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2 とはいかないのが人生。
しおりを挟むそれは王国の一人娘である王女様の誕生日パーティーでの出来事だった。
貴族はよくパーティーを開く。
それはこの世界に転生して実感した事だ。ティーパーティーやら親睦会パーティーやら。とにかく月に1、2回は必ず開催される。
今宵は王国の一人娘である王女様の誕生日パーティーということもあり、王国ゆかりの上級貴族だけでなく、各国からも様々な人物が訪れる盛大なもので、
もちろんサファイア家も無事王家から招待状を受け取り出席。父親の機嫌の良さそうな顔を見るに、金に物を言わせてコネでも使ったのだろう。
サファイア家の特徴である、淡いスカイブルーの髪色に宝石のような青の瞳。
兄はしっかりとその血を受け継いでいるが、
俺は生まれつき髪色が暗く、反して瞳の色が青より少し明るい。
瞳はともかく、淡い水色というよりは紺色に近い髪は、兄の隣に並ぶとかなり地味だ。
久々につっかかってきた兄からは、良い引き立て役だと言われた。解せぬ。
髪と瞳に合わせるように作られた紺色の洋服を身にまとい、俺はしぶしぶ会場へと向かっていた。
一足先に出発した両親と兄。
俺はクソ準備の遅い兄の次にメイクやら何やらおめかしされて、急いで王国から迎えにくるVIP馬車の位置まで走るが、もうそこには馬車一台もなく‥。
無様に置いて行かれる始末。
もう行かなくてもいいかと、部屋に戻ろうとしたところで、ボロボロの馬車のお迎えが来た。
馬車を運転する執事のセーバスいわく、王国の名誉あるパーティーに出席しないのは貴族の恥らしい。世間体を気にしての父親の配慮だそうだ。実にいらねえです配慮。
馬車の揺れで痛いケツをさすりながら会場に入る。
キラキラとどデカいシャンデリアに、長すぎるテーブル。その上には豪華な料理達が並べられていて、俺は来てよかったとこの時初めてそう感じた。
さて、どの料理から手をつけようか、
そんな事を考えていた矢先だった。
ざわざわと何やら不穏な雰囲気に気づく。
気温がやけに低くなって、吐き出した息が白く染まった。
魔法だーー。
それもよく知っているもの。
俺は騒つく会場の中心を目指して人の間を潜って行く。
サファイア家には髪と瞳の色以外にも、特徴があって、それは魔法に関係するものだ。
魔法には属性と呼ばれる種類があり、火水風土の四属性が基本となる。
それぞれ個人に得意な属性が存在し、それを極めることによって強大な魔法を駆使することができるのだ。
そして稀に、基本の四属性以外の属性が発生する場合がある。
光や闇、雷など‥その種類は様々で、基本属性からスキルと呼ばれる能力技術をプラスして派生する場合もあれば、
生まれ持って四属性に属さないオリジナルの個人属性を手に入れる場合の2パターンがある。
俺の家系は前者で、得意な水属性の魔力に、サファイア家の血筋にしか宿らない温度低下というスキルを混合させて【氷】というオリジナル属性を完成させた。
通称、【氷魔法】やスキル温度低下は今のところサファイア家の血筋の人間にしか使うことが出来ない。
だから、このクソ寒い異様な状況も、きっと我が儘で尚且つ沸点の低い我が兄のせいだろう。
どうせ、ぶつかったとかなんかでイチャモンつけて喧嘩でもおっぱじめたか?まったく、王国のパーティーでやらかすなよな‥。
人の群を抜けて、開いたその場所へと一歩踏み出す。
一番最初に見えたのは、予想通り兄と両親の姿。
そして、兄と向かい合う俺や兄と同い年ぐらいの青年と、
青年の隣に並ぶガッツリとした図体のデカいおっさん。
あとは、おっさんの背後に武装した男女が数名‥。
‥これどういう状況?
「っ、ミヤムか!!ちょうどよかった!!お前も父さんになんとか言ってくれ!!」
「はい‥?」
応援ありがとうございます!
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