目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第149話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の二十四

　リリカはふと立ち止まり、胸の内でそっと呟いた。

「ステラ……もしかして、あなたがヒミコの生まれ変わりなの？」

　その疑問に、彼女の中に宿る龍神が静かに応えた。

「彼女はヒミコに瓜二つだ。生まれ変わりかどうかは私にもわからない。しかし、彼女を見ていると懐かしさが込み上げ、心が穏やかになるのだよ」

　その言葉に、リリカは思わず小さく頷き、心の奥深くで共感を覚えた。

　目の前にいるステラの姿が、遥か昔の巫女、ヒミコの面影と重なって見える気がしたのだ。

　同じ猫耳を持ち、穏やかでありながら強く、何があっても傍にいて自分を支えてくれるステラは、リリカにとって大切でかけがえのない存在であった。

「そうなのよね……彼女は私のお姉さんのような存在で、私が心から尊敬する人……」

　リリカはそう静かに心の中で呟き、ふと空を見上げた。

　その瞳には決意が宿り、固く誓うように声を発した。

　「私はステラについていく。どんなことがあっても……」

　その決意を感じ取ったかのように、龍神が柔らかな声で応えた。

　「君が心から選んだ道なら、私も共に行こう」

　リリカはその言葉に微笑み、胸の中に温かな安心感が広がっていくのを感じた。

　そのとき、ステラが皆に高台にある古びた城を目指すことを提案し、一行は慎重にその古城へと足を運んだ。

　古城に辿り着いた彼らの前には、威厳ある木の柱や精巧な装飾が施された梁がそびえ立っていた。

　かつての栄華を物語るような構造物も、年月と共に朽ち果て、苔や蔦に覆われた姿は、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。

　薄暗い光が差し込む中、ステラが皆に提案した。

「ここで手分けして調査を始めましょう。この国の手がかりを見つけられるかもしれない」

　リリカはステラの提案を聞いて、急に思い立ったように声をあげた。

「待って！その前に、みんなに聞いてほしいことがあるの」

　リリカは今まで龍神と交わした会話の内容を伝えた。

　その話を聞いたセルフィが驚きの表情を浮かべ

「ここが私たち人類の発祥の地で、祖先もリリカ様やステラ様のように猫耳を持っていたなんて……」

　と呟くと、ステラは冷静に頷きながら言葉を添えた。

「ヤマタイコク……それがこの国の名前。そして、建国し統治していた女王の名がヒミコ……」

　リリカは大きく身振り手振りを使い、熱心に話を続けた。

「そうなの！それでね、龍神さんが言ってたのよ、ヒミコとステラがそっくりだって……それで私、もしかしたら生まれ変わりなのかもって思って」

　ステラはその言葉に少し驚きつつも微笑みを浮かべ

「もしそうなら……私はとても誇らしいわ。でも、リリカ、それが本当なら、あなたも誰かの生まれ変わりかもしれないわね」

　と柔らかく頷いた。

そのとき、頭を抱えるようにしたレオンが

「こんな壮大な話、どうやってメルヴィルさんに報告したらいいんだ……」

　と呟くと、すかさずセルフィが

「メルヴィルさんがあなたの話なんて聞くかしら？それは大隊長ステラ様のお役目よ」

　と言い返し、皆が微笑を浮かべた。

　ステラは改めて声を張り上げ、皆に指示を出した。

「みんな、リリカの話を念頭に置いて慎重に調査を続けましょう」

　各自手分けして城内の調査が始まった。

　リリカは古びた祭殿と思われる広間に足を踏み入れる。

　天井には色褪せたが美しい絵が描かれており、中央には小さな石の祭壇が置かれていた。

　祭壇の上には古びた書物が幾つも積まれており、その表面は埃に覆われていた。

　リリカは書物にそっと手を触れ、埃を払いつつその表紙をじっと眺めた。

　何かが心の奥で囁くように響き、「なんだか……懐かしい……」と自然に呟きが漏れた。

　その文字はエルフェリアの言葉とは異なっていたが、どこかで見覚えがあるような気がしてならなかった。

　リリカはその場に腰を下ろし、じっとその文字を見つめていると、再び龍神の声が心の中に響いた。

「これはヤマタイコクの文字だ。ヒミコが民に読み書きを教え、広めたものだ」

「これが……ヤマタイコクの文字なのね……？」

　リリカは驚きの表情を浮かべながら、その言葉を何度も心の中で繰り返した。

　そして、その文字を見つめるうちに、龍神の魂と出会ったときから心の奥深くに眠っていた記憶が、少しずつ呼び覚まされるような気がした。

　リリカは夢中で古びた書物を開き、ページをめくり続けた。

　やがて、目の前に壮大な一枚の絵が広がった。

　そこには、天を突くような巨大な龍に対峙する一人の巫女、ヒミコの勇ましい姿が描かれていた。

　その神々しい光景に息を呑み、リリカの意識はその瞬間、強烈な力に引き寄せられ、絵の世界へと吸い込まれていった。

　周囲の空気が変わり、リリカは気が付くと古代のヤマタイコクの景色の中に立っていた。

　辺りには緑が広がり、巫女の装束を纏った人々が神聖な儀式に参加している。

　目の前には天を突くような龍が現れ、その圧倒的な存在感にリリカは足がすくんだが、不思議と恐怖心は感じなかった。

　その瞬間、ヒミコと同じ巫女の衣装に身を包んだ自分自身の姿が幻のように見え、心の奥に眠る記憶が断片的に呼び覚まされるような感覚に襲われた。

　彼女は静かに深呼吸し、その世界の一部となったような感覚に身を委ねた。

　そして、龍神の声が再び響いた。

「リリカ……君の中にはヒミコの血が流れている。ヒミコの魂と、その力が眠っているのだ」

「私の中に……ヒミコの血……？」

　リリカはその言葉に驚きつつも、今まで自分が感じていた謎の懐かしさの理由が少しずつ解けていくように感じた。

　そして、遠くからステラの呼ぶ声が聞こえ、意識が徐々に現在の世界に引き戻されていった。

　リリカが古びた祭殿でヤマタイコクの文字に触れ、深い記憶と対話する。彼女は龍神の導きにより、遥か昔の巫女・ヒミコとのつながりを感じ、ヤマタイコクが彼女の魂に宿っていることを知る。書物を通じて幻のようにヒミコや古代のヤマタイコクに触れ、自らの運命や使命を知ることとなるリリカであった――。