雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

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第5章 仮初めの日常

十三話 軍団長

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―――狂座本部―――


「第十二遊撃師団長ガイラの生体反応消失」


白いコートに身を包んだ学者風のハルが、重苦しい雰囲気の中、結果報告を述べた。


「戦闘を避けろとなってるのに、勝手に先走しって殺られちゃうなんて、ホント師団長の役に立たない事だね☆」


美しい栗色の肩まである髪を掻き上げ、可愛い女の子にしか見えないユーリが呆れながら、それでも冗談混じりに愉しそうに口を開く。


「私の失策でした。きちんと特異点の存在を公にすべきでした」


「やはり特異点で間違いないのか?」


長い腰まである黒髪に、黒く長い装束を纏うアザミがハルに問い掛ける。


「ガイラのサーモが裏コード移行を記録しています。ほぼ間違いなく特異点があの地にいます。しかも我々の敵としてね」


特異点が敵となるなら、狂座にとって最大の脅威になる事は間違いなかった。


「うちは戦闘狂が多くて嫌になっちゃうね☆ 死ぬ前に情報送信とか色々あるだろうにね~★」


「ユーリ、お前が言うなよ……」


“いやアナタもですよアザミ”


ハルは心の中で突っ込みを入れるだけで、口には出さない事にする。


「軍団を投入する予定だったが、返り討ちにあうのが関の山か……」


黒い長髪、巫女の衣装を纏い、恐ろしいまでに美しい顔を歪ませたルヅキが呟く。


ーー特異点……。忌ま忌ましい存在め。再び我等の前に立ち塞がるか!


ルヅキにとって四死刀との闘いは、忘れようにも忘れられない忌ま忌ましき過去。


自分の不甲斐無さで数多の犠牲者と、冥王封印という事態が起きた事を今でも悔いている。


「じゃあボクがいくよ☆ 楽しみだね~★ 特異点と闘えるなんて☆」


ユーリが冗談混じりの笑顔でそう述べる。


それは本当に楽しそうに。


「待てユーリ、我々が出るのは早い。それに情報が少な過ぎる」


「そんな事言ったってルヅキ、ボク達の誰かが行けば簡単に済む事でしょ☆」


ユーリの考えは間違ってはいない。だが万が一という事態は避けなければならない。


勿論、特異点は倒す。だが、まずは正確な情報が必要だ。


「私に考えがあります」


ハルがその冷酷な瞳を隠す様に、眼鏡の額縁を指で整えながら言う。


「第四十七軍団を使います」


「ん? 軍団投入は返り討ちになるんじゃなかったのか?」


アザミは最もな疑問を口にする。臨界突破の特異点が相手となると、軍団長では厳しいと言わざるを得ない。


軍団長の平均レベルは『90%』台。


「確かに軍団長では、特異点の相手にはならないでしょう」


ならば投入する意味は?
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