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第103話 父と娘の絆⁉穏やかなひととき!

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 ステラの治癒魔法によって一命を取り留めたレオン。

 彼の体は徐々に回復に向かっており、孤児院の医務室で静かな時間を過ごしていた。

 ステラ、リリカ、そしてメルヴィルは、レオンの容体が安定したことを確認し、セルフィに看病を任せて孤児院を後にすることにした。

 チャチャの背中に乗り、彼女たちは猫耳ハウスへと帰る準備を整えた。

「ステラ、猫耳ハウスのことは気にしなくていいから、しっかりレオンを看病してね」

 とリリカがセルフィに微笑みながら言った。

 セルフィは頷き、レオンのそばを離れることなく看病に専念することを約束した。ガレット団長がステラたちを見送ると、セルフィはレオンの病室へと戻り、彼が安心して眠りについているのを確認した。

 彼女はレオンの寝顔を見つめ、その無事を心から安堵した。

「どうか、早く良くなってね……」

 セルフィは小さな声でそう呟きながら、そっとレオンの手を握った。

 しばらくして、セルフィはそっと病室を出た。廊下に出ると、そこにはガレット団長が待っていた。

 彼の表情には心配と共に、何か話したいことがあるような様子が伺えた。

「セルフィ、レオンはどうだ?」

 ガレット団長が問いかける。

「今、ようやく眠りました。まだ完全に回復していませんが、ステラ様のおかげで命は繋ぎ止められました」

 とセルフィは答えた。

 ガレット団長は深く頷き、しばらくの間沈黙が続いた。

 彼の表情には、何かを思い出しているような遠い目をしていたが、やがて柔らかな声で言った。

「よし、休憩室でお茶でもどうだ?久しぶりにゆっくり話をしよう」

 自分が誘うつもりが先を越され、セルフィは少し驚いたが、すぐに笑顔を浮かべて

 「はい、喜んで」

 と答えた。

 二人は孤児院の休憩室へと向かい、穏やかな雰囲気の中でハーブティーを淹れ始めた。ガレット団長がティーポットから注がれるお湯の音を聞きながら、子供たちが差し入れたパンを取り出す。

「このパン、懐かしいですね。変わらない味です」

 とセルフィが笑顔で言った。

「そうかい?あいかわらず、俺と孤児院の子供たちで作っているよ。昔から変わらない配合で、今でも街に売りに行くんだよ。お前も昔、手伝ってくれたよな?」

 ガレット団長が目を細めて懐かしむように語った。

「ええ、覚えています。あの頃はよく、一緒にパン作りをしましたね。とっても楽しかったです。それに、やっぱり美味しいです。猫耳ハウスにも卸してほしいくらいですよ」

 とセルフィは微笑みながらパンを口に運んだ。

「そうか、また余ったらレオンに持たせてやるよ。あいつもいつも美味そうに食べてるからな」

 とガレット団長は笑いながら答えた。

 団長はパンを一口噛みしめると、ふと表情を変えて言った。

「今回のことは、さすがの俺も肝を冷やしたよ。心臓が止まりかけた時は本当に焦った。もしもレオンが……と思うと、考えたくもない」

 セルフィは驚きの表情を浮かべ、ガレット団長に尋ねた。

「ガレット団長がそんなに焦るなんて、見たかったです。いつも冷静で、どんな時でも強いガレットさんがそんな風になるなんて、想像できません」

 ガレット団長は苦笑いしながら、セルフィの言葉に応えた。

「いや、俺も年を取ったのかもしれん。若い奴が、しかも家族同然の奴が戦場以外で死ぬなんて耐えられないんだ。今回、ステラ様には心から感謝している。あの方が来てくれた時、俺はまるで何か神聖な存在を目の当たりにしたような気がして、不安と緊張が一気に吹き飛んで、安らぎさえ感じたよ。まさに猫神の化身だな」

 セルフィもその言葉に深く共感し、静かに頷いた。

「本当にそうですね。ステラ様とリリカ様は、規格外の存在です。私も一度、ステラ様に命を救われたことがあります。そして、今回レオンは二度目……感謝してもしきれません」

 ガレット団長はその言葉を聞きながら、少し考え込むように口元を押さえたが、次に口にした言葉は少し軽い調子だった。

「ところで、猫耳ハウスでの生活はどうなんだ?みんなと仲良くやれているのか?」

 セルフィは表情を少し明るくし

「とても楽しいですよ。ステラ様もリリカ様も優しくて、よくしてもらっています。それに、あの二人とはもう姉妹みたいなものなんです。私たち、実は『猫耳三姉妹』って呼ばれているんですよ」

 と笑顔で話した。

 ガレット団長は目を見開き、驚いたように言った。

「猫耳三姉妹?そりゃ驚いたな。お前がそんなに仲良くなっているとは思わなかった。いいことだな」

 セルフィは誇らしげに微笑んだ。

「ええ、本当にいい人たちです。だから、私も彼女たちに感謝の気持ちを伝えたいし、これからも支えていきたいんです」

ガレット団長は頷き、

「そうか、ならいいんだ。俺も改めて礼を言いに行かなければならないな。その時はお前も一緒によろしく頼むぞ」

 セルフィは軽く頭を下げ

「もちろんです、お父さん」

 と親しげに答えた。

 ガレット団長はその呼びかけに少し照れたような表情を浮かべた。

「久しぶりにお前に『お父さん』って呼ばれると、どうにも照れくさいな……」

 セルフィはその言葉を聞いて、彼の肩に寄り添いながら微笑んだ。

「本当に久しぶりですね。でも、こうやって一緒に話せるのが嬉しいです。私にとって、お父さんはいつまでも大切な存在ですから」

 ガレット団長は彼女の言葉を受け止め、優しい笑顔を浮かべた。

「お前が元気で、立派にやっているのを見ていると、それだけで俺は十分だよ」

 二人はしばらくの間、ハーブティーを飲みながらパンをつまみ、静かな時間を過ごした。

 外では子供たちの笑い声が聞こえ、孤児院はいつもと変わらぬ温かい空気に包まれていた。

 セルフィとガレット団長、久しぶりの二人きりの時間は穏やかで、彼らの間に流れる愛情と信頼が一層深まっていくようだった。

「お父さん、これからもレオンのことをよろしくお願いしますね。私も、彼が完全に回復するまでそばにいますから」

 とセルフィは小さな声で言った。

 ガレット団長は頷き

「もちろんだ。レオンは俺にとっても大事な息子みたいなものだからな」

 セルフィはその言葉に感謝の気持ちを込めて頷いた。

 そして、彼女は改めてレオンの無事を祈り、これからも彼を守り続けることを心に誓った。

 レオンの回復を見守るセルフィとガレット団長。孤児院で幼少期から自分を育てたガレットをセルフィは「お父さん」と呼び慕う。久々に二人きりで過ごす穏やかな時間は彼らの深い絆を思い出させるのであった――。
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