目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第62話 二人きりの庭園⁉ 王子の甘いささやき！

　夜明け前の薄明かりが王宮の庭園を優しく照らしていた。いつもより早く目を覚ましたステラは、そっと猫耳ハウスを抜け出し、庭園を散歩することにした。

　冷たい朝の空気が彼女の肌に心地よく、ゆっくりと歩を進めるたびに、柔らかな芝生と花の香りが足元から漂ってくる。公務や訓練、そして冒険続きの日々の中で、一人で静かな時間を過ごすのは久しぶりだった。


「ふぅ…」ステラは息を吐き、立ち止まって庭の花々を眺めた。冷たい朝の空気が肌を撫で、気持ちを落ち着かせる。

「きれいな花…」ステラは足を止め、庭園の美しい花々を眺めながら小さくつぶやいた。まだ薄明るい空と、朝露に輝く花びらが心を落ち着かせてくれる。
　
　ステラは、色とりどりの花の香りを楽しみながら、庭園の奥へと進んだ。すると、背後こちらに向かってくる気配を感じた。

「誰？」ステラは瞬時に振り返った。その瞳は警戒の色を帯び、すぐに何かの魔法を唱えそうな雰囲気だった。しかし、彼女が視界に捉えたのは、アレクシス王子だった。

「ステラ、やはり君か」と、王子は穏やかな笑みを浮かべていた。だがその顔にはどこか疲れが滲んでいる。長い公務から戻ったばかりのようだ。

「アレクシス様…どうしてここに？」ステラは驚きつつも微笑み返し、緊張が和らいだ。

「実は、今日猫耳ハウスに行こうと思っていたんだ。君たちの任務の話をメルヴィルから聞いて、いてもたってもいられなくなって」

　アレクシスは真剣な眼差しでステラを見つめ、その瞳には彼女への心配と優しさが滲んでいた。アレクシスはステラに近づき、視線をそらさずに言葉を続けた。

「無事に任務を終えたと聞いて安心したけど…本当に大変だっただろう？」

　ステラは一瞬、その言葉に戸惑った。彼女は自分の強さと覚悟に誇りを持っていたが、アレクシス王子の優しさに触れると、心の奥にある不安が少し揺れ動くのを感じた。

「ありがとう、アレクシス様。任務は大変でしたけど、リリカやセルフィ、それにレオンもみんな頑張ってくれて、無事に乗り越えることができました」と、ステラは静かに答えた。

「君が強いことは分かっている。でも…」

　アレクシスの声が少し弱くなる。

「君の事が心配で…その…」

　その言葉に、ステラは顔を赤らめた。

「アレクシス様…そんなに心配をかけてしまっていたなんて…」

　彼女はうつむき、少し恥ずかしそうに言った。

「ステラ、君が無事でいてくれることが、僕にとって何よりも大切なんだ。君の強さも、勇敢さも、全てが僕にとって誇りだよ。でも、君が危険な目にあっていると思うと、いてもたってもいられなくなる」

　その言葉に、ステラの心はますます揺れ動いた。彼の優しさと深い想いが、彼女の心を包み込んでいく。

「私も…あなたが見守ってくれているから、戦い続けられます」

　ステラは正直に答えた。彼女の声は少し震えていたが、その言葉には強い感情が込められていた。

　アレクシスは優しく微笑みながら、ステラの手を取り、そっと握った。その瞬間、ステラの頬がさらに赤くなり、心臓がドキドキと高鳴る。

「君のそばにいたい…それが、僕の正直な気持ちだよ、ステラ」

　ステラは彼の真剣な眼差しを見つめ返し、何も言えずにただ頷いた。彼女もまた、この瞬間がとても特別で、大切な時間だと感じていた。

　二人は庭園の中で静かに立ち尽くし、まるで世界に二人しかいないかのように、ゆっくりとした時間が流れた。朝の光が少しずつ強まり、二人の間に漂う空気は一層温かさを帯びていた。

「ステラ…」アレクシスはふと、彼女の手を握り直しながら、少し照れたような声で続けた。「明日、君と二人きりで出かけられないだろうか？」

　その言葉に、ステラの心臓が一瞬止まったかのように感じた。彼女の目が驚きに見開かれ、しばらく何も言えずにアレクシスを見つめた。

「明日…ですか？」ステラは戸惑いながらも、どうしていいのか分からず、アレクシスの顔をじっと見つめた。

「そう。君と、もう少しゆっくり話をしたいんだ。誰にも邪魔されずに、君と二人で…」アレクシスの言葉は真剣そのものだった。

「そう…ですね…約束もしましたし…」ステラはこの急な展開に完全に動揺していた。彼の誘いが、彼女の心を大きく揺さぶった。

　アレクシスは優しく笑いながら、「もちろん、無理にとは言わないよ。君が嫌なら、無理に誘うつもりはない。ただ、少しでも君と過ごせる時間があればと思って」と、彼女を安心させるように語りかけた。

　ステラは胸がドキドキし、顔は真っ赤になったまま、何も言えずに立ち尽くしていた。彼女の心の中には、アレクシスと二人きりで過ごすことへの期待と、不安が入り混じっていた。

「…それでは明日…」
　
　ステラはようやく絞り出すように言い、視線をそらした。

　アレクシスはそんな彼女の姿に微笑みながら

「ありがとう、ステラ。君と会えるだけで、それだけで僕は嬉しいよ」

「その尻尾、初めて見るけどとても似合ってる」

　と穏やかに言い、彼女の手をそっと離した。

　二人の間に漂う甘い空気は、庭園の朝の光に包まれながら、次第に消えていった。

　このひと時で二人は言葉以上の想いを伝えあい、お互いの存在が、かけがえのないものになりつつあると予感するのであった――。