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第7章 破滅への序曲
五話 存在意義
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「中々良い炎でしたよ」
ユキは無氷でスクの炎を凍結、相殺していたのだった。
「ですが、四死刀ーー“紅焦熱”のカレンの炎には遠く及びません」
冷酷に実力差を告げるユキに、スクは呆然と立ち竦むしかなかった。
「これが特異点の力……」
“ふっ、分かっていた。勝てる筈も無い事など……”
ーーだがせめて一太刀!
スクは刀を手に再びユキに斬り掛かった。
「底も知れた事ですし……送って差し上げます」
ユキは向かって来るスクに対し、居合いの構えを取る。
その鯉口から溢れるは光芒の煌めきーー
“神露ーー蒼天星霜”
――それは超神速の鞘引きから生じる鞘鳴りが音の壁を破り、ソニック・ブーム――所謂、超音速の衝撃波を生み出す。
※星霜剣奥義――神露・蒼天星霜。この技の正体は、不可視なる音の刃。ゆえに避ける事も防ぐ事も不可能。
そして何より、星霜剣の極意は特異能との複合にある。
音の刃に付加される極低温の冷気は、一瞬蒼白の光の奔流となって全てを呑み込み、轢き裂く凍牙となる。
「ぐあぁぁぁぁ!!!」
無数の切り口から鮮血を吹き上げながらスクは倒れ、その血はすぐに凍りついていく。
それでも諦めまいと振りかざしたスクの執念の一撃が、ユキの頬に小さな切り口を残していた。
切り口から一筋の血がユキの頬を伝う。
それを気にする事無く、無表情のまま刀を鞘に納め、倒れたスクを見下ろしていた。
「まっーーまだだ!」
スクは起き上がろうと試みるが、全身は既に凍結し、勝負有りである事は明らかであった。
「何をしても無駄ですよ」
ユキが冷酷に、死に逝く者への言葉を送る。
「全ての細胞が凍結崩壊し、後は全て無に還るだけです。全神経凍結により、せめて痛み無く逝くといいでしょう」
それはせめてもの情けか。かつての彼には考えられなかったもの。
“今更あがいても仕方ないか。少しでも力を削いでおきたかったが……”
「ふ……認めよう。私の負けだ。特異点、私の敵う相手では無かった……」
“最期に強敵との闘いで死ぬなら本望か”
「だが、この地やお前達における実態調査は全て本部へ報告済み。直属部隊の方々も動くだろう……ふふ」
スクは可笑しくて仕方なかった。
結果破れたとはいえ、自分の調査報告により、この地が終焉に向かう事を。
個人的な闘いには破れたが、狂座軍団長としては勝利した事の意味であった。
「お前がいかに強かろうが、所詮戦は数の論理。お前一人の力だけでは、我等の戦力差を埋める事は決して出来ん!」
スクの身体が凍結崩壊し、塵になっていく。
「先に地獄で待っている」
それが塵となって消え逝く、スクの最後の言葉だった。
「……先に逝っててください」
ユキは塵になって、夜空に四散していくスクを見据え思う。
「地獄……か」
“私は自分がしてきた事を、無かった事にしようとは思わない”
“この報いは受けます……必ず”
ーーでもその時が来るまで、命の限りアミを守り抜く。
世の中がどうなってもいい。
だがアミだけは必ずーー
「それが私の存在意義なのだから」
ユキは無氷でスクの炎を凍結、相殺していたのだった。
「ですが、四死刀ーー“紅焦熱”のカレンの炎には遠く及びません」
冷酷に実力差を告げるユキに、スクは呆然と立ち竦むしかなかった。
「これが特異点の力……」
“ふっ、分かっていた。勝てる筈も無い事など……”
ーーだがせめて一太刀!
スクは刀を手に再びユキに斬り掛かった。
「底も知れた事ですし……送って差し上げます」
ユキは向かって来るスクに対し、居合いの構えを取る。
その鯉口から溢れるは光芒の煌めきーー
“神露ーー蒼天星霜”
――それは超神速の鞘引きから生じる鞘鳴りが音の壁を破り、ソニック・ブーム――所謂、超音速の衝撃波を生み出す。
※星霜剣奥義――神露・蒼天星霜。この技の正体は、不可視なる音の刃。ゆえに避ける事も防ぐ事も不可能。
そして何より、星霜剣の極意は特異能との複合にある。
音の刃に付加される極低温の冷気は、一瞬蒼白の光の奔流となって全てを呑み込み、轢き裂く凍牙となる。
「ぐあぁぁぁぁ!!!」
無数の切り口から鮮血を吹き上げながらスクは倒れ、その血はすぐに凍りついていく。
それでも諦めまいと振りかざしたスクの執念の一撃が、ユキの頬に小さな切り口を残していた。
切り口から一筋の血がユキの頬を伝う。
それを気にする事無く、無表情のまま刀を鞘に納め、倒れたスクを見下ろしていた。
「まっーーまだだ!」
スクは起き上がろうと試みるが、全身は既に凍結し、勝負有りである事は明らかであった。
「何をしても無駄ですよ」
ユキが冷酷に、死に逝く者への言葉を送る。
「全ての細胞が凍結崩壊し、後は全て無に還るだけです。全神経凍結により、せめて痛み無く逝くといいでしょう」
それはせめてもの情けか。かつての彼には考えられなかったもの。
“今更あがいても仕方ないか。少しでも力を削いでおきたかったが……”
「ふ……認めよう。私の負けだ。特異点、私の敵う相手では無かった……」
“最期に強敵との闘いで死ぬなら本望か”
「だが、この地やお前達における実態調査は全て本部へ報告済み。直属部隊の方々も動くだろう……ふふ」
スクは可笑しくて仕方なかった。
結果破れたとはいえ、自分の調査報告により、この地が終焉に向かう事を。
個人的な闘いには破れたが、狂座軍団長としては勝利した事の意味であった。
「お前がいかに強かろうが、所詮戦は数の論理。お前一人の力だけでは、我等の戦力差を埋める事は決して出来ん!」
スクの身体が凍結崩壊し、塵になっていく。
「先に地獄で待っている」
それが塵となって消え逝く、スクの最後の言葉だった。
「……先に逝っててください」
ユキは塵になって、夜空に四散していくスクを見据え思う。
「地獄……か」
“私は自分がしてきた事を、無かった事にしようとは思わない”
“この報いは受けます……必ず”
ーーでもその時が来るまで、命の限りアミを守り抜く。
世の中がどうなってもいい。
だがアミだけは必ずーー
「それが私の存在意義なのだから」
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