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第9章 絶対零度の死闘
九話 拒否
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「ーーなんて、そんな事本気で言うと思っていたのですか?」
そうユキは口に溜まった血を、アザミに向かって吐き飛ばす。アザミの精悍な顔にその血が掛かり、垂れ落ちるがアザミの表情は変わらない。
「狂座側に付く位なら死んだ方がマシです。それでも私は……絶対に負けられない!」
それがユキにとっての、最後の意地だった。
「それがお前の答えか……。命より誇りを選ぶ、お前のその考え、嫌いじゃないがな。本当に残念だ……がーー」
アザミは微笑しながらも右拳に力を集約し、掴んでいる左手をそっと放す。
「やめてぇ!!」
まるで時が止まったかの様にゆっくりと。
「散れ!!」
時が動き出す。アザミの渾身の一撃が、右拳から放たれたのだった。
その一撃によりユキの小さな身体は、遥か後方の絶壁まで吹き飛び、其処へ埋め込まれる様に追突する。其処からは土砂崩れを起こしたかの様に、ガラガラと崩れながら白煙が巻き上がった。
「ユ……キ」
アミはその光景に言葉も出ない。
それは死という現実。その現実を直視したくはなかった。
「あとは光界玉の奪取か……」
アザミはアミに目も暮れる事無く、絶壁の空洞へ向かい歩を進める。
“見逃された?”
そう思った時には既に、アミはアザミの前に立ちはだかり、小太刀を向けて構えていた。
「このまま行かせない!」
“勝てる筈も無い事は分かっていても……”
「止めておけ。奴の命に免じて、お前だけは見逃してやる。命を捨てて迄お前を守ろうとした、奴の想いを無駄にするな……」
アザミは構わず歩を進めようとするが、アミはその場から動かない。
「馬鹿にしないで! 私一人生き残る訳にはいかない!」
涙ながらに叫びながらもアミは、アザミに対して構えを解かなかった。
「それを犬死にというのが分からんか?」
「分かってる……。これは犬死にかもしれない。それでも……此処は退けない!」
“ごめんねユキ……。でもユキ一人を逝かせはしないからーー”
「全く、お前達人間というのはよく分からんな……」
アザミは立ちはだかり動かないアミに、ふと妹の事を思い出す。が、すぐに消えアミへ向けて右手を翳す。
「ならば、すぐに同じ処へ送ってやろう。あの世で仲良く暮らすがいい」
“せめて一太刀……”
アミがアザミに向かって斬り掛かろうとする、その時だった。
「まだですーー」
“ーーっ!?”
二人はその透き通る様な、有り得ない筈の声が確かに聞こえた。
そうユキは口に溜まった血を、アザミに向かって吐き飛ばす。アザミの精悍な顔にその血が掛かり、垂れ落ちるがアザミの表情は変わらない。
「狂座側に付く位なら死んだ方がマシです。それでも私は……絶対に負けられない!」
それがユキにとっての、最後の意地だった。
「それがお前の答えか……。命より誇りを選ぶ、お前のその考え、嫌いじゃないがな。本当に残念だ……がーー」
アザミは微笑しながらも右拳に力を集約し、掴んでいる左手をそっと放す。
「やめてぇ!!」
まるで時が止まったかの様にゆっくりと。
「散れ!!」
時が動き出す。アザミの渾身の一撃が、右拳から放たれたのだった。
その一撃によりユキの小さな身体は、遥か後方の絶壁まで吹き飛び、其処へ埋め込まれる様に追突する。其処からは土砂崩れを起こしたかの様に、ガラガラと崩れながら白煙が巻き上がった。
「ユ……キ」
アミはその光景に言葉も出ない。
それは死という現実。その現実を直視したくはなかった。
「あとは光界玉の奪取か……」
アザミはアミに目も暮れる事無く、絶壁の空洞へ向かい歩を進める。
“見逃された?”
そう思った時には既に、アミはアザミの前に立ちはだかり、小太刀を向けて構えていた。
「このまま行かせない!」
“勝てる筈も無い事は分かっていても……”
「止めておけ。奴の命に免じて、お前だけは見逃してやる。命を捨てて迄お前を守ろうとした、奴の想いを無駄にするな……」
アザミは構わず歩を進めようとするが、アミはその場から動かない。
「馬鹿にしないで! 私一人生き残る訳にはいかない!」
涙ながらに叫びながらもアミは、アザミに対して構えを解かなかった。
「それを犬死にというのが分からんか?」
「分かってる……。これは犬死にかもしれない。それでも……此処は退けない!」
“ごめんねユキ……。でもユキ一人を逝かせはしないからーー”
「全く、お前達人間というのはよく分からんな……」
アザミは立ちはだかり動かないアミに、ふと妹の事を思い出す。が、すぐに消えアミへ向けて右手を翳す。
「ならば、すぐに同じ処へ送ってやろう。あの世で仲良く暮らすがいい」
“せめて一太刀……”
アミがアザミに向かって斬り掛かろうとする、その時だった。
「まだですーー」
“ーーっ!?”
二人はその透き通る様な、有り得ない筈の声が確かに聞こえた。
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