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第12話:新たな拠点づくりと風変わりな来訪者

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 ロウリエ村に戻ると、さっそくノール村との同盟内容を村長に伝える。
 村長は「これで少しは安心できる」とほっとした顔をしていた。
 だが、同時に帝国からの圧力も強まっているとの知らせが入る。
 子爵の手下と思われる連中が村の周囲をうろついているとか。
 警戒が必要だ。



「タクミ、これからどうするの?」
 

「ミレーヌ、まずはノール村との合意事項を実行に移すよ。魔肥や魔工器具を渡して、向こうの物資も受け取る」
 

「それで村がもっと安定すればいいけど……」
 

「クレア、そうだな。安定すれば次は防衛拠点を強化する。村の入口に柵や見張り台を作って、魔工弩を配置したい」
 

「だったらあたし、木材を集めるの手伝う!」
 

「リリー、よろしく頼む」
 

「フェリシア、君はどうする?」
 

「そうだね、あたしはあんたの魔工器具とやらを見せてもらいたい。その上で何か改善点があればアドバイスしてやるよ。旅人にはいろんな見聞があるんだ」
 

「頼もしいな」
 

「へへ、気に入った?」
 

「まあ、悪くないね」
 

 フェリシアはクールな割に冗談めかした言い方をする。
 こういう明るい雰囲気は助かる。
 恋愛感情云々はおいといて、仲間が多いのは心強い。



 翌日、俺は工房で新たな魔工器具を開発していた。
 防衛のためだけでなく、情報伝達の手段も欲しい。
 例えば狼煙(のろし)を改良し、魔鉱石の発光を利用して夜でも明るく光る信号装置を作れないか試している。
 これが成功すれば、隣村との緊急連絡が素早くなる。
 

「タクミ、これが信号装置? なんか不思議な粉が光ってるけど」
 

「リリー、魔鉱粉を弱火であぶると淡い光を出すんだ。この光を鏡で反射して隣村に送れば、遠くからでも合図がわかる」
 

「すごいね! なんか難しそうだけど」
 

「慣れれば簡単だよ」
 

「私も手伝う。こういう細かい作業、得意だから」
 

「クレア、助かるよ」
 

 クレアは手先が器用で、細かな部品の組み立てを任せられる。
 ミレーヌは現場で農地の管理をしつつ、魔肥の配布に努めている。
 リリーは力仕事と補給、フェリシアは警備と観察。
 俺は開発。
 役割分担ができてきたのは良い兆候だ。



 ところが、午後になって村の外れが騒がしい。
 何事かと見に行くと、奇妙な男が現れていた。
 ガリガリに痩せ、ボロ布をまとった男が、村の入口で「助けてくれ」と泣いている。
 村人が警戒し、周囲を囲むと、その男は慌てて手を挙げた。
 

「お、俺は帝国から逃げてきた難民だ! 助けてくれ、食料を分けてくれ!」
 

「難民?」
 

 俺は男に近づき、問いただす。
 

「なんで帝国から逃げてきた?」
 

「帝国の貴族どもが、下層民に重税を課して、飢え死に寸前だ。俺は耐えられず逃げ出した。頼む、この村は最近豊かになったと聞いたんだ!」
 

「うーん……」
 

 難民を受け入れることで労働力は増えるが、スパイの可能性もある。
 ここはフェリシアと協力して様子を探りたい。
 

「フェリシア、どう思う?」
 

「怪しいけど、本当に飢えてるみたいだね。とりあえず食べ物を少し与えて話を聞いてみたら?」
 

「そうするか。ミレーヌ、クレア、食べ物を少し持ってきて」
 

「わかった」
 

「気をつけてね」
 

 パンと水を与えると、男はむさぼり食い、涙を流した。
 その姿は演技には見えない。
 

「ありがとう……助かった。俺はジャックという。農民出身で、他にも多くの仲間が帝国で苦しんでいる。もし、もしあんたらが助けてくれるなら、俺は恩返しに何でもする!」
 

「帝国で苦しむ人々がいるのか。俺たちが豊かになれば、彼らを救えるかもしれない」
 

「た、タクミ……流石にそこまで面倒みるのは……」
 

「リリー、わかってる。でも、もし俺たちが力を蓄えて、弱者を救えるようになったら、きっとこの世界は変わるはずだ」
 

「タクミらしいわね」
 

「いいよ、あんたが決めなよ。あたしはついていくから」
 

 フェリシアも笑う。
 こうしてジャックを仮に受け入れ、様子を見ることにした。
 俺たちの行動は、徐々に帝国の支配構造に挑む形になりつつある。
 この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない。
 ただ、俺は決めた。
 弱き者を見捨てないで、新しい価値を生み出す。
 その道を進む。
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