12 / 21
第12話:新たな拠点づくりと風変わりな来訪者
しおりを挟む
ロウリエ村に戻ると、さっそくノール村との同盟内容を村長に伝える。
村長は「これで少しは安心できる」とほっとした顔をしていた。
だが、同時に帝国からの圧力も強まっているとの知らせが入る。
子爵の手下と思われる連中が村の周囲をうろついているとか。
警戒が必要だ。
◇
「タクミ、これからどうするの?」
「ミレーヌ、まずはノール村との合意事項を実行に移すよ。魔肥や魔工器具を渡して、向こうの物資も受け取る」
「それで村がもっと安定すればいいけど……」
「クレア、そうだな。安定すれば次は防衛拠点を強化する。村の入口に柵や見張り台を作って、魔工弩を配置したい」
「だったらあたし、木材を集めるの手伝う!」
「リリー、よろしく頼む」
「フェリシア、君はどうする?」
「そうだね、あたしはあんたの魔工器具とやらを見せてもらいたい。その上で何か改善点があればアドバイスしてやるよ。旅人にはいろんな見聞があるんだ」
「頼もしいな」
「へへ、気に入った?」
「まあ、悪くないね」
フェリシアはクールな割に冗談めかした言い方をする。
こういう明るい雰囲気は助かる。
恋愛感情云々はおいといて、仲間が多いのは心強い。
◇
翌日、俺は工房で新たな魔工器具を開発していた。
防衛のためだけでなく、情報伝達の手段も欲しい。
例えば狼煙(のろし)を改良し、魔鉱石の発光を利用して夜でも明るく光る信号装置を作れないか試している。
これが成功すれば、隣村との緊急連絡が素早くなる。
「タクミ、これが信号装置? なんか不思議な粉が光ってるけど」
「リリー、魔鉱粉を弱火であぶると淡い光を出すんだ。この光を鏡で反射して隣村に送れば、遠くからでも合図がわかる」
「すごいね! なんか難しそうだけど」
「慣れれば簡単だよ」
「私も手伝う。こういう細かい作業、得意だから」
「クレア、助かるよ」
クレアは手先が器用で、細かな部品の組み立てを任せられる。
ミレーヌは現場で農地の管理をしつつ、魔肥の配布に努めている。
リリーは力仕事と補給、フェリシアは警備と観察。
俺は開発。
役割分担ができてきたのは良い兆候だ。
◇
ところが、午後になって村の外れが騒がしい。
何事かと見に行くと、奇妙な男が現れていた。
ガリガリに痩せ、ボロ布をまとった男が、村の入口で「助けてくれ」と泣いている。
村人が警戒し、周囲を囲むと、その男は慌てて手を挙げた。
「お、俺は帝国から逃げてきた難民だ! 助けてくれ、食料を分けてくれ!」
「難民?」
俺は男に近づき、問いただす。
「なんで帝国から逃げてきた?」
「帝国の貴族どもが、下層民に重税を課して、飢え死に寸前だ。俺は耐えられず逃げ出した。頼む、この村は最近豊かになったと聞いたんだ!」
「うーん……」
難民を受け入れることで労働力は増えるが、スパイの可能性もある。
ここはフェリシアと協力して様子を探りたい。
「フェリシア、どう思う?」
「怪しいけど、本当に飢えてるみたいだね。とりあえず食べ物を少し与えて話を聞いてみたら?」
「そうするか。ミレーヌ、クレア、食べ物を少し持ってきて」
「わかった」
「気をつけてね」
パンと水を与えると、男はむさぼり食い、涙を流した。
その姿は演技には見えない。
「ありがとう……助かった。俺はジャックという。農民出身で、他にも多くの仲間が帝国で苦しんでいる。もし、もしあんたらが助けてくれるなら、俺は恩返しに何でもする!」
「帝国で苦しむ人々がいるのか。俺たちが豊かになれば、彼らを救えるかもしれない」
「た、タクミ……流石にそこまで面倒みるのは……」
「リリー、わかってる。でも、もし俺たちが力を蓄えて、弱者を救えるようになったら、きっとこの世界は変わるはずだ」
「タクミらしいわね」
「いいよ、あんたが決めなよ。あたしはついていくから」
フェリシアも笑う。
こうしてジャックを仮に受け入れ、様子を見ることにした。
俺たちの行動は、徐々に帝国の支配構造に挑む形になりつつある。
この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない。
ただ、俺は決めた。
弱き者を見捨てないで、新しい価値を生み出す。
その道を進む。
村長は「これで少しは安心できる」とほっとした顔をしていた。
だが、同時に帝国からの圧力も強まっているとの知らせが入る。
子爵の手下と思われる連中が村の周囲をうろついているとか。
警戒が必要だ。
◇
「タクミ、これからどうするの?」
「ミレーヌ、まずはノール村との合意事項を実行に移すよ。魔肥や魔工器具を渡して、向こうの物資も受け取る」
「それで村がもっと安定すればいいけど……」
「クレア、そうだな。安定すれば次は防衛拠点を強化する。村の入口に柵や見張り台を作って、魔工弩を配置したい」
「だったらあたし、木材を集めるの手伝う!」
「リリー、よろしく頼む」
「フェリシア、君はどうする?」
「そうだね、あたしはあんたの魔工器具とやらを見せてもらいたい。その上で何か改善点があればアドバイスしてやるよ。旅人にはいろんな見聞があるんだ」
「頼もしいな」
「へへ、気に入った?」
「まあ、悪くないね」
フェリシアはクールな割に冗談めかした言い方をする。
こういう明るい雰囲気は助かる。
恋愛感情云々はおいといて、仲間が多いのは心強い。
◇
翌日、俺は工房で新たな魔工器具を開発していた。
防衛のためだけでなく、情報伝達の手段も欲しい。
例えば狼煙(のろし)を改良し、魔鉱石の発光を利用して夜でも明るく光る信号装置を作れないか試している。
これが成功すれば、隣村との緊急連絡が素早くなる。
「タクミ、これが信号装置? なんか不思議な粉が光ってるけど」
「リリー、魔鉱粉を弱火であぶると淡い光を出すんだ。この光を鏡で反射して隣村に送れば、遠くからでも合図がわかる」
「すごいね! なんか難しそうだけど」
「慣れれば簡単だよ」
「私も手伝う。こういう細かい作業、得意だから」
「クレア、助かるよ」
クレアは手先が器用で、細かな部品の組み立てを任せられる。
ミレーヌは現場で農地の管理をしつつ、魔肥の配布に努めている。
リリーは力仕事と補給、フェリシアは警備と観察。
俺は開発。
役割分担ができてきたのは良い兆候だ。
◇
ところが、午後になって村の外れが騒がしい。
何事かと見に行くと、奇妙な男が現れていた。
ガリガリに痩せ、ボロ布をまとった男が、村の入口で「助けてくれ」と泣いている。
村人が警戒し、周囲を囲むと、その男は慌てて手を挙げた。
「お、俺は帝国から逃げてきた難民だ! 助けてくれ、食料を分けてくれ!」
「難民?」
俺は男に近づき、問いただす。
「なんで帝国から逃げてきた?」
「帝国の貴族どもが、下層民に重税を課して、飢え死に寸前だ。俺は耐えられず逃げ出した。頼む、この村は最近豊かになったと聞いたんだ!」
「うーん……」
難民を受け入れることで労働力は増えるが、スパイの可能性もある。
ここはフェリシアと協力して様子を探りたい。
「フェリシア、どう思う?」
「怪しいけど、本当に飢えてるみたいだね。とりあえず食べ物を少し与えて話を聞いてみたら?」
「そうするか。ミレーヌ、クレア、食べ物を少し持ってきて」
「わかった」
「気をつけてね」
パンと水を与えると、男はむさぼり食い、涙を流した。
その姿は演技には見えない。
「ありがとう……助かった。俺はジャックという。農民出身で、他にも多くの仲間が帝国で苦しんでいる。もし、もしあんたらが助けてくれるなら、俺は恩返しに何でもする!」
「帝国で苦しむ人々がいるのか。俺たちが豊かになれば、彼らを救えるかもしれない」
「た、タクミ……流石にそこまで面倒みるのは……」
「リリー、わかってる。でも、もし俺たちが力を蓄えて、弱者を救えるようになったら、きっとこの世界は変わるはずだ」
「タクミらしいわね」
「いいよ、あんたが決めなよ。あたしはついていくから」
フェリシアも笑う。
こうしてジャックを仮に受け入れ、様子を見ることにした。
俺たちの行動は、徐々に帝国の支配構造に挑む形になりつつある。
この選択が吉と出るか凶と出るかはわからない。
ただ、俺は決めた。
弱き者を見捨てないで、新しい価値を生み出す。
その道を進む。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
転生農家の俺、賢者の遺産を手に入れたので帝国を揺るがす大発明を連発する
昼から山猫
ファンタジー
地方農村に生まれたグレンは、前世はただの会社員だった転生者。特別な力はないが、ある日、村外れの洞窟で古代賢者の秘蔵書庫を発見。そこには世界を変える魔法理論や失われた工学が眠っていた。
グレンは農村の暮らしを少しでも良くするため、古代技術を応用し、便利な道具や魔法道具を続々と開発。村は繁栄し、噂は隣領や都市まで広がる。
しかし、帝国の魔術師団がその力を独占しようとグレンを狙い始める。領主達の思惑、帝国の陰謀、動き出す反乱軍。知恵と工夫で世界を変えたグレンは、これから巻き起こる激動にどう立ち向かうのか。
田舎者が賢者の遺産で世界へ挑む物語。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼
ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。
祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。
10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。
『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・
そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。
『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。
教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。
『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる