雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

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第7章 破滅への序曲

四話 絶望的な差

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ーー勝つ必要は無い。


腕一本。いや、指一本でも構わん。


僅かでも奴の力を削ぎ落とし、次へ繋げるのが私の最後の役目だ!


スクは刀の柄に手を添えたまま、動く気配の無いユキを見据える。


“私の力を今使っても避けられるだけ……。なんとしても奴の懐に入らねば”


スクは一瞬で間合いを詰めようと前進する。


ユキとの距離は三間(約6.5M)


二人の距離が一間まで詰まっていた刹那ーー


“光!?”


危険を感じたスクは防御の構えのまま、瞬時にその場から飛び退く。


刹那ーースクの刀に幾重もの金属音が鳴り響く。


“……今の光は?”


“あのまま間合いを詰めていたら、殺られていた?”


瞬時に防御の体制のまま身を退いたにも関わらず、スクの右肩・左腕・左膝には三つの斬られた跡が残っていた。


「まさかあの光は……」


“ただ奴の抜きと剣速が速過ぎて、光の剣閃に見えただけか!”


スクはその事実を認識した時、心の底から恐怖心が生まれる。


“レベル、いや次元が違う……”


ーー否、恐れるな!


元より勝てる相手じゃない。命を捨ててでも間合いに入るーーそれだけを考えろ!


スクは再び刀を構え、間合い詰めを試みる。


再びユキから抜きが放たれた。


やはりスクの目には、何かが光った様にしか見えない。


だがスクは構わず前進する。


“なんて斬撃の鋭さだ! この私が防御に徹して尚、防ぎきれんとは……”


斬り結ぶ多重の金属音と共に、スクの身体には無数の切り傷が増えていく。


“狙うは奴が攻撃しきった瞬間!”


多数の傷を受けながらも、スクは何とかユキの間合いの内まで侵入する。


“ここだ!”


だがこれはユキにとって、あくまでも様子見。寧ろ誘い。


スクの戦略、企みを知る為に、敢えて“斬”から“突“へと切り替えた。


だが、スクは構わず突きに向かって前進。


ユキは身体を貫く感触をその手に感じながら、ある違和感を感じた。


“今のは……わざと受けた?”


スクの腹部はユキの刺突によって、深く貫かれた状態になっていた。


「ようやく捕まえたぞ……」


“この距離なら避けようもあるまい!”


スクは右手に力を集中する。勿論これは異能の力に依るもの。


右手が紅く輝き、それを一気に解放ーー


「灼牙・炎帝爆」


瞬間ーースクの右手から放たれた、巨大な爆炎がユキを包み込む。


スクは即座に身を退き後退する。


その腹部からは、刺し傷によって流れ落ちる血を手で抑えながら、燃え続ける火柱を眺める。


「この至近距離からの渾身の爆炎なら、誰が相手だろうとただでは済まん」


炎は消える事無く燃え続けていた。


“もしこれで無傷なら化け物……”


そうスクが思考していた時、その火柱は一瞬で凍っていき、その氷の結晶が崩れ、粉雪の様に辺りに散っていく。


「なっ!?」


“無傷……だと? 化け物め!”


ユキは氷の結晶が舞い散る中、何事も無かったかの様に立ち、当然の様にスクを見据えていた。


スクは思わずその姿に魅入られる。


恐ろしいまでに美しき死神の姿を、確かにその眼で見ていた。
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