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第5章 仮初めの日常

十一話 奇跡の光

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「これはアナタの腕でしょう?」


ユキはリュウカの右肩に、その手に持つ腕を合わせ手を翳す。


“ーーリヴァイヴァル・リジェクト”


何やら聞き慣れぬ単語を言霊のように呟いたかと思うと、突如彼の手の平から金色の光が溢れ出す。


“ーーこれは……あの時の光!?”


アミはあの時、ユキが自分の傷を手の平で触れ、そして傷が無くなっていた事を思い出した。


そして信じられない光景が映し出された。


その光により、リュウカの右腕は肩から綺麗に繋がっていく。


まさに奇跡とも言える光だった。


リュウカの腕は何事も無かった様に、元に戻っていたのだ。


その光景を一部始終見ていた長老は驚愕するしかない。


“ーーこ、これは……キリトの光!? あの子は一体?”


彼が披露した先程の光は、四死刀キリトの力そのものだったからだ。


「血を流し過ぎている為、当分は絶対安静。腕の方は細胞だけではなく神経も繋いでいるので、しばらくすれば違和感無く動くでしょう」


自身の腕を呆然と眺めているリュウカを余所に、ユキは当然の事の様に言い放つが、これは正に奇跡とも云えた。


周りの者は、その奇跡の力を目の当たりにし安堵、または歓声も上がる。


リュウカは安堵からか泣きじゃくる娘のミイを抱きし締め、生きていける事の喜びを噛み締めていた。


「ありがとう、この恩は決して忘れない」


リュウカは涙ながらにユキに伝える。


「ありがとうユキ、私からも御礼を言わせて。本当にありがとう」


アミはユキの手を両手で握り締め、涙混じりの笑顔で感謝の気持ちを伝えた。


「勘違いしないでください。別に助けた訳ではありません。死ぬ必要が無いと判断した、それだけの事です」


しかしユキは素っ気なく顔を反らし、そう呟く。


それでもアミは感謝の気持ちでいっぱいだった。


「父上を助けてくれてありがとう」


ミイが涙混じりの笑顔をユキに向ける。


“ーーくだらないですよ……。何故に笑顔を?”


「ユキ分かる? 皆がね、ユキに感謝してるの」


“感謝?”


「分かりませんよ……」


ユキは抱き合うリュウカとミイに目を向ける。


「滑稽ですよ、家族など……」


助けたのは、ほんの気紛れ。ただ彼にとって、その光景は何処か眩しく見えた。


「ただ……滑稽な位、美しいものがあってもいいんじゃないかと、そう思っただけです」


アミは何処か遠い目をしているユキを見て思う。


彼に唯一欠け、足りないもの。
そして芽生え始めているもの。


それが今、彼が抱いている“情”というもの。


今はまだ、理解していないかも知れない。


“ーーでも、何時かきっと……”


アミはユキの頭に手を乗せる。


さらさらとした白銀髪の感触が心地良い。


ユキは不思議そうにアミを見る。


それは決して悪い気分では無かった。
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