雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~序

ユキナ

文字の大きさ
上 下
21 / 99
第3章 協力?

二話 死神の正体

しおりを挟む
************


全員が再度大広間に戻った。


長老が必死に状況の説明をする。


冥王復活の鍵となる“光界玉”がこの地で護られている事を。


そしてその光界玉を狙って“狂座”がこの地を狙っている事を。それはつい先程の事であるが。


その狂座に対抗する為、少年の力を貸して欲しい事を。


余りに虫の良い話ではあるが、狂座に秘密事項を察知されている現状、もはや手段を選ばず彼にすがる他無い。


「……言いたい事は分かりました。アナタ達が夜摩一族、古くから退魔を生業とした一族で在る事もね」


それまで黙して聞いていた少年は、正座したまま静かに口を開く。


その瞳から毛髪に至るまでの銀色は、既に黒一色へと戻っていた。


それは危害を加えるつもりは無い、という意思の顕れか。だが、まだまだ予断は許さない。


「アナタ方は“キリト”と言う人物をご存知でしょう?」


緊迫した空気の充満が続く中、唐突に少年の発したその名。


「何故その名を!?」


誰もがその名を知っていた。否、知らぬ筈が無い。


何故ならかつて夜摩一族に於いて、歴代でも最高の力を持ったとされた人物。


だが余りにも異質で、強大な力を生まれながらに持っていた為、一族からは異端視され、遂には一族から離れていく事になる。


世の中に於いては特異点、四死刀が一人ーー“魂縛のキリト”として、あまりにも有名な存在であった。


“キリト”


アミにもその名に聞き覚えがあった。


彼女がまだ幼かった頃、此処から去っていった人の事を。


一族最高の力の持ち主と謂われながら、特異点で在るがゆえ夜摩一族を捨て、四死刀の一人と呼ばれるまでになった事まで。


アミはその頃はまだ幼かった為、キリトがどんな人物かまでは覚えていなかった。


此処ではキリトの名は禁句となっている為、誰からもキリトの事を詳しく教えて貰った事は無かったのだ。


“――でも、どうしてこの子が?”


アミの疑問。だがそれに通ずるはユキヤという名の特異点、そして四死刀の一人。


「キリトは三年前の狂座との闘いで冥王の魂を封じ、極秘裏にその封印の証、光界玉をこの地に隠したのじゃった……」


長老のその言葉。それはアミにとって初耳であった。


アミはてっきり一族の誰かが、封印したとばかり思っていたのだから。


「キリトはほとんど満身創痍じゃった……。ワシに光界玉を頼むと傷の手当てもお構いなしに、すぐにこの地から出ていった……」


長老が昔を思い出すかの様に、その時の状況を語り続ける。


そんな長老を遮る様に、正座したままの少年は口を開く。


「私はそのキリトに頼まれて、此処を捜していたんですよ」


彼はこの地に足を踏み入れた理由を、静かに語り始めるのだった。


「キリトに頼まれた……じゃと? お主は一体……」


それに続くは“何者?”なのか。


考えればこの少年の正体は、まだ誰にも分からない。


アミ以外には――


“やっぱり……”


特異点で在り、四死刀のキリトとも知り合い。


そして彼女は知っている、ユキヤと少年が名乗っていた事を。


「キリトの事をお話する前に、まず私の事を説明せねばなりませんね――」


どう考えても、導き出された答は一つしかなかった。


「私の名は……ユキヤ」


やはり、というかアミ以外は仰天だ。


只者で無い事は分かってはいても、あの伝説とも謳われた四死刀の一人が、まさかここまでの幼子だった事に。


「あれ? どうしたんですか皆さん?」


少年が正体を明かした瞬間、まるで塩が引く様に後退り、少年から距離を取る者達。


それは明らかな怯懦の顕れ。


「何か勘違いなさってるみたいですが、誰も“四死刀”のユキヤとは言ってませんよ」


別人との言い回しに、更に仰天。じゃあ本当に何者か?


これにはアミも意外だった。


しかし少年の左横に置かれた刀が、それを示していたのは――


「アナタ方の知ったユキヤとは非なる者……。私は彼からその刀と名を受け継いだ者。私は四死刀ーー“星霜剣ユキヤ”の後継者です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...