目覚めたら猫耳⁉ ～神隠しで別宇宙のアイドル級猫耳メイド魔法使い⁉に大変身！～

第58話 町長の大仕事⁉ 転移魔法で王宮へ！

　四人が朝食を終えて展望食堂を後にし、ホテルのロビーでゆっくりとくつろいでいると、バイス町長が現れた。彼の穏やかな笑顔は相変わらずだが、その目には少しばかりの緊張感があった。今日は彼の手で、四人を王宮まで転移させるという大仕事が待っている。

「皆様、お待たせしました。準備が整いましたので、町役場へ向かいましょう」

　バイスの言葉に、四人は立ち上がり、彼の案内でホテルを出発した。リリカとステラは肩を並べて歩き、セルフィとレオンは後ろをついていった。町の人々は二人に注目し、しばしば足を止めて挨拶を交わす。リリカとステラは旅先で短い滞在にもかかわらず、この町で多くの人々に親しまれているようだった。

「ここを去るのは少し寂しいわね。けれど、王宮への報告もしないと」とステラがつぶやく。

「うん、でも転移魔法で一気に戻れるなんて便利だよ。これがなかったら、もっと時間がかかったはずだしね」とリリカは明るく笑った。

　やがて町役場に到着すると、バイスは一行をある一室へ案内した。その部屋は普通の会議室とは違い、どこか神聖で荘厳な雰囲気が漂っていた。壁には特に装飾もなく、天井は高く、静寂が広がっている。そして、部屋の中央には地下へと続く階段があった。人工光魔石が設置されており、地下への道を明るく照らしている。

「さあ、こちらへどうぞ。地下に転移魔法のための特別な空間があります」

　町長に促され、四人は階段を一歩一歩慎重に降りていった。地下には、冷たくも清らかな空気が漂い、魔力のようなものを肌で感じる。長い階段を下り切ると、突然光景が一変し、そこは広大な石畳の広間に出た。床には巨大な魔法陣が描かれ、神秘的な光が淡く放たれていた。石柱が立ち並び、まるで古代の遺跡のようだった。

「ここが転移魔法を行う場所です。皆さん、手を取り合い、魔法陣の中央に立ってください」

　四人は指示通りに手を取り合い、円を作って魔法陣の中心に立った。リリカは、バイスを見つめ、感謝の言葉を口にした。

「おじいちゃん！、色々とお世話になりました。本当にありがとう！」

　町長は穏やかに微笑み、杖をしっかりと握りしめた。

「どういたしまして、リリカ様。皆様の旅路が無事でありますように」

　彼は杖を高く掲げ、ゆっくりと呪文を唱え始めた。その声は静かに響き渡り、魔法陣に描かれた紋様が次第に輝きを増していく。杖が光を放ち、魔法陣全体が活気を帯びたように回転を始めた。

「それでは、いきますぞ…！」

　町長が杖を振りかざして魔法陣に打ち付けると、床の石畳が一瞬にして光り輝き、魔法陣がさらに高速で回転し始めた。回転する魔法陣から光が立ち上がり、まるで四人を包み込むかのように輝きが増していく。

「すごい…ワクワクする…」リリカはその光景に目を奪われ、呆然とつぶやいた。

　光はますます強くなり、床には光のトンネルが現れた。四人はそのトンネルに吸い込まれるようにして、次第にその場から消えていった。まるで底のない井戸に飛び込むかのような感覚が彼らを襲い、瞬く間に意識がふわりと浮き上がるような感覚に包まれた。

　転移魔法による光のトンネルの中は、どこまでも続くように感じられ、四人の周囲には鮮やかな光の帯が広がっていた。まるで、無限の空間を漂っているかのような感覚が続く。足元は何も感じず、まるで空中を浮遊しているかのような不思議な感覚に包まれた。

「何だか、夢の中にいるみたい…」リリカが言った。

　彼女の声は、光に反響するかのように柔らかく広がり、他の三人の耳にも届いた。セルフィがそれに答えるように笑い声を漏らした。

「ふわっとして、現実感がないです。この感覚。やっぱり慣れない」

　ステラもその声に同調し、リラックスした表情で応えた。

「ええ、毎回不思議な感じがするけど、でも心地良さもあるのよね。何もない空間を漂うって」

レオンは少し顔をしかめながらも、軽く苦笑いを浮かべた。

「俺はどうにもこの感覚が苦手です。早く足元にしっかりした感触が欲しいよ」

彼の言葉に、リリカが笑いながら答えた。

「もうちょっとだけ我慢してね、レオン。すぐに王宮に戻れるんだから！」

　そんな会話を交わしているうちに、周囲の光が次第に薄れていき、四人の足元にしっかりとした感触が戻ってきた。次の瞬間、四人は王宮の転移の間に到着した。

　王宮の転移の間には光の粒子がまだわずかに漂っていた。四人は無事に到着したことを確認し、ほっと一息ついた。

「ふぅ、無事に戻ってこれたわね…」リリカが安堵の表情を浮かべながら言った。

「本当に。転移魔法は便利だけど、やっぱり毎回ちょっと緊張するわね」とステラも笑顔で続けた。

　セルフィも肩の力を抜きながら言った。

「これで次の任務に向けて、しっかり準備ができるわね。時間もかなり節約できたし、メルヴィルさんにしっかり報告しないと」

　レオンは少し顔をしかめながらも、ようやく足元のしっかりとした感触に満足した様子で頷いた。

「俺はやっぱり、この浮遊感には慣れないな。でも、無事に戻ってこれて良かったよ」

　一方で町長は無事に転移魔法が成功した事を確信し、肩の力を抜いて深いため息をついた。

「ふぅ…久しぶりに転移魔法を使ったが、やはり疲れるものだな」

　彼は杖を軽くつきながら、一人静かに呟いた。魔法を使うこと自体は問題なかったが、これだけ大規模な転移魔法を使うのは久しぶりだったため、彼には大きな負担がかかっていた。

「だが、彼らが無事に王宮に戻れたのなら、すべては成功だ。あの四人には、まだまだ多くの試練が待ち受けているだろうが、きっと乗り越えてくれるだろう」

　町長は、ゆっくりと階段を上りながら微笑んだ。その背中には、疲れの中にも充実感が漂っていた。

　四人は、無事に戻った王宮で新たな冒険の始まりを感じながら、再び気持ちを引き締めていた。彼らの旅は続き、次なる挑戦が待ち受けている――そして、彼らはその全てを乗り越えていくだろう――。