目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第131話 ルクス・マギナ攻略作戦 ⁉其の六

　リリカは、目の前にそびえ立つ異形の存在を見て、思わず息を飲んだ。

　その姿は、かつて彼らが戦った魔犬獣を思い起こさせたが、何かが決定的に違っていた。

　その獣人は、まるで魔犬獣が進化を遂げたかのように、二足で立ち、恐ろしい人型の姿をしていた。

　かつて四足で這い回っていた魔犬獣がそのまま二足歩行になり、異常なほどに筋肉で覆われた体は、まるで鎧を着込んでいるかのような厚みと力強さを誇っていた。

　黒い瘴気がその全身を包み、影のように漂いながら、まるで生きた闇が動いているかのごとく揺らめいていた。

　そしてその大きな獣人を筆頭に何体もの獣人が群れをなして現れた。

　先頭に立つリーダー格と思われる魔人は、他の獣人たちよりもさらに一回り大きく、圧倒的な威圧感を放っていた。

　鋭い牙が口元から覗き、白く輝くその牙はかつての魔犬獣の名残を残している。

　血のように赤く光る瞳は、まるで相手の心まで抉り出そうとするかのように冷たく鋭い視線を放ち、まるで魂まで見透かされるかのようだった。

「うそ……魔犬獣が進化したみたい……！」

　リリカはは驚きのあまり、声を上げた。

「これは……手強そうですね」

　リリカが唇を噛み締めながら言った。

　リーダー格の魔人は、彼らを睨みつけると、低く響くような咆哮を上げた。

　その声は、まるで大地を揺るがすような力強さを持っていて、その瞬間、彼の口から黒い瘴気の玉が飛び出した。

　それは地を這うように飛び出し、近くの木々や草が一瞬で枯れ、腐っていく。

「瘴気の玉……！ 気を付けて！触れてはだめ！」

　ステラが冷静に状況を分析しながら、全員に警戒を呼びかけた。

　彼の背には、鞭のようにしなる尻尾が依然として残っており、それはまるで武器のように強力な一撃を繰り出せる。

　手には鋭い爪が生え、木々や岩を簡単に切り裂くその姿は、まさに悪夢の具現化だった。

　暗黒の炎のように黒い瘴気が、彼の体を取り巻いて渦巻き、不気味な音を立てていた。

「こいつを倒さないと、遺跡に入れない……！」

　レオンは歯を食いしばり、前に進み出た。

　リーダー格の魔人が再び咆哮を上げると、その声に呼応するかのように、他の獣人たちが動き出した。

　彼らは広範囲にわたる連携攻撃を繰り出し、まるで統率された軍隊のように、一糸乱れぬ動きでリリカたちに襲いかかってくる。

「やるしかない……リーダーを倒せば、この群れも崩れるはずよ！」

　ステラが力強く叫んだ。

　リリカもそれに続き、火の魔法を放とうとしたが、リーダー格の魔人は瞬時に反応し、黒い瘴気をまとった爪を振りかざして攻撃を防いだ。

　彼の動きは信じられないほど素早く、体の大きさに反して俊敏だった。

「早い……！」

　リリカは驚愕の声を上げる。

「みんな下がって！ここは私に任せて、セルフィは援護をお願い、レオンはステラとチャチャの援護よ！」

　リリカがすかさず支持を出して剣を構えた。

「試してみるか、ファイヤーブレード」

　そう言うとリリカの体が赤い光の粒子に包まれ、剣が炎をまとい大きくなっていく。

　セルフィは風の槍を展開して群れの魔獣を撃退してゆく。

　しかし、リーダー格の魔人はそれを見越したかのように、再び瘴気の玉を吐き出し、セルフィの槍の軌道を逸らした。

「こいつ、本当に厄介ね……！」

　セルフィが焦りを滲ませた声を出す。

「ありがとうセルフィ！準備完了！」

　そう言うとリリカはファイヤーブレイドを構えてにっこりと笑った。

「セルフィ、雑魚は任せたわ」

　その表情は普段のリリカとは違う戦士の顔に豹変していた。

　そのリリカのあまりの変貌ぶりにセルフィは息をのんだ。

「まるで別人じゃない。本当にリリカ様なの？」

　セルフィは心の中で呟いた。

　黒い瘴気が獣人の周りに渦巻き、まるで空気そのものが重くなったかのように感じられる。

　獣人は低く唸り声を上げ、鋭い爪を振り上げて攻撃の準備を始めた。

「来い！」

　リリカが一歩前に出る。

「リリカ様、無理しないで！」

　セルフィが声をかけるが、リリカは振り返りもせずに前進した。

　リリカは光の魔法を手に集め始めた。彼女の周囲に淡い輝きが現れ、その力は次第に大きくなっていく。

「さあ、いくわよ！」

　リリカは剣を振り上げ、獣人に向かって一直線に突進した。

　獣人はその巨大な体を振りかぶり、鋭い爪でリリカを襲いかかった。

　しかし、リリカはその攻撃を見事にかわし、素早く獣人の懐に入り込んだ。

「これで終わりよ！」

　リリカは剣を振り下ろし、獣人の体を貫こうとしたが、獣人の皮膚は驚くほど硬く、彼女の剣は跳ね返されてしまった。

「なんて硬さ……！」

　リリカが驚いたその瞬間、獣人の反撃が始まった。

「リリカ、危ない！」

　ステラが叫んだ。

　獣人の爪がリリカに迫る。しかし、リリカは瞬時に光のバリアを展開し、その攻撃を防いだ。

「ふぅ、ギリギリね……ただのファイヤーブレードじゃだめかぁ……」

　リリカは息を整え、さらに光の魔力を集中させ始めた。

「じゃあ、これなら……！」

リリカの体から溢れ出す光はますます強くなり、その剣はまるで太陽のように輝き始めた。

「これが私の……本当のファイヤーブレード！」

　リリカは再び剣を振りかざし、獣人に向かって全力で突進した。

　魔犬獣がさらに強力な人型の存在となり、瘴気を纏った獣人たちは圧倒的な力でリリカ達を襲う。リリカは不屈の精神で立ち向かい、戦士としての姿を見せる。セルフィが援護にまわり、緊張感が高まる中でリリカの新たな魔法の力が発揮されるのであった――。