上 下
134 / 198

第134話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の九

しおりを挟む
 ステラが一歩前に進み、力強く声を上げた。

「さあ、行きましょう!遺跡の中に!」

 リリカはその背を追いかけながら、少し不安げな表情を見せた。

「いよいよね……森を抜けるだけでこんなに大変だったのに、これからどうなるのかしら?」

 セルフィはその言葉を聞いて、気を引き締めるように鋭く言った。

「遺跡は完全に魔法師に支配されているでしょう。気を緩めずに行きましょう」

 彼女たちはついにルクス・マギナの遺跡内部に足を踏み入れた。

 遺跡の中は想像を遥かに超える光景が広がっていた。

 かつては古びた、暗く静かな場所だったはずの遺跡が、まるで生まれ変わったかのように美しく、明るく灯りに満ちていた。

 壁には古代の文字が輝き、異様なまでに整えられた空間が広がっていた。

「ここ……まるでお城の中みたいに綺麗……!」

 リリカは目を見開き、息を飲んだ。

「幻想魔法の一種でしょうね。でも、まだ天空の魔法陣の影響が残っている可能性もあるわ。何か罠が仕掛けられているかもしれない。慎重に進みましょう」

 ステラが冷静に状況を分析する。

 遺跡の一本道は、彼女たちが進む度に灯りが一つずつともり、その背後を振り返ると、通ってきた道は真っ暗に閉ざされていた。

「戻れない……」

 リリカがつぶやくように言った。

 先頭を歩いていたセルフィが、古びた扉を見つけた。

「この扉以外、先に進む道はなさそうです。開けるしかないですね」

 セルフィは扉に刻まれた複雑な魔法陣をじっと見つめた。

 「この扉を解くには……魔法陣を展開するしかないようです」

 セルフィは自身の魔法陣を展開し、扉の魔法陣と重ね合わせた。

 魔法の光が螺旋を描くように回転し始めると、扉が鈍い音を立てて開き始めた。

「行きましょう!」

 ステラが声をかけ、リリカたちが先に進もうとしたその瞬間――。

 冷たい風が吹き抜け、暗闇の中から何者かが現れた。

「待っていたぞ……リリカ・イナガキ……」

 低く響くその声に、リリカたちは一斉に振り返った。

 黒い甲冑に身を包んだ男がゆっくりと姿を現す。

 彼の全身は黒いオーラに包まれ、周囲の空気が冷たく、重く感じられた。

 現れたのはあの黒騎士だった。

 リリカは不安げに問いかけた。

「黒騎士……なぜ私の名前を?」

 その男は冷たく微笑み、低い声で答えた。

「私はザイラス、闇の王ゼイガス様が配下、闇の魔導士の一人にして、闇の騎士だ」

 リリカたちの表情が緊張感で硬くなる中、ザイラスはさらに言葉を続けた。

「よくぞ私の魔法陣を止めた……褒めてやろう。光の猫耳魔法師ステラ。だが、覚えておけ。ここ、ルクス・マギナはすでに我々の領土だ」

 ステラが一歩前に出て、鋭い目でザイラスを睨んだ。

「あなたがルクス・マギナを……何を企んでいるの?」

 ザイラスはゆっくりと顔を上げ、リリカに目を向けた。彼の目は暗い光を放ち、何かを見透かすようにリリカをじっと見つめていた。

「リリカ・イナガキ……君はいずれ我らの闇の女王となる存在だ。まだ気づいていないだろうが、君の力は闇を導くもの。君が我々に加われば、世界を支配することも夢ではない」

 リリカは驚き、恐怖と困惑で声を詰まらせた。

「私が……闇の女王?そんなこと、信じられない……!」

 ザイラスは冷たく笑い、さらに言葉を続けた。

「王宮にいてご存知ないとは滑稽だ。リリカ・イナガキ、あなたの力は特別だ……。私たちの仲間になり、その力を解放しようではないか?」

「そんなこと、冗談じゃない!」

 リリカは怒りを抑え、力強く言い返した。

「私はエルフェリア王国猫耳魔法大隊副隊長隊長リリカ。あなたたちの手に落ちるつもりはない!」

「……だが、君はいずれ目覚める。楽しみにしているぞ、リリカ・イナガキ」

 ザイラスは再び闇の力を集め始めた。彼の周囲に暗黒の魔法陣が現れ、その力が増大していく。

「ここから先は、我々の領域だ。覚悟はできているだろうな?」

 リリカは構えを取り、セルフィとステラも戦闘態勢に入った。

「私たちの覚悟を試してみなさい!」

「では、君たちの力を見せてもらおう……召喚術式展開」

 ザイラスがそう言うと魔法陣から黒い瘴気が立ち上り何体もの黒騎士が現れた。

「一度戦ってご存知でしょう?私の分身達です。この者たちを倒さなければこのルクス・マギナを攻略どころか私には勝てません。リリカ様またいずれ」

 ザイラスはそう言って消えたかと思うと一瞬でステラの横に現れた。

「本当は気づいているのでしょう?光の女王、ステラ様?」

 ザイラスはそう言うと黒い瘴気となって消えてしまった。

 ついに黒騎士が現れ、闇の魔導士ザイラスと名乗る、リリカに対して自身の運命と、闇の力を持つ女王としての役割を語る。リリカはその誘いを拒絶し、ザイラスに戦いを挑むのだった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...