目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第145話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の二十

　炎、光、闇の三つの魔力が、リリカの体をまばゆく包み込んだかと思うと、その魔力の波は突如として弾け、彼女の周囲に閃光の残像を残したまま静寂が訪れた。

　リリカの体は力を失ったようにゆっくりと地面へ倒れ込み、レオンはとっさに彼女を支えた。

「リリカ様！」レオンの声は焦りと安堵の入り混じったもので、彼はリリカの無事を確かめながら、彼女の体をそっと支えた。

「行こう、セルフィ、チャチャ！」ステラは二人と一匹に声をかけ、リリカの元へ駆け寄った。

　リリカの額には、龍をかたどった赤い紋章が浮かび上がり、炎のように輝いていた。

　それはしばらくの間、彼女の体に刻まれるかのように残っていたが、やがて消え、同時にリリカは目を覚ました。　　

　ぼんやりとした視線を巡らせながら、まずは自分を囲むステラやセルフィに気づき、驚きと安堵が入り混じった表情を見せた。

「ステラ、セルフィ……」

　リリカはかすれた声で彼女たちの名を呼んだ。

　ステラはリリカに駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んだ。

　「リリカ、大丈夫？　遅くなってごめんなさいね。」

　セルフィもリリカのそばに跪き、真剣な表情で問いかけた。

「リリカ様、お怪我はありませんか？　それに、無事でいてくださって本当に……！」

　セルフィは次第に涙を浮かべ、ついに堪えきれず泣き崩れてしまった。

　その様子を見ていたレオンは、無意識にセルフィをそっと抱きしめ、彼女の背中を優しく撫でながら、彼女が落ち着くのを待った。

　しばらくして、セルフィが涙をぬぐい落ち着いたところで、レオンは今までの出来事を静かに話し始めた。

　魔力を祭壇に吸い取られて、三匹の龍が出現した事。

　そしてそのうちの黒龍が、白龍、赤龍を倒して二体を吸収した事。

　最終的に黒龍はリリカの体を媒体とするために、自らリリカの体内に宿った事。

　ステラは頷き、冷静にその説明を聞きながらも、リリカに向けた視線にはどこか優しさと心配が滲んでいた。

「私も見ていたわ。リリカの体の中で龍が生きているのね。すごいことになったわ。でも何より二人が無事で本当によかった。二人とも、体の調子はどう？」

　リリカは少し首をかしげながら、体を確かめるように手を握ったり開いたりしてみせた。

「なんか、いい感じなんだけど……どう説明したらいいのか、正直よくわかんない」

　セルフィはそんなリリカの姿に、安心したように微笑んだ。

「それなら良かったです。いつものリリカ様で、本当によかった……」

　そう言った瞬間、リリカの周りでふわりと光が広がり、彼女の身に纏っていたメイドアーマーが光の粒子になって弾けた。

　気がつくと、レオンが手早く仕立てたビキニ姿でその場に立っていた。

　セルフィはその姿に目を見開き、思わず頬を赤らめながら声を上げた。

　「リリカ様、その格好は……！」

　リリカは少し照れくさそうに笑いながら、レオンの方を振り返って答えた。

「服が破れちゃったから、レオンがこれ作ってくれたんだ。ねえ、レオン？」

　レオンも困惑気味に笑みを浮かべ、仕方ないと言わんばかりに肩をすくめた。

「はい、……リリカ様に合わせて急いで作りました」

　ステラは軽くため息をつき、チャチャの携帯袋から小さな布袋を取り出してリリカに差し出した。

「もう、しょうがないわね。でも、一応着替えがあるから、これを使ってね。」

　リリカは笑顔でそれを受け取り、セルフィに手伝ってもらいながらさっそく新しい服に着替えた。

　天真爛漫な表情に戻ったリリカを見て、ステラは少し微笑みながら皆に問いかけた。

　「お腹すいていない？敵の気配もないし、少し休憩を兼ねてお茶にしましょうか」

　リリカの目が輝き、彼女はすぐに火を起こし始めた。

　「いいね！お茶休憩しよ！」

　セルフィとレオンも手伝い、リリカが焚き火をおこし、レオンが水の魔法で新鮮な水を供給、セルフィは風を使って火加減を調節し、ちょうど良い具合に火かげんを調節した。

　そしてセルフィが手際よくハーブティーを淹れ始めた。

　やがて、湯気を立てて芳しい香りが漂うハーブティーが淹れられ、セルフィは一人ひとりにカップを手渡した。

　リリカは夢中になって焚き火にパンをかざし、表面がこんがりと焼き上がったところにバターを塗って皆に配った。

「香ばしい香り！おいしそう！」

　リリカはパンをひと口頬張り、喜びを隠しきれない様子で目を輝かせた。

　レオンもそのパンを一口食べて、思わず満足そうな表情を浮かべた。

「リリカ様、本当にいい焼き加減ですね。香ばしくて、ほのかなバターの香りがたまりません」

「ありがとう！」

　リリカは嬉しそうに笑い、次々とパンを焼いていった。

　彼らは久しぶりにリラックスした時間を過ごしながら、いつの間にかその場で会話が弾み、笑顔がこぼれるようになった。

　やがて、お腹が満たされ、皆が満足そうにひと息つくと、ステラが真剣な表情に戻り、これからどうするかについて話を切り出した。

　「さて、リリカ、レオン、セルフィ、作戦会議よ」

　皆、真剣にうなずいた。

　「ええ、先ほどの魔法陣や、ここでの龍の出現など、不気味なものを感じずにはいられません。先ずは出口を探さないと。ただこの広間はルクス・マギナの一部である可能性が高い」

　リリカはパンを食べながら少し考え込み

「猫神……そう龍神が言ってた。猫神久しいなって。もしかしたら私の中の龍神なら何か知っているかも」

　ステラは静かにリリカの言葉に耳を傾けていたが、やがて思案顔で答えた。

「そうね、きっとこの先、龍神の力が必要になることがあるはずよ」

　レオンもまた、リリカの肩にそっと手を置き、励ますように微笑んだ。

「リリカ様、頼りにしてます！　みんなで乗り越えましょう。」

　リリカはその言葉に力づけられ、力強くうなずいた。

　リリカが新たに龍神の力を得て無事に目覚め、セルフィやステラたちと再会を果たした。彼らはリラックスしながらハーブティーや焼きたてのパンを楽しみ、穏やかなひとときを過ごす。やがて、ステラが作戦会議を提案し、リリカも龍神との対話を決意するのであった――。