目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第192話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六十六

それはほんの数秒の出来事だった。



　リリカの体から放たれた一筋の光が、まるで矢のように天空へと一直線に伸びていく。



　その光は、鍾乳洞内の重く湿った空気を切り裂き、周囲の空間を一瞬だけ明るく照らし出した。



　その場に漂う緊張感と静寂が、その光によって破られる。



　まるで時が止まったかのような錯覚を覚えるほど、光の波動は強烈で、目にした者の心に深く刻み込まれるものだった。



　リリカの姿は、その光の発生源に立ち、まるで何かに呼応するかのように変化していた。



　全身は光の粒子に包まれ、その粒子が小さな星のように彼女の周囲を漂いながら、淡い光を放っている。



　その光景はまるで、伝説に語られる神秘的な現象そのもののようだった。



　一方、その光を目にしたセルフィは、普段の冷静さを忘れ、驚きと興奮が入り混じった声を上げた。



「あれは......まさか伝説の『光陰の矢』......！？」



　それは、かつて古代の書物で読んだことのある伝説の魔法――『光陰の矢』を彷彿とさせるものだった。



　目の前で現実となっていることに、セルフィは息を呑む。



　その頃、天空を舞うステラもまた、その光を見逃さなかった。



　彼女は空高く舞い上がり、ナーガの「龍の目」を通して地上を見渡す。



　ナーガの魔眼が発動すると、洞窟内の構造や状況が鮮明にステラの視界に映し出された。



　暗闇に包まれた複雑な地形、崩れ落ちた岩の塊、そして細い通路が縦横無尽に伸びる鍾乳洞内の全貌が一瞬で明らかになる。



　光の発生源を確認したステラは、冷静な声で呟いた。



「この辺りかしら......」



　彼女は目標を定めると同時に、背中の漆黒の翼を大きく広げた。



　その動きは優雅で力強く、彼女の決意を体現しているようだった。



　宙に浮かびながら、ステラは右手を前方に掲げる。



　その指先には冷たい輝きが宿り、次第に強まっていく。



「水龍――！」



　その声と共に、彼女の指先から湧き出すようにして水の塊が形を成し始めた。



　それは、まるで生きているかのように蛇のようにうねりながら、地上へと向かって伸びていく。



　その水龍は滑らかで美しい動きで洞窟の隙間に入り込み、その特性を活かしてリリカとチャチャを探し始めた。



　鍾乳洞内は、予想以上に入り組んでおり、崩れた岩や狭い通路が点在していた。



　その一方で、魔力の痕跡が淡く漂い、水龍の動きを導いているかのようだった。



　その動きは正確無比で、迷うことなく鍾乳洞の奥深くへと進んでいく。



　リリカとチャチャの姿を発見した瞬間、水龍の体は柔らかいゼリー状に変化した。



　その形状は、リリカとチャチャを優しく包み込むように変化し、外部の危険から二人を守るかのように覆い隠した。



　その感覚はまるで、暖かな水の中で守られているような安心感を与えるものだった。



　地上にいるステラは、水龍を通じて感じた感覚から二人の位置を確信した。



「見つけたわ！」



　その声には、安堵と強い意志が込められていた。



　彼女の目が力強く輝き、次の瞬間には行動を起こす準備を整えていた。



　翼を再び大きく広げ、彼女は更なる高みへと舞い上がる。



　ステラの目が力強く輝き、何としてでもリリカを救い出すという決意が滲み出ていた。



　彼女の視線は崩れた洞窟の中へと向けられ、リリカとチャチャの安全を確認するための魔法を集中させた。



　肩で息をしながらも、一切の迷いを感じさせないその表情には、仲間を救い出すという強い意志が宿っていた。



　「リリカ、チャチャ……絶対に助けるから……」



　ステラは小さく呟くと、右手を地面に向けて力を込めた。



　背中に浮かぶ半円形の魔法陣が青白い光を放ち始め、急速に回転を始める。



　光の粒子が渦を描き、やがて一つの完全な円となった。



　その魔法陣はさらに強い輝きを放ちながら空中へと浮かび上がり、洞窟の崩壊部分を包み込むように巨大な光の円となって形成された。



　ステラの力強い声が洞窟内に響き渡る。



　「ここから、引き上げる！」



　"——ズズズズ......！——"



　大地がその言葉に応じるように振動を始めた。



　崩壊した洞窟の部分が再び形を変え、まるで緻密な彫刻が削られるかのように円柱状に整えられていく。



　ステラはさらに魔力を注ぎ込み、削り取られた巨大な岩の塊が空中へとゆっくりと浮かび上がる。



　その中から姿を現したのは、水龍に守られたリリカとチャチャだった。



　水龍は柔らかな動きで二人を包み込み、まるで空を泳ぐかのようにステラの元へと運んでいく。



　その透明な鱗は光を反射して虹色に輝き、崩壊した洞窟の暗闇の中で神秘的な光景を生み出していた。



　ステラは目を見開き、無意識のうちに感嘆の声を漏らした。



　「よかった……リリカ、無事で……」



　彼女の目には微かに涙が浮かび、安堵の表情がその顔に広がった。



　水龍は地面に静かに降り立つと、リリカとチャチャを優しく下ろした。



　リリカとチャチャの安全を確認したステラは、再び背中の魔法陣を活性化させた。



　魔法陣が再び回転を始め、その光が崩壊した洞窟の大地全体に広がっていく。



　「さて……元に戻さないと」



　空中に浮かんでいた巨大な円柱状の岩が地面へとゆっくりと吸い込まれるように戻されていく。



　その動きは精密で、まるで時間を巻き戻しているかのようだった。



　穴は徐々に埋め尽くされ、完全に塞がれた地面は元の形状を取り戻した。



　ステラは深い息をつき、額に滲んだ汗をそっと拭った。



　そして、地上に降り立つとリリカの元へ歩み寄った。



　リリカは疲労で顔色が悪いものの、怪我は回復していた。



　腕の中で小さく震えているチャチャも無事であることがわかった。



　「リリカ、大丈夫？　よく頑張ったわね……」



　ステラはその場に膝をつき、リリカの肩を優しく抱いた。リリカは弱々しいながらも微笑みを返し、震える声で呟いた。



　「ステラ……やっぱり来てくれた……」



　その言葉には、命が助かった安堵感と、恐怖を乗り越えた強い感情が込められていた。



　ステラはその言葉を聞き



　「そうよ、生きてるわ。あなたは強いわね、リリカ」



　そう言って深く頷くと優しく微笑んだ。



　鍾乳洞でリリカが放った強烈な光が「光陰の矢」として天空へ伸び、伝説の魔法とセルフィは驚愕する。一方、ステラは水龍を使って洞窟を探索し、崩落に巻き込まれたリリカとチャチャを発見。水龍が二人を優しく包み、ステラ救出に成功。リリカの無事を確認したステラは、安堵の笑みを浮かべるのであった――。