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第8章 決戦の刻
二話 決心
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ーーユキはひたすら走り続けた。
右手で顔を覆っていたのは、目尻から涙が抑えられなかったから。
途中、リュウカとミイの親子とすれ違う。
リュウカはユキのもう一つの特異能ーー“再生再光”により、日常生活に支障が無い位に回復していた。
「あっ! ユキお兄ちゃん」
「おお! 御礼をしようと捜していた処だ」
笑顔で迎える二人。しかし構わず、ユキは二人の間を擦り抜ける様に走り去る。
「……ユキお兄ちゃん、泣いてた?」
ミイは右手で顔を覆っていた彼の手の間から、確かに涙がこぼれ落ちていたのが見えた。
ユキの姿は森の方角へ向かっている事。
二人は不思議そうに、走り去ったユキの後ろ姿を眺めていた。
***********
ーーアミは何時も優しく暖かくて……。
私には居心地が良過ぎるから。
それが嬉しくて……。
私も貴女を愛してます。
でも私が傍に居ると、何時か迷惑が掛かるから……。
でもアミを護ると誓ったこの考えを、違えるつもりはない。
影で貴女を護り続けます。
だからーー
その根源となる狂座を、こちらから潰すーー
それがユキがアミにも言っていない、大きな決心であった。
此処に居ても、近い内に狂座が攻めてくるのは自明の理。
護りながらの闘いは難しいと云わざるを得ない。
それなら、わざわざ襲われるのを待つ事も無い。
だからこちらから出向く事。
彼は一人で全てを終わらせる事を決めていた。
それが必然的に、彼女を護る事にも繋がるのだから。
ーーユキは既に集落を離れ、森の中へと歩を進めていた。
************
ーーアミは先程の足音が気になり、屋敷を後にする。
それに朝食も早くユキに作ってあげたいし、もしかしたらさっきの足音はユキと言う事もある。
さっきの話を聞いて飛び出したのかもしれない。
途中でアミはリュウカとミイの親子に出会う。
「あ! アミお姉ちゃん。さっきね、ユキお兄ちゃんが森の方に走っていったの。ユキお兄ちゃん泣いてるみたいだったけど、何かあったの?」
ミイのその言葉を聞いて、アミは疑問が確信に変わる。
“やっぱりあれはユキだ”
アミはミイに『大丈夫だからね』と声を掛け、森の方に向かって走り出した。
一人だと下手をすれば迷いかねない程の大森林。
「早くユキを見つけないと……」
“まさか出ていくとか? いつまでもここにいていいのに!”
右手で顔を覆っていたのは、目尻から涙が抑えられなかったから。
途中、リュウカとミイの親子とすれ違う。
リュウカはユキのもう一つの特異能ーー“再生再光”により、日常生活に支障が無い位に回復していた。
「あっ! ユキお兄ちゃん」
「おお! 御礼をしようと捜していた処だ」
笑顔で迎える二人。しかし構わず、ユキは二人の間を擦り抜ける様に走り去る。
「……ユキお兄ちゃん、泣いてた?」
ミイは右手で顔を覆っていた彼の手の間から、確かに涙がこぼれ落ちていたのが見えた。
ユキの姿は森の方角へ向かっている事。
二人は不思議そうに、走り去ったユキの後ろ姿を眺めていた。
***********
ーーアミは何時も優しく暖かくて……。
私には居心地が良過ぎるから。
それが嬉しくて……。
私も貴女を愛してます。
でも私が傍に居ると、何時か迷惑が掛かるから……。
でもアミを護ると誓ったこの考えを、違えるつもりはない。
影で貴女を護り続けます。
だからーー
その根源となる狂座を、こちらから潰すーー
それがユキがアミにも言っていない、大きな決心であった。
此処に居ても、近い内に狂座が攻めてくるのは自明の理。
護りながらの闘いは難しいと云わざるを得ない。
それなら、わざわざ襲われるのを待つ事も無い。
だからこちらから出向く事。
彼は一人で全てを終わらせる事を決めていた。
それが必然的に、彼女を護る事にも繋がるのだから。
ーーユキは既に集落を離れ、森の中へと歩を進めていた。
************
ーーアミは先程の足音が気になり、屋敷を後にする。
それに朝食も早くユキに作ってあげたいし、もしかしたらさっきの足音はユキと言う事もある。
さっきの話を聞いて飛び出したのかもしれない。
途中でアミはリュウカとミイの親子に出会う。
「あ! アミお姉ちゃん。さっきね、ユキお兄ちゃんが森の方に走っていったの。ユキお兄ちゃん泣いてるみたいだったけど、何かあったの?」
ミイのその言葉を聞いて、アミは疑問が確信に変わる。
“やっぱりあれはユキだ”
アミはミイに『大丈夫だからね』と声を掛け、森の方に向かって走り出した。
一人だと下手をすれば迷いかねない程の大森林。
「早くユキを見つけないと……」
“まさか出ていくとか? いつまでもここにいていいのに!”
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