雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

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第9章 絶対零度の死闘

六話 復元

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アザミの上半身は、左目の間に在る赤い刻印と同じ様なものが無数に刻まれていた。赤い刻印は不規則に点滅しており、これがアザミの身体全体から異様な迄の邪気を纏っていた。


「これが俺の能力ーー“怨呼再閻呪”。この刻印が刻まれた肉体は、何人たりとも滅する事は出来ない。再生能力を超えた再生、復元能力に依ってな」


アザミのその姿、能力に二人は絶句する。


「俺の渾名は別名“不死身”のアザミ。首を飛ばそうが頭を潰そうが無意味な事。元より死の無い存在だからな……」


首を飛ばしても倒せない。それは即ち、倒す方法が無いという事。


それでもユキは、腹部の傷を抑えながらも立ち上がった。


「ならば、復元出来ぬよう粉々に吹き飛ばすのみです!」


ユキは刀を鞘に納めて居合いの構えを取る。だが、今にも倒れそうな位、足元が覚束無い。


「ふっ、無理するな。その腹部の傷は致命傷だ。しかも体力も限界に来ている今のお前では、俺に傷一つ付ける事も出来はしない」


アザミがその言葉を言い終わる頃には既に、ユキはかの奥義を放っていた。


“神露ーー蒼天星霜”


鞘走りから成る、音の刃と極低温が複合した“星霜剣”奥義ーー


蒼白の奔流に巻き込まれたアザミは一瞬で多数に分離し、その全てが凍り付く。


だが、直後二人は信じられない光景を目にする。


「そ、そんな……」


凍り付き多数に分離したアザミの肉体は、まるで水銀が一つに戻るが如く、元に戻っていく。


“ばっ……化け物!?”


その光景は、それ以外の形容詞は見当たらない。


「だから言っただろう。無意味だとな」


アザミは何事も無かったかの様に、元に戻っていた。
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