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第7章 破滅への序曲
七話 出撃
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―――狂座本部―――
※エルドアーク宮殿内戦略広間
「第四十七軍団長を失ったのは大きな痛手ですが、彼は見事に任務を遂行してくれました」
ハルはスクが送信した、これまで全ての報告資料を読みあげる。
「結構時間かかったけど、やっとボク達の出番だね☆」
ユーリが待ってましたとばかりに、楽しそうに声をあげるがーー
「待てユーリ。ここは俺が行く」
アザミがユーリの頭に手を乗せて遮る。
まるでお前は此処に居ろ、と言わんばかりに。
「えぇ~何でだよぉ? ボクは行きたいよ☆ 皆で一緒に殺ればいいじゃない★」
勿論それが最善の策だろう。全戦力を以ってすれば、たやすい事は自明の理である。
「資料によると注意すべきは特異点、一人のみ。それを直属がぞろぞろ出向いてどうする?」
アザミの考えに、やはり納得のいかないユーリは反論する。
「そりゃそうだけど。でもアザミ一人で行くのは危険だからボクも一緒に行くよ★」
ころころと表情を変え、最後には笑顔になるユーリ。
そんなユーリを妹と接するかの様に、アザミはその栗色の髪をくしゃくしゃと優しく撫でながらーー
「ユーリ、俺達直属の本来の役割は冥王様の守護と、このエルドアーク宮殿を守護する事。俺達がぞろぞろ行ったら、此処が手薄になるだろ?」
それは分かってるけどみたいに、うぅ~と不満そうにユーリは俯いた。
「しかしアザミ、貴方一人で行くのはあまりに危険なのでは?」
眼鏡の額縁を指で整えながら言うのは、ハルの意見だ。
「敵は特異点一人ではありません。レベルこそ低いですが、夜摩一族の特殊さを考えると流石に一人は……」
とはいえ、アザミの力は誰もが認め、讃える処だ。
三年前の四死刀との闘いで、雷神と謳われし四死刀が一人ーー“紫電閃”のライカを仕留めたのはアザミだったからだ。
「まあ何も一人で行くと言っている訳じゃない。俺の下に居る軍団も精鋭を選んで連れていくし、それに」
長い黒髪をかきあげ、切れの長い瞳で皆を見据えながら、アザミは不敵な笑みを浮かべて。
「俺に万が一が無い事は知っているだろ?」
そうだった。仮に苦戦はあっても敗北は絶対に無い。
それは皆が抱く、アザミに対する絶対的な信頼の証であった。
「そうだよね、アザミなら大丈夫……。じゃあボク達が此処はしっかり留守番しとくから、アザミはすぐに終わらせて、なるべく早く帰ってきてよね☆」
「くれぐれも油断しないように。まあ確かに貴方に万が一は有りませんでしたね」
アザミはユーリの髪を更にくしゃくしゃと撫でながら、笑みを浮かべながら二人を見据える。
「後は任せる」
踵を返し、長い黒髪を靡かせながら広間を後にするアザミを二人は見送る。
そんなアザミの後ろ姿を、不安そうな瞳で見詰めていたのはルヅキだった。
※エルドアーク宮殿内戦略広間
「第四十七軍団長を失ったのは大きな痛手ですが、彼は見事に任務を遂行してくれました」
ハルはスクが送信した、これまで全ての報告資料を読みあげる。
「結構時間かかったけど、やっとボク達の出番だね☆」
ユーリが待ってましたとばかりに、楽しそうに声をあげるがーー
「待てユーリ。ここは俺が行く」
アザミがユーリの頭に手を乗せて遮る。
まるでお前は此処に居ろ、と言わんばかりに。
「えぇ~何でだよぉ? ボクは行きたいよ☆ 皆で一緒に殺ればいいじゃない★」
勿論それが最善の策だろう。全戦力を以ってすれば、たやすい事は自明の理である。
「資料によると注意すべきは特異点、一人のみ。それを直属がぞろぞろ出向いてどうする?」
アザミの考えに、やはり納得のいかないユーリは反論する。
「そりゃそうだけど。でもアザミ一人で行くのは危険だからボクも一緒に行くよ★」
ころころと表情を変え、最後には笑顔になるユーリ。
そんなユーリを妹と接するかの様に、アザミはその栗色の髪をくしゃくしゃと優しく撫でながらーー
「ユーリ、俺達直属の本来の役割は冥王様の守護と、このエルドアーク宮殿を守護する事。俺達がぞろぞろ行ったら、此処が手薄になるだろ?」
それは分かってるけどみたいに、うぅ~と不満そうにユーリは俯いた。
「しかしアザミ、貴方一人で行くのはあまりに危険なのでは?」
眼鏡の額縁を指で整えながら言うのは、ハルの意見だ。
「敵は特異点一人ではありません。レベルこそ低いですが、夜摩一族の特殊さを考えると流石に一人は……」
とはいえ、アザミの力は誰もが認め、讃える処だ。
三年前の四死刀との闘いで、雷神と謳われし四死刀が一人ーー“紫電閃”のライカを仕留めたのはアザミだったからだ。
「まあ何も一人で行くと言っている訳じゃない。俺の下に居る軍団も精鋭を選んで連れていくし、それに」
長い黒髪をかきあげ、切れの長い瞳で皆を見据えながら、アザミは不敵な笑みを浮かべて。
「俺に万が一が無い事は知っているだろ?」
そうだった。仮に苦戦はあっても敗北は絶対に無い。
それは皆が抱く、アザミに対する絶対的な信頼の証であった。
「そうだよね、アザミなら大丈夫……。じゃあボク達が此処はしっかり留守番しとくから、アザミはすぐに終わらせて、なるべく早く帰ってきてよね☆」
「くれぐれも油断しないように。まあ確かに貴方に万が一は有りませんでしたね」
アザミはユーリの髪を更にくしゃくしゃと撫でながら、笑みを浮かべながら二人を見据える。
「後は任せる」
踵を返し、長い黒髪を靡かせながら広間を後にするアザミを二人は見送る。
そんなアザミの後ろ姿を、不安そうな瞳で見詰めていたのはルヅキだった。
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