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5 やっぱ復讐系主人公なの?

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「もう遅いし、話は明日にしようか。ミヤム、兄さんを案内してくれるかい?」

只今時刻は日付を跨いで午前1時。
馬車での地獄のような空間から抜け出せたのはありがたいが、正直今すぐ風呂入って寝たい。

「はい。わかりました。メルア兄さん、どうぞ。こっちです。」

ミヤムの少ない荷物を執事に預け、俺は父親の言う通りにメルア青年を案内する。
消去法で俺を選んだんだろうけど、執事やメイドさんに任せてもよかったのでは‥?

俺は渋々長い屋敷の廊下を歩く。
馬車の移動中から一切言葉を発していないメルア。

鋭い目付きからして、良い事を考えているようには到底思えない。

これから悩み事が増えそうだ。既に頭が痛い。


「お前は平気なのか‥?」

会話も無く無言で歩いていたら、急にそんな事を問いかけられる。

やっと喋ったと思ったらそんなことかよ。

俺はめんどくさくなって、深くため息をついた。

「はあ‥んなわけないでしょ。家中大混乱だっての。なんで君断らなかったのよ?」

俺は頭の上で手を組み、後ろを向きで廊下を歩く。
父の気配がなければ俺は通常オフモードだ。隠しててもいつかバレるだろうし、楽させてもらうぜ。


「おま、その話し方っ!騙していたのか!?」

目を見開いて、声の音量を上げるメルア青年に頭痛が増した。

「大袈裟だな‥」

「っ、お前達は信じられないッ。人を欺き、苦しめる‥っ、それなのにのうのうと生きてっ、」

「おい、落ち着けって‥」

「俺はっ‥6歳の真冬に、あの男に死の森へ捨てられたっ‥。」

急に始まる過去エピソードに困惑する。
これは‥大人しく話を聞いてやらないと更に興奮しそうだな‥。


「‥死の森か‥大変だっただろ‥」

「‥1週間、雪を食って生き延びた。何度も死にかけて、最後はダークベアに襲われそうになってた俺を、オイルドが救ってくれたんだ。」

なるほどな、だからパーティーで捨てられたとかなんとか言ってたわけか。
こいつの年齢が16歳って事はオイルドさんから会場で聞いてたから、そしたら約10年はギルドで面倒を見てくれてたんだな。

「そっか‥優しい人だな。」

「あぁ‥。」

表情が和らぐ。少しは落ち着いたようだ。
でも話を聞く限り、本当に謎なんだよな。

「んで、どうして戻ってこようと思ったわけ?こんな気が狂った奴らがいるところより、ギルドにいた方が君は幸せだったと思うんだけど。」

幸せを手放すほど恨んでいるとか‥?
復讐したい気持ちもわかるけれど、一族滅亡コースに入っちゃうと俺のオアシスがまずい。

「っ、狂ってるか‥その通りだな。」

「答えたくないならいいよ。ただひとつだけ。」

「‥?」

「俺のオアシスを壊したら、俺は君を許せなくなるから。そこだけはよろしくね。」

忠告、とまではいかないけれど、今の俺は君の敵じゃないって事は伝わってほしい。
無駄な争いは避けたいしな。

「‥、あぁ、分かった。」


「まあ、暗い話は置いといてさ、一応家族になるんだし、仲良くしてよメルアくん。」

俺はニカっと笑いかける。
この子もきっと不安だろうし、少しでも安心させられたら今はそれでいい。
こいつの中の気持ちが変わるのかは分からないけれど、
若いうちは若い時にしか出来ないことがたくさんあるんだ。

それが分かるのはあと10年はかかるだろうけど、
先輩からのアドバイスだ。


「、‥。」

「えーと、黙ってんのは肯定ってことでいいのか‥?まあ、いいけど。はい、着いたよ。ここがメルアくんの部屋。」

「‥そうか。」

「何か分からないことがあれば気軽に聞いてくれ。三つ隣が俺の部屋だから。んじゃ、おやすみ~。」

「待て‥」

「なんだ?」

「俺の方が年上だ‥。」

「‥だったらなんだよ?」

不穏な雰囲気。まさか、喧嘩をふっかけてくる気か。

俺は無意識に構える。さあ、くるなら来いっ。ボコボコにされる覚悟はできてるぜ!そう意気込んだ時だ、


「‥兄さんと‥呼べ。」

その消え入りそうな声に、俺は固まった。



「‥‥はい?」

なんだ?ギルドは上下関係に厳しいのか‥?それにしてはオイルドさんの事呼び捨てにしてたよな‥?
どういうことだ?


「だから‥お前は一応俺の弟だろ‥なら、兄と呼ぶのが普通ではないのか‥?」

俺は頭に沢山のハテナを浮かべる。


「はいぃ???どこで習ったんだよそれ!家族同士名前呼びの家庭もあるわい!ゔえ‥姉ちゃんならともかく兄貴なんてひとりで十分だっての!?気持ち悪い事いうなよ馬鹿!早く寝ろ。」

俺はぶつぶつ文句を言いながら部屋へと帰還する。
俺の2倍ほど大きくなったクリアが、特注で作ったクッションの上で爆睡していて、フラフラとその真っ白なクリアの腹の上に倒れ込んだ。

なんなんだよあいつ。
箱入り息子ができたような気分だ‥。
ゔ、疲れた‥。

ふいにキュ?と声がして、クリアが俺に擦り寄る。あぁ、癒しだ。
俺はパーティーでの疲労もあってか、すぐに眠気がきて、気づけばそのままクリアの腹の間で就寝してしまった。

「家族‥か‥」

俺が去った後、メルア青年がそんな事を呟いているとはつゆ知らず‥。
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