雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

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第9章 絶対零度の死闘

十一話 最終奥義

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“恐らく、これが奴の事実上最後の一撃。今なら阻止する事は容易いが……”


「フン」


アザミはニヤリと微笑する。


“いや、それは不粋だな。ーー面白い!”


「いいだろう。お前の最後の一撃、真っ向から受けてやる! それで俺を倒せるものならな」


アザミは構え、右拳に力を集約する。絶対の自信は元より、彼の最期の意志を尊重する気持ちがあったのかもしれない。


何より、アザミ自身も本気でぶつかってみたかった。これ程の高揚感もといーー危機感を覚えたのは四死刀との闘い以来。その上で勝つと。


「最後の勝負を受けてくれた事、感謝致します……」


ユキは“本来は受ける必要の無い”勝負を承諾したアザミに礼を述べ、刀を天へと掲げた。


ーー瞬間周りの冷気、蒼白の粒子は雪一文字へと集約していき、その刀身は蒼白に輝いていく。


「星霜剣最終極死霜閃 ーー“無氷零月”(むひょうれいげつ)」


アザミは確かに見た。その極零に佇む、美しくも小さきながら絶対成る死神の姿を。


もしかしたら敗北の可能性も有るかもしれないと。それは初めて、自らの死をも予感させるに足るーー


「なら打ち砕いてみせよう! 俺の全身全霊を込めた一撃で!」


アザミの右拳に集約された闘気は、かつてない程に溢れていた。それは相対する極零に勝るとも劣らない。


刹那、二人の戦闘思考が最終段階に移行した。それはこの闘いが、次で終幕を迎える事を意味していた。


ユキは絶対零度を宿した刀身を、鞘に納め構える。


居合いの構えから、かの『神露・蒼天星霜』かと思われたが、何処か違う。


“……消えた?”


アザミは気付いた。先程まで肌で感じていた筈の冷気も、闘気も、彼の気配さえもが一切消えた事に。


彼の姿は其処に確かに在る。だが感じ取れない。在る筈なのに無いような、そんな奇妙な感覚に陥っていく。


激しい闘気で大気は震え、地殻変動でも起こしそうなアザミとは余りにも対照的だ。


“星霜剣最終極死霜閃――無氷零月”


※それは極論云うと、絶対零度を刃に宿した居合い抜き。


だがその極意は、全てを消す事に有る。冷気も闘気も殺気も気配も、五感で感じられる全てをだ。


完全な虚無の中に確かに在る、絶対なる死の存在。


――虚空の零月から一瞬で満月に移り変わる時、死神の刃が命の燈を消す。


この技を前に生き残った者はもとより、反応出来た者さえ――皆無。

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