もホッと胸を撫で下ろす。
「リオン、そのアイテムがなかったらヤバかったな。お前の商売道具が命を救うなんて、さすがだぜ」
「ハハ、俺の店の宣伝になりそうだね。『毒耐性もバッチリ、冒険者の強い味方!』なんつってさ」
そんな冗談を言っていると、アシュリーが魔物の死骸に近づき、背中の鱗に興味を示す。
「この鱗、かなり特殊ね。毒を帯びてるけど、逆に武器や防具に加工したら強力な装備が作れそう。リオン、欲しいなら剥ぎ取っておいたら?」
「もちろん欲しい! お店の目玉商品にしてみせるさ。ああ、ガルス、ブレイド、お前らにも分け前や素材料はちゃんと渡すから安心してくれ」
こうして、俺たちは危険な地底の魔物を倒し、新たな素材を入手した。
ダンジョンの奥には、さらに強力な魔物や秘宝が待ち受けているかもしれない。
でも、これで確信した。
やっぱり冒険と商売は切り離せない――レア素材を求めるなら、自分の足で取りに行くのが一番だ。
天井らしき部分は闇に溶け込み、壁際には巨大な岩が突き出している。
そこかしこに地下水が滴る音が響き、薄ら寒さが肌を刺す。
「アシュリー、この先のマップはあるのか?」
「ないわ。上層の構造すら解析途中なのに、下層まで調べた人はいないのよ。完全な未踏領域ってことね」
「やっべー、燃えてきた!」
俺がそう言うやいなや、ブレイドが鋭い視線で制止の手を挙げる。
「シャレじゃ済まんぞ。奥から魔物の声が聞こえる。構えろ!」
遠くから唸り声のような不気味な音が近づいてくる。
暗がりから姿を現したのは、体長が人間の倍はある巨大なトカゲのような生物。
鱗はどす黒く、背に生えたトゲから紫色の液体が垂れている。
「毒か……厄介そうだな。みんな、リリィの魔道具を身につけておいて正解だったかも」
「ガルス、行くぞ。ブレイドは盾を前に出して、アシュリーは援護射撃。サラ、回復とサポートを頼む!」
ブレイドとガルスが前衛で魔物を迎え撃ち、アシュリーが素早い動きで後方から矢を放つ。
俺は安全圏で様子を見ながら、何かあればアイテムを渡す準備だ。
「うおおおっ!」
ガルスの大剣が魔物の鱗を斬り裂く。
しかし、頑丈なうえに毒のトゲがあるため、接近戦はリスキーだ。
ブレイドも盾で攻撃を受け止めるが、毒液が飛び散り、シールドが溶けそうな音を立てる。
「チッ、装備がもたねえ!」
アシュリーが特製の毒矢を魔物の首元へ放つと、かすかに悲鳴のような声が聞こえた。
弱点かもしれない。
しかし魔物はすぐさまバックステップし、逆に大きく口を開いて紫色のブレスを放ってくる。
「まずい、あれは猛毒ブレスだ! みんな避けろ!」
とはいえ、狭い空間では完全に避けきれない。
俺は迷わず背負っていたアイテム袋から「クールベルト」と「毒耐性指輪」の予備を掴み、前衛組に投げる。
「ガルス、ブレイド、これを使え! 少しでも毒の効果を抑えられるはずだ!」
ガルスがとっさにそれを受け取り、ブレイドにも渡す。
毒ブレスを浴びながらも、なんとか動きは鈍らない様子だ。
「助かったぜ、リオン!」
「まだやれるなら、今のうちに反撃だ!」
サラが回復魔法でブレイドのシールドのダメージを軽減し、ガルスとブレイドが同時に魔物へ突撃する。
アシュリーの矢が魔物の注意を引き、その隙にブレイドの斧が頭部を、ガルスの大剣が首元を深く切り裂く。
「ガアァッ……!」
魔物が苦しげにのたうち、やがて動かなくなった。
大きな死骸からは毒液が滴り落ち、床をじゅうじゅうと焼いている。
「ふう、危なかった。流石に下層の魔物は強ぇな」
「全員無事か? 毒の被害は……大丈夫そうだな」
回復と耐性装備があったおかげで、致命傷には至らず済んだようだ。
俺もホッと胸を撫で下ろす。
「リオン、そのアイテムがなかったらヤバかったな。お前の商売道具が命を救うなんて、さすがだぜ」
「ハハ、俺の店の宣伝になりそうだね。『毒耐性もバッチリ、冒険者の強い味方!』なんつってさ」
そんな冗談を言っていると、アシュリーが魔物の死骸に近づき、背中の鱗に興味を示す。
「この鱗、かなり特殊ね。毒を帯びてるけど、逆に武器や防具に加工したら強力な装備が作れそう。リオン、欲しいなら剥ぎ取っておいたら?」
「もちろん欲しい! お店の目玉商品にしてみせるさ。ああ、ガルス、ブレイド、お前らにも分け前や素材料はちゃんと渡すから安心してくれ」
こうして、俺たちは危険な地底の魔物を倒し、新たな素材を入手した。
ダンジョンの奥には、さらに強力な魔物や秘宝が待ち受けているかもしれない。
でも、これで確信した。
やっぱり冒険と商売は切り離せない――レア素材を求めるなら、自分の足で取りに行くのが一番だ。
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