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第3章 協力?
一話 皆殺し?
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「貴女への借りは、これで返しましたよ」
少年はアミにそっと近付き、穏やかに、そしてこれにて借りを返済した主旨を伝えたが――
“何か引っ掛かる……”
少年の姿はまだ、白銀に煌めいたままだ。
「あっ……ありがとう……」
アミは彼のあどけない少年としての外見と、それにそぐわぬ異彩。そして先程の異質なまでの武の軌跡に、戸惑いを隠せないでいる。
氷の呪縛は既に無くなっているとはいえ、腰を抜かしているに等しい状態だ。
“特異点”
“ユキヤ”
“四死刀”
“――やはり彼こそがそうなのか?”
だとしたらーー
「さて、先程のお話の続きですが……」
少年はすぐにアミから目を離し、周りを伺いながら口を開く。
まだ審議自体は終わってない事に――
「まだ私を殺したいですか? 借りも無くなった事ですし、黙って殺されてやる義理も無いんですが……」
このままでは不味い事態になる事は明白。
彼はあくまでアミに“借り”があっただけ。
だからこそ、あれ程の力を持ちながら大人しく従っていた、という事に。
それが無くなった今――
次に発した少年の一言に誰もが驚愕し、震撼する事になる。
「返答次第では……此処に居る全員に、“死んで”貰う事になりますが?」
そうあどけない、悪魔の笑みを浮かべながら――
“全員に死んで貰う?”
少年の穏やかな口調とは裏腹に、決して冗談では無い事は、その場の誰もが感じ取っていた。
“――この子……”
アミはずっと引っ掛かっていた違和感が分かった。否、気付いてしまった。
それは銀色になっても変わらぬ瞳。
言い知れぬ闇? 哀しみ?
いやもっと深いもの。
およそ少年が持つとは思えぬ、人で在って人で無き眼。
命を命とも思わぬ、無機質な死神の眼そのものであった。
今仮に、掟に従い誰かがこの少年を殺すと言えば、恐らく彼は何の躊躇いもなく、全員の命を奪いかねない。
あの恐るべき力を目の当たりにして、対抗出来る者等居ようもなかった。
だがその力は狂座からこの地を守る為、必要とも云えた。
狂座の戦力はあまりにも強大。
狂座の師団長シオンに、一族随一の遣い手であるアミですら及ばないのだから。
師団長と言うからには、まだまだ上の位の強さを持つ者が、狂座には多数存在すると思われる。
その様な相手と闘えば、結果は火を見るより明らかだ。
だがその師団長すらも相手にならなかった、この白銀髪の少年。
この少年の力が必要な事は、その場の誰もが感じていた事もまた確か。
「もう一度……話し合ってはくれぬか?」
なら、もう一度正式な話し合いと、協力してもらう為の説得が必要と――
長老は懇願する様に問い掛ける。
「……いいでしょう」
少年もそのつもりだったのか、特に異論無く頷く。
争い合うのは無意味。
冥王復活を阻止するのが最優先なのだから。
「貴女への借りは、これで返しましたよ」
少年はアミにそっと近付き、穏やかに、そしてこれにて借りを返済した主旨を伝えたが――
“何か引っ掛かる……”
少年の姿はまだ、白銀に煌めいたままだ。
「あっ……ありがとう……」
アミは彼のあどけない少年としての外見と、それにそぐわぬ異彩。そして先程の異質なまでの武の軌跡に、戸惑いを隠せないでいる。
氷の呪縛は既に無くなっているとはいえ、腰を抜かしているに等しい状態だ。
“特異点”
“ユキヤ”
“四死刀”
“――やはり彼こそがそうなのか?”
だとしたらーー
「さて、先程のお話の続きですが……」
少年はすぐにアミから目を離し、周りを伺いながら口を開く。
まだ審議自体は終わってない事に――
「まだ私を殺したいですか? 借りも無くなった事ですし、黙って殺されてやる義理も無いんですが……」
このままでは不味い事態になる事は明白。
彼はあくまでアミに“借り”があっただけ。
だからこそ、あれ程の力を持ちながら大人しく従っていた、という事に。
それが無くなった今――
次に発した少年の一言に誰もが驚愕し、震撼する事になる。
「返答次第では……此処に居る全員に、“死んで”貰う事になりますが?」
そうあどけない、悪魔の笑みを浮かべながら――
“全員に死んで貰う?”
少年の穏やかな口調とは裏腹に、決して冗談では無い事は、その場の誰もが感じ取っていた。
“――この子……”
アミはずっと引っ掛かっていた違和感が分かった。否、気付いてしまった。
それは銀色になっても変わらぬ瞳。
言い知れぬ闇? 哀しみ?
いやもっと深いもの。
およそ少年が持つとは思えぬ、人で在って人で無き眼。
命を命とも思わぬ、無機質な死神の眼そのものであった。
今仮に、掟に従い誰かがこの少年を殺すと言えば、恐らく彼は何の躊躇いもなく、全員の命を奪いかねない。
あの恐るべき力を目の当たりにして、対抗出来る者等居ようもなかった。
だがその力は狂座からこの地を守る為、必要とも云えた。
狂座の戦力はあまりにも強大。
狂座の師団長シオンに、一族随一の遣い手であるアミですら及ばないのだから。
師団長と言うからには、まだまだ上の位の強さを持つ者が、狂座には多数存在すると思われる。
その様な相手と闘えば、結果は火を見るより明らかだ。
だがその師団長すらも相手にならなかった、この白銀髪の少年。
この少年の力が必要な事は、その場の誰もが感じていた事もまた確か。
「もう一度……話し合ってはくれぬか?」
なら、もう一度正式な話し合いと、協力してもらう為の説得が必要と――
長老は懇願する様に問い掛ける。
「……いいでしょう」
少年もそのつもりだったのか、特に異論無く頷く。
争い合うのは無意味。
冥王復活を阻止するのが最優先なのだから。
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