上 下
1 / 7

見た目は女の子

しおりを挟む
20XX年。男の娘は一目見ただけでは区別できないほど、非常に進化していた。

髭が生えてこないこと。
男のような体毛が生えていないこと。
顔が小さいこと。
声変わりしてないこと。
顔が可愛いこと。
肌が美しいこと。
髪の毛が美しいこと。
筋肉の付き方が男でないこと。
骨格が男でないこと。
仕草が自然に可愛いこと。
男の体臭がしないこと。
などなど。

もちろん、上記の条件に当てはまらない本物の女性もいる。しかし、女性はやはり女性である。男とは明らかに違う。

過去の時代には、見た目明らかな男性が、自分は心は女性だと主張して、服装や髪型だけ女性風にして、まるで化け物のような風体で街中を歩き回り、酷いのになると女子トイレに堂々と入ったり、強引に女湯に入ろうとする輩が存在した。こういう連中は、一目見て明らかに男であったので、女性たちはこういう女装男を直感的に避けた。見るからに男が、ど派手な女装や女性の髪形にして無理矢理女性のふりをすると、却って化け物のように見える。

男の娘が進化して、こういう女装男の醜さが際立つようになると、野郎の女装男どもは、人々から厳しい視線を受けるようになった。
自分は、心は女だと主張するだけのどう見ても男の連中は、はっきりと女性とは認められないことが社会通念化したのである。
まるで生物が、拒絶反応により異物を体外へ吐き出すかのように、奴らは社会から締め出された。
と言っても、野郎に戻っただけのことである。真面目に働けば、普通に暮らせる。

こうして、一目見ただけでは男と全く区別できないほどの男の娘ばかりが、市民権を勝ち得る世の中となった。

もちろん、全てを兼ね備えた子はなかなかいないものであるから、彼女たちは美しい女性となるために、涙ぐましい努力を続けるのである。

しかしながら、「男の娘二世」という子供たちが登場してくると、生まれつきほぼ女性の子たちが闊歩するようになった。
「男の娘二世」とは、父親が男の娘で、おなべや一般女性と結婚して生まれてきた男の娘たちである。
その子供たちのうちには、強力な遺伝子を持っている子が少なからずいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『へっ、へっ。溜まんねえ景色だな。』
如月学園に入学した、辻本靖は後ろの席から教室中を見渡して、悦に浸っていた。
クラスの半数は、セーラー服を着ていて、短いスカートから眩しいばかりの白い太ももを出している。

如月学園は元々は共学であったが、全国でも有数な男の娘優遇措置を取ったおかげで、男の娘の生徒数が増えて行き、とうとう本物の女生徒はいなくなってしまった。そういう環境に居づらくなり、ある時を境に、堰を切ったように次々と転校してしまったのである。

こうして如月学園は、事実上男子校になった。

辻本は醜男である。そのため女性にもてたことが無い。いつもどの女性からも嫌われてきた。これは辻本の容貌のせいだけでなく、辻本の性格も災いしていた。自業自得なのである。
しかしこういう男は自己本位であるから、手を握ったり体を摺り寄せたりすることは、男同士なのだから普通にできるだろうと、高を括っていた。それが大きな間違いであることは、直に分かることになる。

休み時間になると、若い子たちだけに話に花が咲く。
辻本はそういう子たちの、太腿ばかりを凝視していた。
「えー、何それ?ちょっと見せてよ。」
と、別の子のスマホを見ようと、前のめりになった子のスカートの中が見えそうになった。
『ああっ、もうちょっとで見えそうだ。』
と、辻本は思わずしゃがんで床にまで顔を低くして、その子のスカートの中を覗こうとした。
その時、誰かが辻本の顔を思いっきり踏みつけた。
突然頭に打撃を食らった辻本は、立ち上がって相手に掴みかかった。
「てめー、何しやがんだよ!ぶっ飛ばすぞ!」
相手はきざな仕草で「ちっちっ」と、人差し指を振って言った。
「君い、盗撮は犯罪だよ。」
「なにー!盗撮なんかしてねえぞ!俺はただ下からスカートの中を覗き込んでただけだ。」
この騒ぎに気が付いた先ほどの子たちは、辻本の顔を変態を見るような目つきで睨んで、そこから離れて行ってしまった。
但し、辻本が『変態』だというのは当たっている。

『くっそー、変な目で見られちゃったじゃないか。あの野郎、必ず撲ってやる。』
辻本は執念深かった。

女の子たちは、何人かのグループに分かれてぺちゃくちゃ喋っている。なかにはちゃっかり一人の子を抱え込んで、二人っきりで語らっている男もいる。
そういう男たちは、やはりイケメンである。

辻本はくそ面白くないので、二年生の教室を見物しに行ってみた。
二年生の教室は、一年生のとはかなり雰囲気が違っていた、
ただ黙って抱擁しているだけのペアが、何組かいた。まるで深夜のアベックの溜まり場の公園のようだ。女の子の腰に手をまわして語り合っているペアもいた。
かと思えば、野郎だけで固まって話しているオタクっぽい連中や、ずっと一人でスマホを見ている連中もいた。
二極化が進んでいるようだ。
どきっとしたのは、女の子同士で抱擁しているペアもいたことである。男役と女役があるのだろうか。
性別上はどちらも男だから、見ていても分からない。
ただ気になったのは、女の子を抱いている男はことごとくイケメンだったことだ。
『やべーな、二年生は。この分だと三年生は、相当やべーんじゃねえか。』
と、辻本は勝手な妄想をした。

終業のベルが鳴ると、辻本は一目散に喫茶店に駆け込んだ。マスターに色々話を聞きたかったからだ。
「うん、確かに整形してるよ。高校生なのに、よく金があるもんだなと思うよ。」
『そうか、やっぱりあの美少女たちは整形してるのか。』と、辻本は「さもありなん」と、相槌を打った。
「違う、違う。男が整形してるんだよ。もてたいんだよな、奴らも。」
と、マスターは意外な事実を言った。
「女の子?いや、整形してる子は聞いたことないな。やっぱ若いうちに整形しちゃうと、歳取ってから悪影響あるからね。あの子たちは土台がいいんだよ。特に最近の子は。」
辻本は鼻息を荒くしながら、マスターに質問した。
「俺も整形したら、イケメンになれますか!」
マスターは、「うーん。」と唸ったまま、次の言葉を出せなかった。

ドアを開けサラリーマン風の客がやって来て、辻本とマスターとの会話は途切れてしまった。
やがて如月学園の制服を着たカップルが何組か入って来た。他の一般客も入って来て、店は賑わって来た。
辻本が観察するに、男どもは如月学園女子の太ももをちらちら盗み見しているようだ。まだ寒い風が吹くというのに、皆、生足を惜しげもなく出している。そして皆、顔が可愛い。男どもは、顔と太ももを見比べながら、悦に入っているようだ。
辻本のところに、マスターが注文の品を持ってきた。
「さっきの話、よそではしないでね。皆、うちの大事なお客さんだから。」
と、マスターがこっそり耳打ちした。

店からの帰り道、辻本は考えた。
「バイトすれば、プチ整形くらいなら何とかなるだろう。そうすれば俺も二学期には、可愛い子を腕に抱いていちゃいちゃできるようになるってもんだ。」
辻本はマスターの無言の忠告を聞いていない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...