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第6章 特異点
三話 執念
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「所詮、人間など虫けら同然。この世から全て消え失せればいい」
シグレの紡ぎ出す言葉の意味に、ユキは口を閉ざしている。何故なら彼もシグレと同じ考えだったから。
“全員死に絶えた処で構わない”
かつてアザミへ語ったユキの心情。それは同じ特異点のみが共有出来る想い。
誰にも理解される事無く、ただ闘う事だけしか出来ず、その宿命の中死んでいく。誰一人例外無く。
その想像を絶する孤独は、彼等にしか解らない。
「でも命を奪う権利なんて誰にも無い! そんなの間違ってるわよ!」
ミオがシグレに向かって声を荒げる。どんな理由が有ろうが、生殺与奪の権利は誰にも無い事を。
それでも、シグレが此処で行った事は許される筈がなかった。
「……権利なら、有るんだよ」
シグレがミオを見据え、微笑しながら冷徹に呟く。
「何故なら俺達は人としてはこの世に在ってはならないが、生物としては誰よりも優れた力を持っているからだ。弱き者は強き者の糧となれ。居場所など力で奪い取ればいい」
それは特異点、四死刀が共有した唯一の信念。袂を別ったシグレも、その想いは変わらない。
“悪魔……”
それは誰もが抱いた、シグレへの見解であった。
「分かったら……」
突如シグレが傷の深さを感じさせない動きで、猛然とユキへと斬り掛かった。
「お前も死ぬがいい! 人に成り下がったお前も俺の糧となれ!」
ユキはシグレの一撃を、刀と鞘を交差させてしっかりと受け止めるが。
「くっ!」
明らかに押し込まれた。続く連撃にも防戦一方であった。
「ユキが押されてる? 何で!?」
先程までは互角、いや僅かに優勢だった状況の変化に、ミオが戸惑う様に口を開く。
シグレの執念。否、それだけでは無い。
「ユキの体力が、限界に来てる……」
ユキの緩慢なその動きに、アミはそう呟いた。
事実その通りだろう。シグレの猛攻に、ユキは防ぐのだけで精一杯だ。
「お前さえ死ねば全て終わりだ! 全て皆殺しにしてくれる!!」
唾競り合いの最中、シグレは叫びながら力ずくでユキの首を挽き切らん勢いで押し込んでいく。
「アナタは……何処まで堕ちれば気が済むんですか!?」
押し込まれながらも、退く事無くユキはシグレに向かって口をーー想いを紡ぐ。
「例え私達がこの世に在ってはならないとしても、力ずくで奪って良い筈が無い!」
その言葉の意味に、シグレは更に声を荒げる。
「今更何綺麗事言ってやがる! お前に何故その気持ちが分からん!?」
特異点は程度の差こそあれ、皆同じ境遇だった。だからこそ、四死刀と謳われた者達は自然と集結したのだろう。それは必然で有り、この世に於ける存在の否定の共通を共有する、確かな絆なのかもしれない。
シグレはそんな共有から外れたユキを許さないかの様に、力ずくで後方へ弾き飛ばした。
「これで終わりだ! 死ねぇぇぇ!!」
二人の間に距離が出来、シグレは村雨を天に掲げ、特異能“獄水”の全能力を集約する。
『なっ! 何だあれは!?』
誰もが驚愕し、震撼する。それはシグレの血液と水が混じり合い、得体の知れぬ複数の何かに形成されていく異様な光景を。
七つの業の禍が、この世を覆うーー
蒼閻剣極奥ーー “獄龍 緋水繚乱”
シグレの紡ぎ出す言葉の意味に、ユキは口を閉ざしている。何故なら彼もシグレと同じ考えだったから。
“全員死に絶えた処で構わない”
かつてアザミへ語ったユキの心情。それは同じ特異点のみが共有出来る想い。
誰にも理解される事無く、ただ闘う事だけしか出来ず、その宿命の中死んでいく。誰一人例外無く。
その想像を絶する孤独は、彼等にしか解らない。
「でも命を奪う権利なんて誰にも無い! そんなの間違ってるわよ!」
ミオがシグレに向かって声を荒げる。どんな理由が有ろうが、生殺与奪の権利は誰にも無い事を。
それでも、シグレが此処で行った事は許される筈がなかった。
「……権利なら、有るんだよ」
シグレがミオを見据え、微笑しながら冷徹に呟く。
「何故なら俺達は人としてはこの世に在ってはならないが、生物としては誰よりも優れた力を持っているからだ。弱き者は強き者の糧となれ。居場所など力で奪い取ればいい」
それは特異点、四死刀が共有した唯一の信念。袂を別ったシグレも、その想いは変わらない。
“悪魔……”
それは誰もが抱いた、シグレへの見解であった。
「分かったら……」
突如シグレが傷の深さを感じさせない動きで、猛然とユキへと斬り掛かった。
「お前も死ぬがいい! 人に成り下がったお前も俺の糧となれ!」
ユキはシグレの一撃を、刀と鞘を交差させてしっかりと受け止めるが。
「くっ!」
明らかに押し込まれた。続く連撃にも防戦一方であった。
「ユキが押されてる? 何で!?」
先程までは互角、いや僅かに優勢だった状況の変化に、ミオが戸惑う様に口を開く。
シグレの執念。否、それだけでは無い。
「ユキの体力が、限界に来てる……」
ユキの緩慢なその動きに、アミはそう呟いた。
事実その通りだろう。シグレの猛攻に、ユキは防ぐのだけで精一杯だ。
「お前さえ死ねば全て終わりだ! 全て皆殺しにしてくれる!!」
唾競り合いの最中、シグレは叫びながら力ずくでユキの首を挽き切らん勢いで押し込んでいく。
「アナタは……何処まで堕ちれば気が済むんですか!?」
押し込まれながらも、退く事無くユキはシグレに向かって口をーー想いを紡ぐ。
「例え私達がこの世に在ってはならないとしても、力ずくで奪って良い筈が無い!」
その言葉の意味に、シグレは更に声を荒げる。
「今更何綺麗事言ってやがる! お前に何故その気持ちが分からん!?」
特異点は程度の差こそあれ、皆同じ境遇だった。だからこそ、四死刀と謳われた者達は自然と集結したのだろう。それは必然で有り、この世に於ける存在の否定の共通を共有する、確かな絆なのかもしれない。
シグレはそんな共有から外れたユキを許さないかの様に、力ずくで後方へ弾き飛ばした。
「これで終わりだ! 死ねぇぇぇ!!」
二人の間に距離が出来、シグレは村雨を天に掲げ、特異能“獄水”の全能力を集約する。
『なっ! 何だあれは!?』
誰もが驚愕し、震撼する。それはシグレの血液と水が混じり合い、得体の知れぬ複数の何かに形成されていく異様な光景を。
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