雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

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第6章 溶ける氷

十話 生まれてきた意味

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「やめてぇ~!!」


アミの叫び声は届かない。


放映時間が定められた映画館の様に、止まる事無く放映は続く。


「皆どうしてそんな顔していられるの!?」


“父親でしょ?”


“母親でしょ?”


“ユキの顔を見て何も思わないの?”


「ユキはーー」


“ユキは泣いているじゃない!”


アミはあの時感じた、ユキの無感情な瞳の奥に感じた違和感。


大きな闇の様な、形の無いモノの意味を、ようやく理解出来た。


戦国の世の常。


口減らし。


食いぶちを減らす為、我が子を殺す。


形は違えど、今眼前で行われれているのは、それと同義だった。


理不尽な世の仕組み。


「じゃあどうして……」


“何の為にユキは生まれてきたの!?”


“殺される為だけに生まれてきたの?”


“存在してはいけない存在だから?”


本来なら次期当主として、何不自由無く育てられたであろうユキ。


ただ人と違うというだけ。


特異点という、ただそれだけの理由で。


誰でも生まれてくる場所は選べない。


裕福な両親を選んで生まれてくる事は出来ない。


生まれてきた時は皆平等と言うが、決してそうでは無い。


身分の違い。
身体の違い。


人は生まれながらに不公平なのだ。


それでも、誰にでも幸せになる権利は有る。


存在してはならない命は、有ってはならない。


だからこそアミは、ユキに人としての幸せを感じて欲しかった。
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