上 下
69 / 198

第69話  予想外の展開⁉ 揺れる恋の行方!

しおりを挟む
 アレクとステラが猫耳ハウスに着いた頃、リリカとセルフィも猫耳ハウスへの家路を急いでいた。夜の闇が広がり、二人は庭園横の森の中を進みながら話をしていた。

「すっかり暗くなっちゃった…ステラはもう帰ってるかな?」

 リリカが不安そうに呟くと、セルフィがすぐに答えた。

「ステラ様、お腹を空かせてるかもしれません。急いでご夕食の準備をしないと!」

 セルフィは軽やかに木々を飛び移りながら前に進み、リリカもそれに続く。リリカはセルフィの俊敏な動きに驚きながらも、なんとか追いつこうと懸命だった。道中、月明かりが差し込む場所に差し掛かり、前方に猫耳ハウスの屋根が見え始めた。

「猫耳ハウスが見えてきたよ!」

 リリカが嬉しそうに声を上げると、突然セルフィがリリカの腕を引いて止まった。

「リリカ様、ストップ!」

 セルフィが小さな声で警告した。

「え、何?」リリカは不思議そうにセルフィを見た。

「ハウスの前に誰かがいます。これ以上近づくと、気配がばれてしまいます」

 二人は木陰に隠れながらハウスの前をじっと見つめた。リリカは目を凝らし、猫耳をぴくんと動かして周囲の気配を探った。彼女の目が一瞬光り

「あれ、ステラとアレクシス王子だね。なんか…抱き合ってる?」

 と一瞬驚いた様子で言った。

「間違いありません。あの馬車もアレクシス王子のものですし、二人は…どうやら何か深刻な話をしているようです」

 とセルフィが慎重に答える。

 リリカはしばらく二人を観察していたが、気づいたように言った。

「なんか、今は近づかないほうがいい気がするね」

 セルフィも頷いて答える。

「そうですね、今じゃないですね」

 二人は木々の隙間から様子を伺い続けていたが、詳細までは見えなかった。それでも二人の間に漂う甘い雰囲気は感じ取れる。リリカがこっそりとステラとアレクの姿を見守りながら

「なんかいい感じだけど、よく見えないね」

 と呟いた。

 しかし突然、ステラがアレクの手を振り払い、小走りで猫耳ハウスに駆け込んでいくのが見えた。リリカは驚き、
声を上げた。

「えっ、どうしたの?」

 アレクシス王子はその場に立ち尽くし、何が起きたのか理解できていないようだったが、しばらくして我に返り、ゆっくりと馬車に乗り込んで去っていった。

 それを見たセルフィは深いため息をついて

「これは…ダメなパターンですわ」

 と呟いた。

「ダメなパターン?」

 リリカが首をかしげる。

「アレクシス王子が愛の告白をしたのでしょうが、ステラ様がびっくりして逃げ出してしまったのです。アレク様は振られたてしまったのかもしれません」

「ふんふん」

 とリリカは真剣にセルフィの話を聞いていたが、少し混乱していた。恋愛にあまり詳しくないリリカにとって、今の状況は少し難しい。

「デートですれ違いでもあったのでしょうか?アレクシス王子は国一番のイケメンだし、ステラ様も国一番の美少女。文字通り国一番のカップル誕生かと思ってたのに…」

「恋愛ってなかなか、うまくいかない事のほうが多いんです」 

 セルフィは考え込むように言った。

「うまくいかない?」

 リリカはますます混乱してきた。

 セルフィは自身満々に力説する。

「ステラ様は、何かこの人違うって気づいてしまったんです!」

「ちょっとしたすれ違いが重なって。ステラ様は気持ちが冷めてしまったんです!」

「今日は二人のデートについて、あまり触れないであげましょう。それが一番です」

 リリカはセルフィのアドバイスに従って、静かに頷いた。

「うん、わかった。ステラは今失恋して傷ついているんだね」

「そうです、ステラ様にはきっと、心を癒す時間が必要なんです」

 セルフィは悲しい顔をしながらも力説した。

 二人は猫耳ハウスに着くと、ぐるっと回って中を様子を伺う。

「なんか、暗いね。部屋の灯りがついてないよ」
 
 とリリカが不安そうに言うとセルフィが答える。

「ステラ様が一人、暗い部屋で落ち込んでいるのかもしれませんね…そっとしておいた方がいいかも」

 二人はそっと玄関の扉を開け、静かに中に入った。玄関ホールの中はひっそりとしており、まるで誰もいないかのようだった。

 セルフィはため息をつき

「今日は静かにステラ様を見守りましょう」

 とリリカに囁いた。

「うん、そうだね」とリリカも静かに答えた。

 いつもは明るさに包まれている猫耳ハウスだったが、今はひっそりと静寂に包まれている。失恋し傷心のステラにどう対処しようか悩むリリカとセルフィであった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~

すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》 猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。 不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。 何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。 ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。 人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。 そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。 男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。 そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。 (

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...