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第1章 邂逅
六話 名刀
しおりを挟む「如何なる目的であの森に入ったのか?」
「目的……ね」
しかし少年はその問いに答えず、はぐらかしている。
「答えたくない……か。ならばこの刀」
長老は膝下に置いてある、一振りの刀を手に取る。
柄は黒鮫に白糸巻き。鞘は白呂鞘の金糸散らしの半太刀拵え。銅いぶし色の太刀鍔で装飾されており、全体的に白を基調とした、芸術品と云える程の美しい日本刀だった。
「ああ、そちらで預かっていたのですね。返して貰えますか? それはとても大事な物なので」
当然の様にそう主張する。
それはこの少年が所持する日本刀で間違いない事を。
しかしこれ程の刀は、紛れもなく極上業物。
名門武家の御大人すら、そうそう所持出来ぬ極上業物を、一介の侍はおろか、年端も行かぬ少年が持つには余りに分不相応だ。
「そうはいかぬ。何故お主がこの刀を持っている?」
長老は拒否の構えと疑問を投げ掛けた。
「ナカゴまで調べさせてもらった。この刀は幻とも云われる名刀“雪一文字”で相違無い。そしてこの刀を所持していたのは、この世にただ一人しか居ない事を……」
“名刀 雪一文字”
幻の名刀、菊一文字と双璧を成す半太刀。
後の新選組一番隊組長、沖田総司の愛刀『加州藤原清光』の波紋を思わせる、美しい造りとなっており、一説によると彼も所持していたと云われるが定かでは無い。
菊一文字と同じく、今や幻の名刀として語り継がれている。
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