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第194話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六十八

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 セルフィは、崩壊した鍾乳洞の入口に立ち尽くし、穏やかな風が頬を撫でるのを感じていた。

 彼女の視線の先には、崩れた岩石や散らばった土埃が荒々しく広がっている。

 マナとマノの姉妹はセルフィのそばで、すっかり元気を取り戻し、互いに声を掛け合っていた。その無邪気な姿に、セルフィの心は少しだけ和らぐ。

「セルフィお姉ちゃん、ステラお姉ちゃんはいつ戻ってくるの?」

 マノの問いかけにセルフィは少し笑みを浮かべた。

「そうね、もうすぐ戻ってくると思うわ。きっとリリカ様とチャチャを連れて、無事に戻ってきてくれるわ」

 その時、突如として空気が変わった。

 柔らかな光が空間に満ち、風が軽やかに舞い始める。

 セルフィはその気配に気づき、振り返った。そこには見たことのない球体が浮かんでいた。

「これは......?」

 見たことのない形状の光の球体。

 その球体は一定のリズムで脈動し、内側から柔らかい光が漏れ出している。

「......何これ?」

 セルフィは一歩前に出て、警戒しながら球体を見つめた。マナとマノも興味津々といった様子でセルフィの背後から顔を出した。

「セルフィお姉ちゃん、これ何なの?」

「分からない。でも、危険かもしれないから近づかないで。マナ、マノ、私の後ろへ」

 セルフィは二人を守るようにして臨戦態勢をとった。

 セルフィが慎重に球体を観察していると、突如としてその球体が微かに音を立てた。

 そして、次の瞬間、球体が割れるように光を放ち、その中から姿を現したのはステラ、リリカ、そしてチャチャだった。

 セルフィは目を見開き、駆け寄ってステラに抱きついた。

「ステラ様!  無事で本当によかった!」

 セルフィはすぐに、リリカの顔を覗き込む。

 彼女の顔には疲労の色が濃く刻まれているものの、確かに命の危険は去っていることが分かった。

「無事でよかった......本当に」

 セルフィの言葉に、ステラは安堵の表情を浮かべた。

「リリカもチャチャもなんとか治療できたわ。でも、まだ完全に回復したわけじゃない。少し休ませる必要があるわね。」

 ステラは静かに言いながら、リリカを地面にそっと寝かせた。

 その瞬間、リリカの瞼がゆっくりと動き、薄く目を開けた。

「......ここは?」

 リリカが微かに声を発すると、セルフィはすぐに彼女の手を握った。

「リリカ様、大丈夫です。今は安全な場所ですから、心配しないでください」

 リリカはぼんやりとセルフィを見上げ、次第に意識がはっきりしていく。しかし、彼女が身体を起こそうとしたその時、顔をしかめて手で頭を押さえた。

 頭に鈍い痛みを感じて顔をしかめる。

 手で頭を押さえながら、小さな声でぼやく。

「うっ……なんだか頭がクラクラする……」

 その様子を見たステラは、慌ててリリカのそばに膝をつき、彼女の額にそっと手を当てた

「リリカ、大丈夫?ちょっと熱を見てみるわね……うん、やっぱりね。少し休みが必要な状態よ。魔力が一時的に使えない状態になっているわ」

「そうなのステラ!......魔力が使えなくて! どうして?」

 リリカは目を見開いて驚いた表情を見せる。

 ステラは微笑みながら頷き、できるだけ優しい声で説明を始めた。

 「そう、魔力の流れが一時的に滞ってるみたい。でも心配しなくて大丈夫。これは普通のことよ。おそらく、体調が影響しているんだと思うの。」

「体調って……えっ? どういうこと?」

「ええと、その……どうやら『女の子の日』が関係しているんじゃないかしら?」

「えええっ!?」

 リリカは一瞬固まり、それから顔が真っ赤に染まる。

 彼女は慌てて手で顔を覆い隠し、恥ずかしさのあまり声を上げた。

「そ、そんなの聞いてないよ!魔力と女の子の日が関係あるなんて!」

 その場面を静かに見守っていたセルフィは、思わず吹き出しそうになったが、なんとかこらえて口元を押さえた。

「リリカさん、意外と純情ですね。可愛いです。」

「ちょっとセルフィ!笑うところじゃないよ!」

 リリカは目を潤ませながら抗議するが、その声はどこか力が抜けている。

 ステラは微笑みながら、セルフィに軽く目配せしてから、改めてリリカに語りかけた。

 「リリカ、落ち着いて。魔力の循環と体調には密接な関係があるのよ。特に女の子の日は体調に影響を及ぼしやすいから、こうしたことが起きることもあるの。珍しいことじゃないわ。」

「そ、そうなんだ……でも、どうしたらいいの?」

 リリカは困惑しながらステラを見上げる。

「簡単よ。無理せず、しっかり休むこと。数日経てば元に戻るわ。今は焦らずに、体を大事にしてね。」

 その言葉に、リリカは少しだけ安心した表情を見せ、深呼吸をした。

「そっか……よかった」

 その落ち着いた様子を見て、セルフィはそっと肩をすくめながら微笑んだ。

「リリカさん、休むのも大切な仕事ですよ。私たちがちゃんと支えますから、安心してください。」

「うん……ありがとう、二人とも!」

 リリカがそう言うと、マナとマノが元気よくリリカに駆け寄った。

「お姉ちゃん、大丈夫? 私たちも一緒に守ってあげるよ!」

 その無邪気な声に、リリカは小さく笑みを浮かべた。

「ありがとう。それなら安心ね。」

 ステラはそのやり取りを見ながら立ち上がり、セルフィに目配せをした。

「セルフィ、しばらくここで休ませるわ。あなたは周囲の安全を確認してきてくれる?」

「かしこまりました、ステラ様。」

 セルフィは一礼し、その場を離れて警戒に向かった。
 
 暖かい風が静かに吹き抜ける中、リリカは再び目を閉じ、穏やかな眠りについた。――。

 セルフィはステラ、リリカ、チャチャの無事な帰還に安堵する。リリカは魔力が一時的に使えなくなり、ステラが体調の影響だと優しく説明するが、「女の子の日」が関係することを知り驚きを隠せない。セルフィは笑いをこらえつつリリカを励まし、マナとマノもリリカを元気づける。『この二人の幼女は誰だろう?』と思いつつも、再び眠りにつくリリカであった――。
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