ハーレム系主人公の弟に転生した

白丸 さく

文字の大きさ
上 下
5 / 5

5 やっぱ復讐系主人公なの?

しおりを挟む




「もう遅いし、話は明日にしようか。ミヤム、兄さんを案内してくれるかい?」

只今時刻は日付を跨いで午前1時。
馬車での地獄のような空間から抜け出せたのはありがたいが、正直今すぐ風呂入って寝たい。

「はい。わかりました。メルア兄さん、どうぞ。こっちです。」

ミヤムの少ない荷物を執事に預け、俺は父親の言う通りにメルア青年を案内する。
消去法で俺を選んだんだろうけど、執事やメイドさんに任せてもよかったのでは‥?

俺は渋々長い屋敷の廊下を歩く。
馬車の移動中から一切言葉を発していないメルア。

鋭い目付きからして、良い事を考えているようには到底思えない。

これから悩み事が増えそうだ。既に頭が痛い。


「お前は平気なのか‥?」

会話も無く無言で歩いていたら、急にそんな事を問いかけられる。

やっと喋ったと思ったらそんなことかよ。

俺はめんどくさくなって、深くため息をついた。

「はあ‥んなわけないでしょ。家中大混乱だっての。なんで君断らなかったのよ?」

俺は頭の上で手を組み、後ろを向きで廊下を歩く。
父の気配がなければ俺は通常オフモードだ。隠しててもいつかバレるだろうし、楽させてもらうぜ。


「おま、その話し方っ!騙していたのか!?」

目を見開いて、声の音量を上げるメルア青年に頭痛が増した。

「大袈裟だな‥」

「っ、お前達は信じられないッ。人を欺き、苦しめる‥っ、それなのにのうのうと生きてっ、」

「おい、落ち着けって‥」

「俺はっ‥6歳の真冬に、あの男に死の森へ捨てられたっ‥。」

急に始まる過去エピソードに困惑する。
これは‥大人しく話を聞いてやらないと更に興奮しそうだな‥。


「‥死の森か‥大変だっただろ‥」

「‥1週間、雪を食って生き延びた。何度も死にかけて、最後はダークベアに襲われそうになってた俺を、オイルドが救ってくれたんだ。」

なるほどな、だからパーティーで捨てられたとかなんとか言ってたわけか。
こいつの年齢が16歳って事はオイルドさんから会場で聞いてたから、そしたら約10年はギルドで面倒を見てくれてたんだな。

「そっか‥優しい人だな。」

「あぁ‥。」

表情が和らぐ。少しは落ち着いたようだ。
でも話を聞く限り、本当に謎なんだよな。

「んで、どうして戻ってこようと思ったわけ?こんな気が狂った奴らがいるところより、ギルドにいた方が君は幸せだったと思うんだけど。」

幸せを手放すほど恨んでいるとか‥?
復讐したい気持ちもわかるけれど、一族滅亡コースに入っちゃうと俺のオアシスがまずい。

「っ、狂ってるか‥その通りだな。」

「答えたくないならいいよ。ただひとつだけ。」

「‥?」

「俺のオアシスを壊したら、俺は君を許せなくなるから。そこだけはよろしくね。」

忠告、とまではいかないけれど、今の俺は君の敵じゃないって事は伝わってほしい。
無駄な争いは避けたいしな。

「‥、あぁ、分かった。」


「まあ、暗い話は置いといてさ、一応家族になるんだし、仲良くしてよメルアくん。」

俺はニカっと笑いかける。
この子もきっと不安だろうし、少しでも安心させられたら今はそれでいい。
こいつの中の気持ちが変わるのかは分からないけれど、
若いうちは若い時にしか出来ないことがたくさんあるんだ。

それが分かるのはあと10年はかかるだろうけど、
先輩からのアドバイスだ。


「、‥。」

「えーと、黙ってんのは肯定ってことでいいのか‥?まあ、いいけど。はい、着いたよ。ここがメルアくんの部屋。」

「‥そうか。」

「何か分からないことがあれば気軽に聞いてくれ。三つ隣が俺の部屋だから。んじゃ、おやすみ~。」

「待て‥」

「なんだ?」

「俺の方が年上だ‥。」

「‥だったらなんだよ?」

不穏な雰囲気。まさか、喧嘩をふっかけてくる気か。

俺は無意識に構える。さあ、くるなら来いっ。ボコボコにされる覚悟はできてるぜ!そう意気込んだ時だ、


「‥兄さんと‥呼べ。」

その消え入りそうな声に、俺は固まった。



「‥‥はい?」

なんだ?ギルドは上下関係に厳しいのか‥?それにしてはオイルドさんの事呼び捨てにしてたよな‥?
どういうことだ?


「だから‥お前は一応俺の弟だろ‥なら、兄と呼ぶのが普通ではないのか‥?」

俺は頭に沢山のハテナを浮かべる。


「はいぃ???どこで習ったんだよそれ!家族同士名前呼びの家庭もあるわい!ゔえ‥姉ちゃんならともかく兄貴なんてひとりで十分だっての!?気持ち悪い事いうなよ馬鹿!早く寝ろ。」

俺はぶつぶつ文句を言いながら部屋へと帰還する。
俺の2倍ほど大きくなったクリアが、特注で作ったクッションの上で爆睡していて、フラフラとその真っ白なクリアの腹の上に倒れ込んだ。

なんなんだよあいつ。
箱入り息子ができたような気分だ‥。
ゔ、疲れた‥。

ふいにキュ?と声がして、クリアが俺に擦り寄る。あぁ、癒しだ。
俺はパーティーでの疲労もあってか、すぐに眠気がきて、気づけばそのままクリアの腹の間で就寝してしまった。

「家族‥か‥」

俺が去った後、メルア青年がそんな事を呟いているとはつゆ知らず‥。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...