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こちら付与魔術師でございます 戦争と商売拡大編

こちら付与魔術師でございます Ⅸ 中央平原攻防戦 Ⅰ

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ルイス公爵軍の編成変更について

 えー、第一部にルイス公爵軍の軍編成がございますが、数が合わないです。

 今回ルイスの街からは
 重装騎兵300
 騎馬に乗った重騎士200
 近衛50
 重装騎兵に換装された軽装騎兵200

 とその他、戦時最大戦力である5000名

 が参加しています。

 ルイス領からは騎兵だけでも
 
 重装騎兵1000
 【重層騎兵】に換装された重槍騎兵500
 重装騎兵に換装された軽装騎兵800

 が参加しています。

 ちなみに総戦力は最大の48000、1軍団が出陣しています。

 今回の突撃部隊は多少大隊の数からはみ出してはいますが戦場に近衛隊が参加しているせいです。
 (前線に出ないはずの総軍師であるルイス公爵が最前線に出張ったせいです。著者のミスです。ノリと勢いって怖いです。ごめんなさい)

 ちなみにジェンセンという側近が率いる500の部隊は【重槍騎兵】が換装された部隊で【重層騎兵】という特殊な騎馬隊です。
(両手に大盾持って勢いで殴り倒すという乱暴な部隊で、スクトゥムと呼ばれる古代ローマ帝国が使用した盾の面を総金属製にして厚みを5倍、更に多重構造にしたものです)

【古代ローマでは表に羊毛が貼らた木盾を多重構造にしていたそうですが、この盾は5ミリ程の鉄板、熊革、鉄板、鹿革、鉄板、鹿革という構造で出来ています。無茶苦茶重いので腕に括り付けてあり、盾とは別に通常の甲冑も着込んでいますので落馬したら動けません。きっと・・・・・・】

 スクトゥムがすこしごちゃごちゃ(時代によって作りが違うようです)になっている可能性がありますが・・・・・・、ごめんなさい。

でわ!(逃げさせていただきます)汗

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 中央平原。
 濃い霧の中から無数の亡者がゆっくりと近づいてくる。その数は目視で数えられるものでは無い。薄曇りの中、そのゆっくりとした足取りで近づいてくる者達の着用している甲冑が鈍く光っている。

 「凄まじい数ですな」

 未完成の城壁の上で中央を任された将の副官が呟いた。城壁の上では兵士達が駆け回り、昼間だというのに篝火を焚き始めている。
 
 「・・・・・・だろうな。伝令の言葉が真実ならば、最低でも消えた中央軍46000はいるはずだからな」

 副官の言葉に何気に返す将軍の言葉は暗い。霧の中から次々と出て来るそれは、不安を煽るような速度でしか近づいて来ないうえに途切れることが無い。
 
 「ルイス公爵が打って出るという話ですが、あの数に1個大隊でどうこうできるものなのでしょうか?」

 先程までルイス公爵と同じ天幕にいた将軍は黙って霧の中を見つめていた。地を埋め尽くすような数の亡者もの共。
 将軍も平静を装っているが内心気が気では無かった。

 (重装騎兵とはいえ、わずか3000の手勢であの数をどうこうできるものか? 確かにルイス公爵とその手勢の精強さはこの王国内でも群を抜いてはいるが……、相手が悪すぎる)

 将軍が心配しているのはこの国の騎兵と歩兵の主要兵器が剣と槍であることだ。強大な軍事国家ではあるが正規軍はモンスターの相手はしない。基本的にモンスターの相手は冒険者に丸投げだった。
 これはこの国の軍部に問題があった。基本的に軍は国同士の戦いのみに専念し、下等なモンスターなどの相手をするべきでは無いというのが軍部の常識である。
 唯一例外的に動いていたのがルイス公爵の直下兵ではあるが、それでも積極的に刈っていた訳では無い。これはルイス公爵が冒険者達の仕事を奪うことを良しとしなかったことが原因である。それでも新兵には一通りのモンスターとは戦わせているし、年に1度はモンスター狩りを兵士達持ち回りで行っていた。
 当然冒険者達の仕事を奪わないために1小隊に1パーティをオブザーバーとしてつけ、金を稼がせることで冒険者の不満を和らげていた。もっとも、技術を盗むという面もあるのである意味得になる仕組みではあるのだが・・・・・・。

 「そうだな、あの方ならなんとかするような気がするが・・・・・・、問題はあの数を完全には止められないということだろう」

 副官の問いに将軍は短く答え、同時に懸念も伝える。
 暫くすると城壁の上の兵士達の動きが徐々に減り、弓を脇に挟んだ兵達が2列に整列した。篝火は3メートルの間隔で配置されている。

 「考えても仕方がない。私は私の仕事をするだけだ。 さて、始めるとするかな。 斉射三連!」

 将軍の言葉に副官が城壁の街側へと走り城壁内へと手を振る。すぐに木の軋む音と風を切る轟音が辺り一面から響き始めた。城壁を越え次々と頭上を飛び越えてゆく石の塊。投石機の波状攻撃の開始である。
 最初の轟音からわずかの刻をおいて、飛び出した石の音が可愛いくらいの爆音が響く。その音と共に大地は揺れ、砂煙が前面に立ち上った。
 それは土煙の壁と言えるくらいの規模である。次々と城壁を越えて飛んでゆく音。すぐに起こる爆音と土煙。合計三度の轟音と衝撃が伝わり城壁内からの音は止んだ。弓を脇に構え前方を見る兵士達は姿勢を崩さず、それでも不安そうな表情を浮かべ前方から視線を外さない。当然城内へ合図を送った副官も将軍の横へと戻って前方へ目を凝らしていた。
 徐々に晴れてゆく土煙。その間から大量の石の間をゆっくりと進んでくる亡者達。誰とも言えないが唾を飲み込む音が耳に響く。

 「・・・・・・応えぬか」

 将軍はぼそりと呟く。亡者達の動きは全くと言っていい程止まらない。距離は十分ある。
その刻聞いてはいけない音が将軍の耳に響いた。矢の、風を切る音だ。亡者は遠い。弓の射程にも入らない。それでもあちらこちらから散発的に矢が放たれ始めた。副官が慌てて伝令を走らせ事態の収拾を図り始める。

 「対人戦しかやっていない悪しき所が出始めたか・・・・・・」

 将軍は、混乱し、指揮系統が崩壊し始めた自軍の様を眺め天を仰ぐのであった。

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 「何をしているのだ!」

 先頭の騎馬に跨がっているカサンドラが大声を上げる。これから突撃を始めようとした矢先、自陣から散発的ではあるが矢が降り注ぎ始めたからだ。10mはある城壁から放たれる仰角のついた矢は、いくら重装騎兵の着用する甲冑でも貫通してしまう。
 
 「経験不足が徒となっておりますな」

 側近の一人がカサンドラの側で呟く。散発的とはいえそれなりの矢が城壁からは放たれている。軽装騎兵ならいざ知らず、重装騎兵では絶好の的と化してしまう。
 カサンドラは考えていた。どのように突撃するかを。
 先程から怒鳴ってはいるが内心はかなり冷静で、兵達が声を上げられない事を理解しているから敢えて大声を出し、兵達の不安・不満を霧散させる方法を取りつつ戦術を練り直す。

 「ジェンセン、配置を変える。大型の盾を持ったお前の部隊500を城壁側へ回せ」

 苦虫を噛み潰したような表情のカサンドラの指示にジェンセンと呼ばれた男は「はぁ」と溜め息を付いた。何しろ死地へ赴いてくれと明らかに言われたからだ。

 「まったく、貧乏くじですな。 帰ったら特別報酬お願いしますよ」

 ジェンセンはカサンドラが何か言葉を発する前に城壁とは逆側、亡者達が溢れ出ている側へと馬を走らせた。
カサンドラはジェンセンを見送った後、自分の愛馬を前に進ませる。

 「予定外の事が起こった。こちらの最大の敵が亡者では無く味方の矢となった!」

 率いてきた大隊の中から失笑が沸き起こる。後方では騎馬隊の移動する音。

 「陣容を換える! 味方の矢はジェンセンの隊が文字通り身体を張って止めてくれる。我々は通り抜け、薙ぎ倒しまくる予定であったが機動防御に切り替える! 駆け抜ける事だけを考えろ! 無駄死には許さん! 生きて領地に戻るぞ! 亡者共を大地へ還せ! 自軍へ帰り味方馬鹿共けつを蹴り上げろ!」

 カサンドラの言葉に大隊全てが大爆笑の渦を巻き起こす。
ゆっくりと騎馬の向きを変えるカサンドラは、前を向くと同時に剣を天上へと翳した。

 「全軍、我に続け! 突撃!」

 振り下ろされた剣。【ドッ】という重低音と共にカサンドラは先陣を切り走り出した。一瞬遅れ、大地を揺るがす大音量が辺り一面へと響き渡る。
 3000の重装騎兵が大地を揺るがし、亡者の群れへと襲いかかる瞬間であった。

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 「そろそろアラクネ達との合流場所のはずなんだがなぁ」

 私は御者台へと出て前方を見る。
ルイスの街を出て2日目の朝。私たちは休憩を挟まずに全速力で街道を走り抜けていた。途中、すれ違った隊商にぎょっとした視線を送られたが無視して突っ切った。どのみち普通の馬車が追いつける速度では無い。食事も馬車の中で済ませていた。

 「ゴシュジンサマ~、ナニカクルヨ~」

 馬車の上で日向ぼっこをしていたミュールが突然目の前に現れる。正直びびった。

 「こらミュール、首だけ突然出すな! びっくりするだろうが」

 私の反応にミュールはケラケラと笑い、視線を前方に移す。私もつられて視線を移動させると豆粒ほどの物体が空を高速で飛んでくる。
 銀色に光る物体。小さな竜。偵察に出していたフォルミードが帰ってきたようだ。

 「お帰り、フォルミード。アラクネ達は見つかった?」

 私の問いにフォルミードは無表情で【見つかった】と短く答えた。ここから半刻ほどの場所にある森の中で待機しているということだ。ただし、とんでもない情報も付いていた。

 「数が増えてる? 産卵したって事?」

 フォルミードが言うには子アラクネだけでも50匹は越えているらしい。全部で130程か・・・・・・。しかもこれから戦場に向かうのに子供を連れて行く事に私は躊躇を憶えた。

 「ソレトシュジンヨ。イクサガハジマッタゾ」

 金属質の声が思考に陥っていた脳裏を叩く。

 「は? もう始まったのか? 王国軍が仕掛けた?のか?」

 私の問いにフォルミードは首を振った。

 「キリノナカカラタイリョウノモウジャガアラワレタ。アノオンナガセンジョウニデタ」

 あの女、フォルミードの言う女とはカサンドラ公爵の事だろう。それ以外ではうちの女性陣以外に知っている者はいないはずだ。

 「分かった。ちょっと中で話をしてくるから先にアラクネ達のところで待っていてくれ。 ミュール、中に入れ」

 私の言葉にフォルミードが【ヒトヅカイノアライシュジンダ・・・・・・】と呟いたが断固として無視する。私が馬車の中に入る前にミュールが馬車の中に入り、フォルミードが元来た方角へ高速で引き返していった。因みにその間、馬車は高速で走り続けていた。
 我ながら恐ろしい物体ものを創ったものだ……。


 「戦端が開かれた」

 私の言葉に馬車の中でくつろいでいた全員の顔に緊張が走る。

 「あ~、それは相手が動いたということ? それとも王国軍が動いたということ?」

 ルールウが手を上げて聞いてくる。バスティはすでに立ち上がりアクィバスアーマーを装着し始めている。フォルテはその姉の様子に呆れた表情で溜息をつき、ミルトは広げていたお金を袋にしまい始めた。
 ちなみにミュールとユーリカは何故か料理を始めようとしている。まったく自由な女たちであった。

 「まぁ、相手だとさ。 それはどうでもいいのだが、問題はだな、アラクネたちの数がかなり増えているらしい」

 私の言葉に全員の視線が一気に集まった。

 「ねぇねぇ、カーソン。 それって子供が増えてるということ?」

 「どれくらい増えたのでしょうか?」

 「アラクネって男? いなかったよね? どうやって増やしたの? まさか……、カーソン、手を出したとか?」

 「ゴシュジン~、ワタシモコドモホシイ~」

 カオスだ。可愛い赤ちゃんを見たいのか目をきらきらとさせる者、興味津々の者、一気に場が賑やかになる。これだから……。
 若干二名?不穏な言葉を吐いたような気がしたがあえて無視をする。

 「あ~、なぜ増えたかはアラクネ達に聞いてくれ。問題はこのまま合流し拾っていくか馬車を分けて分散するかなんだ。 
当然馬車を分ける場合は戦力も分散させることになるし、このメンバーも半分に分けることになる。何か他にいい考えがあったら聞かせてほしい」

 私の言葉に全員が車座になって意見を述べ出す。戦端が開かれたことは完全に忘却されていた。


 因みにすぐに火と煙を消すために車座は一度解散になったのはご愛嬌である。
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