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第9章 絶対零度の死闘
七話 鬼の力
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「ごほっ……」
ユキはその場で膝をつき、左手で口を抑え吐血する。
「ユキ!!」
アミは急ぎ、ユキの下に駆け寄った。
“駄目、これ以上は……もう闘う処じゃない!”
見ると腹部からの流血は止まらない。急ぎ手当てをしないと、命に関わるのは一目瞭然だった。
「傷のせいで技の威力も急激に衰えてきたな。もう限界だろう……だが、悪く思うなよ」
突如瞳が緋く輝いたアザミは、右拳を握り締め力を集約する。その拳からは、はっきりと視覚出来る程の、形容し難いまでの凄まじい闘気を纏っていた。
「刃鋼線は一つの攻撃する手段に過ぎない。俺の真の武器は、この“鬼”の力による直接打撃ーー」
“鬼”
※一般的に鬼は邪悪なる者の象徴であり、古来から妖怪の類いでもある。また地獄の獄卒としての顔もあり、共通しているのは最も強大な力を持つ、最強の邪悪生物で在るという事。
妖怪が人と交わる事も有るように、稀に鬼と人が交わる事も有る。
人で在って人で無い。人で在りながら人を超えた者。鬼との混血で在る者は、異能力とは異なる――異能さえも超えるとされるその力は、先天性異能者『特異点』と同等の位置付けに在る。
アザミはその鬼の力を受け継いできた一族の末裔であった。毛髪と呼応する異彩色魔眼とはまた異なる、特徴的な緋色の瞳こそが、鬼の血を受け継ぐ者の証。
ーー鬼の力と不死身の復元能力。これこそがアザミが特異点ーー四死刀をも倒し、狂座に於いて直属最強と謂われる所以であった。
「ユキ? 早く逃げよう!」
アミはユキを抱える様に撤退を促すが、重傷を負った彼と共に、アザミから逃げる事は不可能に近いのは痛感していた。それでもアミは、これ以上ユキが傷付く姿を見たくなかったのだ。
「殴り殺してくれる!!」
そんなアミの想いとは裏腹に、アザミが凄まじい迄の突進力で襲い掛かってきた。
「離れてアミ!」
ユキはアミを突き放す様にその場から退かせ、刀と鞘を十字に構え、アザミの拳打をがっしりと受け止めようとした。
だがーー
“なっ、何て速さと力! 受け止める事も流す事も出来ない!!”
アザミの拳打の威力は、常識の桁が外れていた。
刀と鞘で柔らかく受け止めたにも拘わらず、その衝撃を吸収しきれず、ユキは後方まで弾き飛ばされた。
その軌跡からは、衝撃に依って砂埃が巻き上がる。
「刀ごと叩き潰すつもりが、上手く受けたな。だが、次はそうはいかん」
アザミが悠然と歩を進めた時、背後から何かによって貫かれる。
“ーー何っ!?”
吹き飛ばされた筈のユキが、何時の間にかアザミの背後から刀を刺し貫いていた。
「ほう、何時の間に? 相変わらずの速さだな。だが……」
アザミは身体を捻りながら、右肘を繰り出す。その肘鉄を頭部に直撃されたユキは、その衝撃で後方へ弾き飛ばされた。
「俺への攻撃が無意味だという事を、そろそろ理解しろ」
飛ばされたユキの跡を追う様に、アザミは右拳を振り上げながら追撃する。
「くっ!」
何とか踏み止まり、突きによる反撃を繰り出すが、アザミはお構い無しに突っ込んでいく。
「攻撃が無意味という事は、防御する事無く攻撃出来るという事だ!」
刀で貫かれた身体を気に留める事無く、右手による掌底を繰り出す。
「がはっ!!」
攻撃の最中に避けられる筈もなく、ユキはその掌底を顔面にモロに喰らい、吹き飛ばされながら倒れ込むのだった。
立ち上がれない事は、誰の目にも明らかであった。
ユキはその場で膝をつき、左手で口を抑え吐血する。
「ユキ!!」
アミは急ぎ、ユキの下に駆け寄った。
“駄目、これ以上は……もう闘う処じゃない!”
見ると腹部からの流血は止まらない。急ぎ手当てをしないと、命に関わるのは一目瞭然だった。
「傷のせいで技の威力も急激に衰えてきたな。もう限界だろう……だが、悪く思うなよ」
突如瞳が緋く輝いたアザミは、右拳を握り締め力を集約する。その拳からは、はっきりと視覚出来る程の、形容し難いまでの凄まじい闘気を纏っていた。
「刃鋼線は一つの攻撃する手段に過ぎない。俺の真の武器は、この“鬼”の力による直接打撃ーー」
“鬼”
※一般的に鬼は邪悪なる者の象徴であり、古来から妖怪の類いでもある。また地獄の獄卒としての顔もあり、共通しているのは最も強大な力を持つ、最強の邪悪生物で在るという事。
妖怪が人と交わる事も有るように、稀に鬼と人が交わる事も有る。
人で在って人で無い。人で在りながら人を超えた者。鬼との混血で在る者は、異能力とは異なる――異能さえも超えるとされるその力は、先天性異能者『特異点』と同等の位置付けに在る。
アザミはその鬼の力を受け継いできた一族の末裔であった。毛髪と呼応する異彩色魔眼とはまた異なる、特徴的な緋色の瞳こそが、鬼の血を受け継ぐ者の証。
ーー鬼の力と不死身の復元能力。これこそがアザミが特異点ーー四死刀をも倒し、狂座に於いて直属最強と謂われる所以であった。
「ユキ? 早く逃げよう!」
アミはユキを抱える様に撤退を促すが、重傷を負った彼と共に、アザミから逃げる事は不可能に近いのは痛感していた。それでもアミは、これ以上ユキが傷付く姿を見たくなかったのだ。
「殴り殺してくれる!!」
そんなアミの想いとは裏腹に、アザミが凄まじい迄の突進力で襲い掛かってきた。
「離れてアミ!」
ユキはアミを突き放す様にその場から退かせ、刀と鞘を十字に構え、アザミの拳打をがっしりと受け止めようとした。
だがーー
“なっ、何て速さと力! 受け止める事も流す事も出来ない!!”
アザミの拳打の威力は、常識の桁が外れていた。
刀と鞘で柔らかく受け止めたにも拘わらず、その衝撃を吸収しきれず、ユキは後方まで弾き飛ばされた。
その軌跡からは、衝撃に依って砂埃が巻き上がる。
「刀ごと叩き潰すつもりが、上手く受けたな。だが、次はそうはいかん」
アザミが悠然と歩を進めた時、背後から何かによって貫かれる。
“ーー何っ!?”
吹き飛ばされた筈のユキが、何時の間にかアザミの背後から刀を刺し貫いていた。
「ほう、何時の間に? 相変わらずの速さだな。だが……」
アザミは身体を捻りながら、右肘を繰り出す。その肘鉄を頭部に直撃されたユキは、その衝撃で後方へ弾き飛ばされた。
「俺への攻撃が無意味だという事を、そろそろ理解しろ」
飛ばされたユキの跡を追う様に、アザミは右拳を振り上げながら追撃する。
「くっ!」
何とか踏み止まり、突きによる反撃を繰り出すが、アザミはお構い無しに突っ込んでいく。
「攻撃が無意味という事は、防御する事無く攻撃出来るという事だ!」
刀で貫かれた身体を気に留める事無く、右手による掌底を繰り出す。
「がはっ!!」
攻撃の最中に避けられる筈もなく、ユキはその掌底を顔面にモロに喰らい、吹き飛ばされながら倒れ込むのだった。
立ち上がれない事は、誰の目にも明らかであった。
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