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第7章 破滅への序曲
六話 違える事は無い決意
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ーー此処の情報が全て狂座に送られているなら、遅かれ早かれ攻めてくるのは間違いない……。
直属部隊……恐らく幹部級が来る筈。
それならそれで丁度良いです。これで全てのケリを付ける。
アミやその他には黙っていた方が宜しいですねーー
そうユキが考えあぐねていると、奥の方から声が聞こえてきた。
「ユキ~!」
アミが息を切らせながら、ユキの元に走り寄ってきたのだ。
「目が覚めたらユキがいないし、心配していたのよ」
「すみません……」
アミはこの場で何をしていたのか、敢えて聞かなかった。
狂座の者と戦闘をしていた事は明らかだったから。
ただ無事だった事にアミは心底安堵したが、彼の頬に切り傷が有るのを発見する。
「ユキ? 頬に傷が!」
ユキは指で頬をなぞってみると、指にうっすらとした血糊が付いていた。
「この位、大丈夫ですよ」
心配そうに見つめるアミに、ユキは笑顔で返した。
幾多もの死線を潜り抜けてきた彼にとって、傷など日常茶飯事であったから。
だからこそ、アミの次の行動は予想外であった。
不意にアミはユキを抱き寄せる。
「アミ?」
アミはユキの切り傷に唇を這わせ、血を吸い出していたのだから。
「あ、あの……本当に大丈夫ですから」
「駄目よ、消毒しないと黴菌が入っちゃうでしょ」
「それは分かりますが、恥ずかしいですよ……」
ユキはその行為を大袈裟だと思いながらも、心地良いので、されるがままとなっていた。
でもその心配が嬉しく思う。
「アミ……」
“お慕い致しております”
************
“ーーて、私何やってるんだろ!? ユキが呆れちゃってるじゃない”
アミは急に自分がした事が恥ずかしくなり、俯いて顔が紅くなる。
「アミ、ありがとう」
俯いてるアミにユキは笑顔で返す。
その笑顔があまりに美しくも愛おしくて、アミは再びユキを抱きしめた。
「ごめんね。でもあまり無理はしないで」
“これはきっと気休めだ”
“ユキはまた闘いへと赴いていく……”
“そんなユキに私は何もしてあげれないーー”
狂座の戦力を前に、アミ達は無力に等しかった。
だからこそ彼の力に縋る他、道は無い。
“私にもっと力があれば、ユキが傷付く事も無いのに……”
そんなアミの心を見透かしたかの様にーー
「大丈夫ですよ」
“私は貴女を護ると誓ったーー”
「では、家に戻りましょうか」
「うん」
二人は手を繋いで帰路へ。
“その言葉を違えるつもりはありませんから”
直属部隊……恐らく幹部級が来る筈。
それならそれで丁度良いです。これで全てのケリを付ける。
アミやその他には黙っていた方が宜しいですねーー
そうユキが考えあぐねていると、奥の方から声が聞こえてきた。
「ユキ~!」
アミが息を切らせながら、ユキの元に走り寄ってきたのだ。
「目が覚めたらユキがいないし、心配していたのよ」
「すみません……」
アミはこの場で何をしていたのか、敢えて聞かなかった。
狂座の者と戦闘をしていた事は明らかだったから。
ただ無事だった事にアミは心底安堵したが、彼の頬に切り傷が有るのを発見する。
「ユキ? 頬に傷が!」
ユキは指で頬をなぞってみると、指にうっすらとした血糊が付いていた。
「この位、大丈夫ですよ」
心配そうに見つめるアミに、ユキは笑顔で返した。
幾多もの死線を潜り抜けてきた彼にとって、傷など日常茶飯事であったから。
だからこそ、アミの次の行動は予想外であった。
不意にアミはユキを抱き寄せる。
「アミ?」
アミはユキの切り傷に唇を這わせ、血を吸い出していたのだから。
「あ、あの……本当に大丈夫ですから」
「駄目よ、消毒しないと黴菌が入っちゃうでしょ」
「それは分かりますが、恥ずかしいですよ……」
ユキはその行為を大袈裟だと思いながらも、心地良いので、されるがままとなっていた。
でもその心配が嬉しく思う。
「アミ……」
“お慕い致しております”
************
“ーーて、私何やってるんだろ!? ユキが呆れちゃってるじゃない”
アミは急に自分がした事が恥ずかしくなり、俯いて顔が紅くなる。
「アミ、ありがとう」
俯いてるアミにユキは笑顔で返す。
その笑顔があまりに美しくも愛おしくて、アミは再びユキを抱きしめた。
「ごめんね。でもあまり無理はしないで」
“これはきっと気休めだ”
“ユキはまた闘いへと赴いていく……”
“そんなユキに私は何もしてあげれないーー”
狂座の戦力を前に、アミ達は無力に等しかった。
だからこそ彼の力に縋る他、道は無い。
“私にもっと力があれば、ユキが傷付く事も無いのに……”
そんなアミの心を見透かしたかの様にーー
「大丈夫ですよ」
“私は貴女を護ると誓ったーー”
「では、家に戻りましょうか」
「うん」
二人は手を繋いで帰路へ。
“その言葉を違えるつもりはありませんから”
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