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四の罪状
三十三間堂
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「現在、狂座には三十三名のS級エリミネーターが在籍しています。其々がその称号に恥じぬ、臨界突破を果たしたトップの実力を持つ方々ばかりです」
また話が脱線した感もあるが、ここで琉月より初めて明かされた、狂座執行部門最高位階、S級エリミネーターの実態。
雫や時雨のSS級には及ばぬとしても、人外の力を持つ者のみが冠する事を許されたその者達は、狂座のみならず裏世界に於いて――
“狂座三十三間堂”
最強クラスの実力を持つ者達として畏怖され、そう称されている。
死亡や臨界突破者不作により空位になる事は在っても、この三十三の基本係数は変わらない。
つまり現在は三十三間、全てが機能している状況である。
時雨と一発触発の状況になった事もある、あのS級エリミネーターの熾震(シン)も、当然三十三間の一角で在り、彼は第二十九位~No:29にその名を列ねている。
基本、番号が若い程、実力も格も上とされるが、超越者同士にはレベルでは判断出来ない能力相性関係もあり、一概にそうとは言えないのが実状だ。
「へぇ……三十三間って全員揃ってたんだ。うん、それは知らなかったよ」
琉月の説明に、時雨は今更ながらに初耳とでも言わんばかり。と言うより彼にとっては、S級以下の実態等どうでもいいのだろう。
あの時、S級の熾震を本気で知らなかった事からも、その興味の無さがありありと伺える。
彼にとって興味の対象は、己と同等以上の者か己が惚れた者、つまり雫か琉月のみ。
「ん? でもS級とSS級のそれに何の関係が?」
時雨はまだ話が掴めていない。琉月の説明も悪いのだが、話は脱線しているようで繋がっている。
「……ふん」
幸人には推測だが掴めていた。
SS級から突然S級の話。その因果関係に。
つまりSS級になるには、誰しもS級――三十三間堂の道を通る事となり、雫と時雨は現在(いま)でこそSS級に認定されてはいるが、彼等もかつては三十三間の一角、またそれ以前より下積みの経験を歩んで来たのは当然――
「つまりですね、現在の三十三間には次期SS級の最有力候補となる、優秀な人材がいます。そこで――」
やはり勿体振った感はあるが、ようやく琉月は二人を呼んだ真意を話す事となる。
「御二人方にはその人物を、SS級の“先輩”としてサポートして頂きたいのです。あと、少しばかり“特殊”なコなので、担当となるどちらかにはプライベートまで面倒見て貰いたいと思いまして……」
其所で琉月は言葉を濁す。何故彼女が彼等を個人的に呼んだのか、最大の肝は正にそれ。
「えぇっ!! やだやだ、幾ら琉月ちゃんの頼みとはいえ、そんな奴のプライベートまで面倒見たくねぇ!」
やっとその真意を理解した時雨は、当然の如く駄々をこねる。無駄にプライドの高い彼らしい。きっと合わないだろう。
「そうだ! こういう事こそお前の役目!」
「あぁ?」
時雨は隣の幸人にその権利を、有無を言わさず譲ろうとするが、当然幸人も快くないのは一目瞭然。
「なんたってお前は、“あの人”に特別に目を掛けられて、SS級になったようなもんだからな――あっ……」
時雨の発した言葉の意味に、一瞬場の空気が固まった。
口にしてはいけない“何か”に気付き、時雨も声を詰まらせる。
“あの人”
時雨が口にしたその人物とは彼等の、そして特に雫の先輩にあたるSS級エリミネーターの事を指していたのか――
また話が脱線した感もあるが、ここで琉月より初めて明かされた、狂座執行部門最高位階、S級エリミネーターの実態。
雫や時雨のSS級には及ばぬとしても、人外の力を持つ者のみが冠する事を許されたその者達は、狂座のみならず裏世界に於いて――
“狂座三十三間堂”
最強クラスの実力を持つ者達として畏怖され、そう称されている。
死亡や臨界突破者不作により空位になる事は在っても、この三十三の基本係数は変わらない。
つまり現在は三十三間、全てが機能している状況である。
時雨と一発触発の状況になった事もある、あのS級エリミネーターの熾震(シン)も、当然三十三間の一角で在り、彼は第二十九位~No:29にその名を列ねている。
基本、番号が若い程、実力も格も上とされるが、超越者同士にはレベルでは判断出来ない能力相性関係もあり、一概にそうとは言えないのが実状だ。
「へぇ……三十三間って全員揃ってたんだ。うん、それは知らなかったよ」
琉月の説明に、時雨は今更ながらに初耳とでも言わんばかり。と言うより彼にとっては、S級以下の実態等どうでもいいのだろう。
あの時、S級の熾震を本気で知らなかった事からも、その興味の無さがありありと伺える。
彼にとって興味の対象は、己と同等以上の者か己が惚れた者、つまり雫か琉月のみ。
「ん? でもS級とSS級のそれに何の関係が?」
時雨はまだ話が掴めていない。琉月の説明も悪いのだが、話は脱線しているようで繋がっている。
「……ふん」
幸人には推測だが掴めていた。
SS級から突然S級の話。その因果関係に。
つまりSS級になるには、誰しもS級――三十三間堂の道を通る事となり、雫と時雨は現在(いま)でこそSS級に認定されてはいるが、彼等もかつては三十三間の一角、またそれ以前より下積みの経験を歩んで来たのは当然――
「つまりですね、現在の三十三間には次期SS級の最有力候補となる、優秀な人材がいます。そこで――」
やはり勿体振った感はあるが、ようやく琉月は二人を呼んだ真意を話す事となる。
「御二人方にはその人物を、SS級の“先輩”としてサポートして頂きたいのです。あと、少しばかり“特殊”なコなので、担当となるどちらかにはプライベートまで面倒見て貰いたいと思いまして……」
其所で琉月は言葉を濁す。何故彼女が彼等を個人的に呼んだのか、最大の肝は正にそれ。
「えぇっ!! やだやだ、幾ら琉月ちゃんの頼みとはいえ、そんな奴のプライベートまで面倒見たくねぇ!」
やっとその真意を理解した時雨は、当然の如く駄々をこねる。無駄にプライドの高い彼らしい。きっと合わないだろう。
「そうだ! こういう事こそお前の役目!」
「あぁ?」
時雨は隣の幸人にその権利を、有無を言わさず譲ろうとするが、当然幸人も快くないのは一目瞭然。
「なんたってお前は、“あの人”に特別に目を掛けられて、SS級になったようなもんだからな――あっ……」
時雨の発した言葉の意味に、一瞬場の空気が固まった。
口にしてはいけない“何か”に気付き、時雨も声を詰まらせる。
“あの人”
時雨が口にしたその人物とは彼等の、そして特に雫の先輩にあたるSS級エリミネーターの事を指していたのか――
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