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第3章 協力?
二話 死神の正体
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全員が再度大広間に戻った。
長老が必死に状況の説明をする。
冥王復活の鍵となる“光界玉”がこの地で護られている事を。
そしてその光界玉を狙って“狂座”がこの地を狙っている事を。それはつい先程の事であるが。
その狂座に対抗する為、少年の力を貸して欲しい事を。
余りに虫の良い話ではあるが、狂座に秘密事項を察知されている現状、もはや手段を選ばず彼にすがる他無い。
「……言いたい事は分かりました。アナタ達が夜摩一族、古くから退魔を生業とした一族で在る事もね」
それまで黙して聞いていた少年は、正座したまま静かに口を開く。
その瞳から毛髪に至るまでの銀色は、既に黒一色へと戻っていた。
それは危害を加えるつもりは無い、という意思の顕れか。だが、まだまだ予断は許さない。
「アナタ方は“キリト”と言う人物をご存知でしょう?」
緊迫した空気の充満が続く中、唐突に少年の発したその名。
「何故その名を!?」
誰もがその名を知っていた。否、知らぬ筈が無い。
何故ならかつて夜摩一族に於いて、歴代でも最高の力を持ったとされた人物。
だが余りにも異質で、強大な力を生まれながらに持っていた為、一族からは異端視され、遂には一族から離れていく事になる。
世の中に於いては特異点、四死刀が一人ーー“魂縛のキリト”として、あまりにも有名な存在であった。
“キリト”
アミにもその名に聞き覚えがあった。
彼女がまだ幼かった頃、此処から去っていった人の事を。
一族最高の力の持ち主と謂われながら、特異点で在るがゆえ夜摩一族を捨て、四死刀の一人と呼ばれるまでになった事まで。
アミはその頃はまだ幼かった為、キリトがどんな人物かまでは覚えていなかった。
此処ではキリトの名は禁句となっている為、誰からもキリトの事を詳しく教えて貰った事は無かったのだ。
“――でも、どうしてこの子が?”
アミの疑問。だがそれに通ずるはユキヤという名の特異点、そして四死刀の一人。
「キリトは三年前の狂座との闘いで冥王の魂を封じ、極秘裏にその封印の証、光界玉をこの地に隠したのじゃった……」
長老のその言葉。それはアミにとって初耳であった。
アミはてっきり一族の誰かが、封印したとばかり思っていたのだから。
「キリトはほとんど満身創痍じゃった……。ワシに光界玉を頼むと傷の手当てもお構いなしに、すぐにこの地から出ていった……」
長老が昔を思い出すかの様に、その時の状況を語り続ける。
そんな長老を遮る様に、正座したままの少年は口を開く。
「私はそのキリトに頼まれて、此処を捜していたんですよ」
彼はこの地に足を踏み入れた理由を、静かに語り始めるのだった。
「キリトに頼まれた……じゃと? お主は一体……」
それに続くは“何者?”なのか。
考えればこの少年の正体は、まだ誰にも分からない。
アミ以外には――
“やっぱり……”
特異点で在り、四死刀のキリトとも知り合い。
そして彼女は知っている、ユキヤと少年が名乗っていた事を。
「キリトの事をお話する前に、まず私の事を説明せねばなりませんね――」
どう考えても、導き出された答は一つしかなかった。
「私の名は……ユキヤ」
やはり、というかアミ以外は仰天だ。
只者で無い事は分かってはいても、あの伝説とも謳われた四死刀の一人が、まさかここまでの幼子だった事に。
「あれ? どうしたんですか皆さん?」
少年が正体を明かした瞬間、まるで塩が引く様に後退り、少年から距離を取る者達。
それは明らかな怯懦の顕れ。
「何か勘違いなさってるみたいですが、誰も“四死刀”のユキヤとは言ってませんよ」
別人との言い回しに、更に仰天。じゃあ本当に何者か?
これにはアミも意外だった。
しかし少年の左横に置かれた刀が、それを示していたのは――
「アナタ方の知ったユキヤとは非なる者……。私は彼からその刀と名を受け継いだ者。私は四死刀ーー“星霜剣ユキヤ”の後継者です」
全員が再度大広間に戻った。
長老が必死に状況の説明をする。
冥王復活の鍵となる“光界玉”がこの地で護られている事を。
そしてその光界玉を狙って“狂座”がこの地を狙っている事を。それはつい先程の事であるが。
その狂座に対抗する為、少年の力を貸して欲しい事を。
余りに虫の良い話ではあるが、狂座に秘密事項を察知されている現状、もはや手段を選ばず彼にすがる他無い。
「……言いたい事は分かりました。アナタ達が夜摩一族、古くから退魔を生業とした一族で在る事もね」
それまで黙して聞いていた少年は、正座したまま静かに口を開く。
その瞳から毛髪に至るまでの銀色は、既に黒一色へと戻っていた。
それは危害を加えるつもりは無い、という意思の顕れか。だが、まだまだ予断は許さない。
「アナタ方は“キリト”と言う人物をご存知でしょう?」
緊迫した空気の充満が続く中、唐突に少年の発したその名。
「何故その名を!?」
誰もがその名を知っていた。否、知らぬ筈が無い。
何故ならかつて夜摩一族に於いて、歴代でも最高の力を持ったとされた人物。
だが余りにも異質で、強大な力を生まれながらに持っていた為、一族からは異端視され、遂には一族から離れていく事になる。
世の中に於いては特異点、四死刀が一人ーー“魂縛のキリト”として、あまりにも有名な存在であった。
“キリト”
アミにもその名に聞き覚えがあった。
彼女がまだ幼かった頃、此処から去っていった人の事を。
一族最高の力の持ち主と謂われながら、特異点で在るがゆえ夜摩一族を捨て、四死刀の一人と呼ばれるまでになった事まで。
アミはその頃はまだ幼かった為、キリトがどんな人物かまでは覚えていなかった。
此処ではキリトの名は禁句となっている為、誰からもキリトの事を詳しく教えて貰った事は無かったのだ。
“――でも、どうしてこの子が?”
アミの疑問。だがそれに通ずるはユキヤという名の特異点、そして四死刀の一人。
「キリトは三年前の狂座との闘いで冥王の魂を封じ、極秘裏にその封印の証、光界玉をこの地に隠したのじゃった……」
長老のその言葉。それはアミにとって初耳であった。
アミはてっきり一族の誰かが、封印したとばかり思っていたのだから。
「キリトはほとんど満身創痍じゃった……。ワシに光界玉を頼むと傷の手当てもお構いなしに、すぐにこの地から出ていった……」
長老が昔を思い出すかの様に、その時の状況を語り続ける。
そんな長老を遮る様に、正座したままの少年は口を開く。
「私はそのキリトに頼まれて、此処を捜していたんですよ」
彼はこの地に足を踏み入れた理由を、静かに語り始めるのだった。
「キリトに頼まれた……じゃと? お主は一体……」
それに続くは“何者?”なのか。
考えればこの少年の正体は、まだ誰にも分からない。
アミ以外には――
“やっぱり……”
特異点で在り、四死刀のキリトとも知り合い。
そして彼女は知っている、ユキヤと少年が名乗っていた事を。
「キリトの事をお話する前に、まず私の事を説明せねばなりませんね――」
どう考えても、導き出された答は一つしかなかった。
「私の名は……ユキヤ」
やはり、というかアミ以外は仰天だ。
只者で無い事は分かってはいても、あの伝説とも謳われた四死刀の一人が、まさかここまでの幼子だった事に。
「あれ? どうしたんですか皆さん?」
少年が正体を明かした瞬間、まるで塩が引く様に後退り、少年から距離を取る者達。
それは明らかな怯懦の顕れ。
「何か勘違いなさってるみたいですが、誰も“四死刀”のユキヤとは言ってませんよ」
別人との言い回しに、更に仰天。じゃあ本当に何者か?
これにはアミも意外だった。
しかし少年の左横に置かれた刀が、それを示していたのは――
「アナタ方の知ったユキヤとは非なる者……。私は彼からその刀と名を受け継いだ者。私は四死刀ーー“星霜剣ユキヤ”の後継者です」
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