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第8章 絶望へのカウントダウン

四話 向かう前に

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――――長老家広間内――――


「恐山!?」


ユキの言葉に、一同声を挙げた。


それもその筈。恐山はこの集落からはそう遠くない場所に在る山脈だが、彼処は妖の力が強過ぎる霊峰。東北に住む者なら、誰も近付いてはならないとされていたからだ。


「光の力を中和するなら、其処しかありません。狂座の者もその事に気付くはず。急がねば……」


ユキは身体を押さえながらも、刀を手に立ち上がる。


「ユキ!? まさか……」


今にも倒れそうな程、消耗しきっているユキにアミは信じられないと云った表情で声を挙げた。


「奴等より先回りして、其処で迎え撃ちます」


そのまさかである。彼はシグレとの死闘の傷も癒えぬ内に、もう闘いに赴こうとしていた。


「駄目っ! その身体で闘うなんて無茶よ!」


「分かってくださいアミ。急がないと大変な事になりかねないんです」


行こうとするユキを、アミは必死の想いで引き止める。


「それは分かってる……。でもせめて、せめて一日だけでも身体を休めて! お願い……」


それは懇願だった。一睡もしてない今の状態で、もし直属クラスと闘えば、結果は火を見るより明らかなのだから。


闘いが避けられないのならば、焼け石に水であったとしても、せめて少しでも体力の回復をと。


「アミ……」


懇願するアミの願い。その瞳に溢れる涙混じりの表情を見て、ユキは彼女の想いに応える事となった。


一刻を争うのは確かであり、休んでいる暇は無いのかも知れない。


しかし、実を担う“理詰め”だけが正しいとは限らない。


人を超えた力を持つとはいえ、特異点もまた傷付きか弱い。人としてのそれは変わる事は無い。


アミがユキを引き止めた、その想い。その願いは人として間違っていない。


そしてその想いは、人として失ってはならないのだから。
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