Eliminator~エリミネ-タ- 都市伝説の殺人代行サイト~あなたはアクセス出来ますか?

ユキナ

文字の大きさ
上 下
26 / 69
二の罪状

何時もと異なる執行

しおりを挟む
――――護送車内部――――


檜山 広明を乗せた護送車は、検察官に送致の最中であった。


「腹減ったんだけど。ちゃんと飯出るんだろうな? 不味いのは駄目だぞ」


檜山はそうケラケラと嘲笑う。まるで遠足にでも行くみたいだ。


『くっ……』


検察官達は檜山の態度に歯軋りするが、それでも必死に面には出さない。


腸煮えくり反っているのは、皆同じ。


あれだけの事件を起こしといて、反省の色すら見えないこの少年否、人の皮を被った悪魔を。


「辛気くせぇなぁ。何か音楽つけろよ」


心情的には何としても死刑にしてやりたい。


だが現実は非情。恐らく精神病院行きだろう。


檜山は生粋のサイコパスだ。良心を一欠片も持ち合わせてはいない。


更正の可能性すら無いのだから。


誰もが被害者達の、報われない無念さを痛感していた。


「それにしても腹減ったな。どっかコンビニ寄れよ」


檜山の我儘は度を越していくが、勿論そんな事、有り得る訳が無い。


「逃げやしねぇよ。どっちにしろドグマオンが助けてくれるし」


人気アニメの熊型ロボットが、本気で何とかしてくれると思っているこの空想癖。


“それとも異常な振りをしている?”


サイコパスは狡猾だ。自身の保守の為なら、手段を選ばない。


「……」


「おい! 聞いてんのかよ? 俺は腹が減ってるんだよ!」


誰も反応を示さない事に業を煮やしたのか、檜山が隣の検察官を肘で小突く。


「分かった。だが腹具合の心配はしなくていい……」


これまで沈黙を貫いていた検察官より、突如発せられた言葉。


「はぁ?」


その意味が分からず、不機嫌そうな檜山に構わず、続けざまに答える。


「お前に食はもう必要無いのだから」


その本当の意味を。


「何馬鹿な事を……って! 誰だよお前っ!?」


隣の検察官を一目見、檜山は飛び退く様なリアクションと共に声を張り上げていた。


検察官のはずなのに、まず服装が違う。


さながら死神を思わせる黒衣。


「何時からそこにいたんだよオイ!!」


護送車内に乗り込んだ時、勿論こんな人物は居なかった事を、檜山はよく覚えていた。


途中下車の記憶も無い。


ずっと走行中の為、途中で乗り込む暇さえ無いはず。というより、これ程目立つならすぐに気付くはずだ。


脱色では決して有り得ない、美しいまでに映える銀髪なのだから。


護送車内に備え付けられていた簡易ソファー。何時からか檜山の隣に、エリミネーター『雫』が座っていた。


「オイ! ここに部外者がいるぞ! お前ら何ぼけぇっとしてんだよ!?」


檜山はこの奇怪な状況に、理解出来ず混乱している。


だが周りの検察官達に反応は無い。誰の目からも部外者であるにも関わらずだ。


「……」


「…………」


それはまるで黙認。暗黙の了解。


檜山の声等、聞く耳持たず。その声に注視する事も無く、皆が黙したまま座っているそれはある意味、異様な光景だった。


「喚くな。耳障りだ……」


ヒステリックに喚く檜山の口を塞ぐ様に、雫がその左手で掴む。


「――ッグ!!」


これにて声は出せない。くぐもった呻きが僅かに出せるのみ。


檜山はまだ状況が掴めないままでいる。


この人物は誰なのか?
何をしに来たのか?


何故周りの誰もが、まるで無視しているかの様にふるまっているのか?


考えても分からない。分かる筈がない。


ただ少なくとも、己の身に危険が迫っているのだけは理解出来た。


“――でも何故? 自分が”


「解せないという面持ちだな」


雫はその心を読むかの様に、本気で心当たりが無さそうにしている表情の檜山を、塵の様に見下し囁いた。


『???』


サイコパスが理解出来るとは思えないが、冥土の土産として――


「罪状、檜山 広明。文京区一家惨殺事件に於いて“四名”を殺害、全て把握……」


「――っ!!」


述べられた行状を耳にした瞬間、檜山の瞳が大きく見開いた。


だがそれは恐怖というよりも『何故そんな事で?』といったニュアンスの方が大きい。


「よってこれより……消去を開始する」


雫の掲げられた右手に煌めく、蒼茫の輝き。


執行開始の合図である。


だが雫の綴った声が、何時もの消去執行と何処か違うのは気のせいだろうか?


通常、執行中はその声にまるで熱が無い。


だが今回は何処か違う。


決して面には出ない、感情に近い何かが――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...