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第190話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六十四

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 鍾乳洞の崩壊が収まる頃、ステラとセルフィは二人の少女――マノとマナの治療を終えていた。

 冷たく湿った空気の中、ステラの手から放たれる淡い光が優しく二人を包み込む。

 その光はただの治癒ではなく、少女たちの傷ついた心までも癒し、冷え切った恐怖を溶かしていくようだった。

 ステラは少女たちを見つめながら、深く息をつき、柔らかい声で語りかけた。

「これで……大丈夫。マノ、マナ、あとはゆっくり休んでね。」

 その声には母親のような優しさと、それでいてどこか芯の強さが感じられた。

 マノは細い声で

「ありがとう……お姉さんたち……」

 と感謝の言葉を絞り出しながら、微笑みを浮かべる。

 その隣で横たわる妹のマナも、涙を浮かべながら小さく頷いた。

 恐怖と疲労に襲われていた二人だったが、ステラとセルフィの手による治療により、ようやく安堵の表情を取り戻していた。

 セルフィはマノの髪を優しく撫でながら、気遣うように声をかけた。

「無理しないで。私たちの方こそ、もっと早く助けてあげられなくてごめんなさい」

 その声には温かさが滲んでいたが、同時に張り詰めた緊張感が含まれていた。

 少女たちを襲った出来事が、ただ事ではないことを感じ取っていたからだ。

 治療を受けて落ち着きを取り戻したマノとマナは、震える声で鍾乳洞の奥で起きた出来事を語り始めた。

 その内容は、ステラとセルフィにさらなる警戒心を抱かせるものであった。

「……あの奥に……珍しい三毛猫が……閉じ込められているんです……」

 マナが恐る恐る口を開いた。

 妹の言葉を受け、マノはさらに深刻な事実を語り出す。

「それだけじゃない……そこには、恐ろしい巨大な双頭の蛇がいるの……!」

 その言葉に、セルフィの顔が一瞬で引き締まる。

 先ほど行った風魔法による調査を思い返し、彼女は鍾乳洞内の異常な魔力の流れを思い出した。

「双頭の蛇……それにこの魔力の異常……ただの魔獣じゃなさそうね。」

 セルフィの声には冷静さがあるものの、明らかな警戒心が滲んでいた。

 隣でステラが険しい表情のまま口を開く。

「ナーガ……?」

 するとナーガが応えた。

「ステラ様、おそらく我が魔力の影響でしょう」

 その言葉でステラの表情がいっそう険しくなった。

 ステラは視線を上へ向け、小さく息を吐きながら続けた。

「私が封印を解いたことが原因かもしれないわ……それが、こんな形で現れるなんて……」

 セルフィはステラの言葉に驚きつつも、彼女をじっと見つめた。

 だが、ステラはそれ以上何も語らず、ただ険しい表情を浮かべたままだった。

 鍾乳洞の奥深く、重苦しい静寂と暗闇の中で、リリカはゆっくりと目を覚ました。

 彼女の全身には鈍い痛みが走り、身動きするたびにその痛みが増していく。

「ううん……チャチャ……沙織……?」

 かすれた声で呟きながら、彼女はかろうじて自分の体を動かそうと試みた。

 しかし、その度に全身が悲鳴を上げ、リリカは歯を食いしばって耐えるしかなかった。

 目を凝らしても視界は暗闇に包まれ、巨大な岩の隙間から差し込むわずかな光が彼女の視界をぼんやりと照らしているだけだった。

「ここは……どこなの……?」

 彼女の心は混乱していた。

 遠い記憶の断片が不意に心をよぎり、懐かしい光景が次々と浮かび上がる。

「夢……?  ああ、すごく懐かしい……」

 リリカの脳裏に浮かんだのは、日本で過ごした平和な日々だった。

 ダンス部の仲間と笑い合い、共に練習に励んだ青春の一コマ。

 親友の沙織とふざけ合いながら放課後を過ごした時間。

 そして、両親や姉と過ごした何気ない日常――それらが鮮明に蘇り、彼女の胸を暖かくも切ない感情で満たしていく。

「あの頃……私は……みんなと一緒に……」

 リリカの声は震え、気づけば涙が頬を伝い落ちていた。

 その涙は後を絶たず、洞窟の冷たい地面に吸い込まれていく。

「お父さん……お母さん……沙織……みんな……どうしてるかな……?」

 会えない家族や友人への想いが、彼女の心を締め付けた。

「あれ……私、今……?」

 現実と記憶の狭間で、彼女は再び自分の置かれた状況を思い出し叫んだ。

「ステラ……セルフィ……助けて……」

 リリカの切実な叫びが、鍾乳洞の静寂を切り裂いた。

 鍾乳洞の崩壊後、ステラとセルフィは負傷したマノとマナの治療を行い、二人を完治させた。少女たちは、鍾乳洞の奥に珍しい三毛猫と巨大な双頭の蛇がいると告げる。ステラは自身が封印を解いた影響を疑い、険しい表情を浮かべる。一方、暗闇の中でリリカが目覚め、全身の痛みに耐えながら過去の日本での平和な日々を思い出し、家族や友人への想いで涙を流す。現実に戻ったリリカはステラたちに助けを求め、切実な叫び声を上げるのだった――。
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