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こちら付与魔術師でございます 戦争と商売拡大編
こちら付与魔術師でございます Ⅶ メイス納品とルイス領からの撤退 Ⅲ
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「ん? 存在? まあ、先程古代エルフではないとは言っていたけど?」
私には存在と言った意味が分かっていない。以前は次元の狭間で生きていたと聞いてはいたがそれは漠然と別の世界で暮らしていたものだと思っていた。
「そういえば私がここへ来た時にデセプションサークルを作るとき二人のことを聞いたっけ?」
二人は私の言葉に黙って頷いた。
「確かに私たちは自分たちの一族が古代エルフで次元の狭間で生きてきたと言いました。でもそれは嘘です。実は私たちはこの世界、正確にはこの星、空よりも更に上に存在していました。あ、ちなみに別次元にいたのは確かです」
バスティの説明を私は黙って聞き入っていた。まぁ、秘密はあるだろうとは思っていたがね。それよりも空より上って何だ? 空より上が存在し、何より星という言葉が出てきた。そして次元の狭間は嘘だけど別次元にいたとはどういうことだろうか?
そもそも星とは一体何なのだろう。
私はバスティが飲み物を口に運んでいる内に質問をする。
「君たちの事、魔法と精霊のことを聞く前にまず質問する内容が増えた。 まず【星】とは何だ? 空より上とは?」
私の問いに飲み物で喉を潤したバスティが答える。
「そうですね、まずカーソン様の認識を確認いたします。カーソン様はこの世界をどのような感じで理解されていますか? 例えばこの大地の事などは?」
私は質問に質問で返された。普通は失礼に当たる事だが、それが【星】や【空より上】を語るために必要なのだろう。そう思いこの大地について考える。
この世界はかなり広大な土地で構成されている。その中ではこの王国も大陸の中の一王国。中の上といった規模だろう。大国と呼ばれるところは2、3カ国存在する。国力はこの国の倍近い。更に海を渡った所にもかなり大きな陸地があると伝わっている。最も、伝わっていると言われているのは誰もその土地へ行ったことが無いからだ。
その辺りのことを師匠の所にいる時に尋ねたことはあるが、まだ知る必要は無いと言われそのまま忘れていた。そしてその答えを知る人物?が目の前にいる。
実際、私はこの世界は球体ではないかと思っている。もっともこの世界の常識では世界は巨大な平面になっており、地の果てには虚無の世界が拡がっているとされている。そしてその再先端は今なお拡がり続けているのではないかというのが定説だ。それ以外は異端者として扱われる。教会などからも弾圧は受けることはないが白い目で見られることが多い。当然、魔術師の者たちからも……。
それでも私は自分の意見を曲げることはない。そう師匠に教わってきたからだ。だから異端といわれている意見をそのまま述べる。
「ああ、そういう認識なのですね。やはりカーソン様は優秀です」
バスティはキラキラとした目で私を見つめてくる。思わず目を逸らしたくなった。その様子を察したのかフォルテが続きを話し始めた。
「そう、カーソンさんが言う通りこの世界は球体になっています。ある一定の距離を進むと出発点へきっちりと戻ってきます。もっともこれは本当に真っ直ぐに進んだ場合ですが・・・・・・」
ふむ。まずはこの世界が球体だということが分かった。ということは空はこの球体を覆っているということになる。
「そしてまず空より上というのはこの星が浮かんでいる場所のことを指します。そして星というのは夜、空に浮かぶ光、その一つ一つが星と呼ばれるものです」
フォルテはそこで言葉を句切った。私の顔色を伺っている。正確には理解が追いついているかを計っているのだろう。
私の知識の最大値を大きく超えている。先日【リッタイホログラフ】から得た知識だけでも理解の範疇を超え封印したのに、今日このわずかな時間で得た知識も理解の範疇を超えようとしているのだ。かろうじて理解は追いついているが、許容範囲を超えるのも時間の問題だろう。
しかし夜、空に浮かんでいる光全てがこの世界と同じ【星】と呼ばれるもの・・・・・・。この世界と同じものがあれだけの数あると言うことだ。驚き以外の何物でも無い。
「あ、夜空に浮かぶ星、全てがこの世界のように生物が存在するわけではありません。もっとも様々な形で生き物はいますが・・・・・・。私たちが特に驚いたのは、先日会った次元竜のシャヴォンヌさんです。あの存在は宇宙でも活動できますし、次元を渡ることすら可能です」
フォルテは【私たちにも可能です】と続けた。そして何故この星にいるのか疑問に思っているそうだ。
もっとも私の関心は更に新しい言葉に興味が湧いていた。【宇宙】とは何だ? ここまででまだ魔法と精霊の話に辿り着くことすら出来ていない。それなのに次々と新しい言葉と知識が湧き出してくるのだ。
私の知識欲は際限が無い。
【リッタイホログラフ】では難しく言われていたことも、二人の噛み砕いた話方から理解しやすいのかもしれない。もっともその噛み砕いた説明のおかげで付いていけているように思われるが……。
私は更に話を続けるように言うがあっさりと打ち切られた。
「で、とりあえず私たちのこと、この星以外のことは後日説明しますが、魔法と精霊の関係についてです。これは魔法はそこかしこにある魔力の元を使い、それを力に変換して使っていると理解されていますね?」
更なる知識を求めたかった私だが本来の目的、魔法と精霊の話題に無理矢理変更してくれたのでそこには黙って頷いた。
頷いたのだが疑問は残っている。そう、私の使う高音高速言語魔法だ。これはまだ理解できていない。この世界の魔法とは少しだけ理論形態が違う。特に威力が桁外れなのだ。だから余程の時以外は使わないことにした。
「そう、カーソンさんや魔術師の皆様が魔力の元と呼んでいる物、正確には魔力と呼ばれる物質はこの星に引き寄せられたカスのような物質でしかありません」
そこでフォルテが区切りを入れる。私はかろうじて付いていけているがユーリカはすでに諦めたらしく宙を眺めながらポリポリとお菓子を食べていた。
今度は喉を潤したバスティが話し始める。
「そして精霊の使う精霊魔法。これは精霊の力を借りてということになっていますが、正確には人間や魔物よりも精霊の方が魔力の元に近い物質で構成されている、そしてそれは純粋な魔力に近く、且つ物質への理解力が大きいということです。当然ですよね、自分の体のことですから。
ただ、人間のように自らの身体の構成や構造を知らない者もいます。精霊は自分の身体がどのような物質で構成されているかをほぼ完全に理解しています。
それで精霊がいくつかに分けられているのはその分野、自分の身体に理解度が高いということです。ちなみに精霊が普段見えないのは体を構成している魔力が薄いからです。精霊魔法の言語と人間が呼んでいるもので精霊の意思を近づかせることで魔力が集まり、濃密な身体を作り出し具現化するのです」
精霊に関しては精霊自体が魔力に近い存在であり、魔力の元、自らの身体への理解力の差という事が分かった。しかし、それだと説明が付かないことがある。神聖魔法と高音高速言語魔法だ。
私はまだ魔法と精霊魔法に関して確実には理解していなかったがその事にも触れてみる。神聖魔法に関しては普通に答えてくれたが、高音高速言語魔法に関しては微妙な表情を浮かべ、回答を躊躇っていた。
「神聖魔法に関しては人の思いが魔力に左右しているということです。それは生物の頭の中、脳と呼ばれる物が入っているのですが、人はそこで思考や記憶をしています。その一部が思い込みにより突出して発達したことで傷を塞いだり、病気を治したりすることが出来るようになるのです。
そしてその思い込みが宙に漂う物質に作用し回復や癒やしの効果として使っているということです。
それとカーソン様の使う高音高速言語魔法ですが・・・・・・。
あれはこの星にある薄い物質を集めて使うのではなく空の更に上、宇宙から直接物質を集めて使う方法です。だから威力が桁外れですし、危険な威力が出るのです
ちなみに我々の使う攻撃法とほぼ変わりません。もっともここ数千年使ってはいませんが」
私はそこまで聞いて、なんとなくだが理解が出来たような気がした。高音高速言語魔法に関してはまったくだが……。
私は溜息をつくしかなかった。人や魔物が魔法をどのようにして使うかが一気に解明出来てしまったのだ。魔法の原理などもすべては一つの物質で構成されているということだ。
これだけ理解することが出来れば魔法の研究が飛躍的に伸びる。そして様々なこと、今まで魔法で出来なかったことが現実的に出来るようになるという確信が持てた。
ふと視線をバスティとフォルテに向けると二人は不安そうな表情を浮かべている。何かを言いたそうな表情だ。
「どうした? 何かほかにいいたいことがあれば今のうちに聞いておきたいが?」
私は少し強い口調でゴチック姉妹に問いかける。二人は顔を見合わせもじもじとしていた。やがて意を決したようにバスティが口を開く。
「責めないのですか?」
バスティの声は暗い。目もわずかながらに潤んでいる。
「ん~? なぜ責めないといけないのかな? 私は寧ろ嬉しくてたまらないのだが?」
そう私は今まで200年近く研究した成果が一気に崩壊し、真理に近づけたことで寧ろ満足しているのだ。別に責めるつもりはない。どうやら二人は何かを誤解しているようだ。
「まだ、私たちの正体も明かしていませんし、それにいろいろとカーソンさまが研究し悩まれているのを知りながら知識をお教えしませんでした。だから……」
ふむ。そういうことね。私としては知識さえ手に入れば問題ないんだがね。それと後は老後まで商人として暮らせれば問題ないのだが……。
「まあ、話したくなったら話せばいいさ。こっちから無理に聞くことはないよ。それに二人の美女を放り出すほど間抜けじゃあないなぁ」
私の言葉に二人は目をパチクリさせ、バスティはうっとりと、フォルテはジトッとした視線を向けてくる。
「とりあえず二人とも馬車を使って自分の道具を持っておいでよ。私もかなり準備をしないといけないからさ」
私はとりあえず二人に家に帰るように言う。正直彼女らの正体なぞどうでもよい。厄介なのはうちの師匠だけで十分だ。これ以上頭痛の種を抱えたくない。
二人はしばらく黙っていたが荷物を取ってくるといって家へと帰っていった。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
私は二人が帰った後、竜牙兵を6体ほどを呼ぶ。
「さて、お前たちは今から出来上がったメイスを積み込んでもらう。2体一組でかかってくれ」
私の命令が下ると竜牙兵達はすぐに動き出した。私も手を加えていない馬車のほうに歩き出す。
馬車の止まっている場所に着く寸前、私は家に向かい歩いてくるミルトを見つけた。背中に大きなリュックを背負っている。どうやら私たちと共に旅に出るようだ。
私はミルトの歩く速度を見て慌てて竜牙兵を1体呼ぶ。そしてミルトの元へ駆け寄った。
「……ミルト、何を背負っているんだ?」
私の問いにミルトは気が抜けたようにその場に座り込む。ガシャリという音がリュックの中から聞こえてきた。
「ミ、ミルト。まさか退職金の金貨千枚担いでいるんじゃあないよな……」
ミルトは【てへへ】という笑顔を浮かべた後、リュックを背中からはずす。すぐに竜牙兵が走ってきてミルトのリュックを担ぐ……が、ビクともしない。それはそうだ。金貨千枚なんぞ普通は持てるはずはない。しかもそれだけではなさそうだ。
リュックの中から短剣や本などがのぞいている。
「ミルト、荷物はそれで全部なのか?」
私の問いにミルトは力なく笑う。
「……うん、他は全部処分したから。今あるのはお金と宝石、本、それと短剣、あとは変えの服が2着かなぁ」
ん~、ミルトは変わっていると思ってはいたが予想以上に痛い子らしい。しかし全部処分しなくても私を呼べばすぐに馬車を手配したものを……。
私の考えていることを察したのかミルトは薄っすらと笑う。
「わざと処分したんだよ。この街から離れるにはケジメが必要だったんだ。だから必要なものだけを持っているんだよ。気にしなくていいよ」
私とミルトが話していると先ほど荷物を抱えきれなかった竜牙兵がもう1体竜牙兵を連れて戻ってくる。そして2体がかりでミルトのリュックを抱え馬車へと積み込みに行った。
「とりあえず退職金は返す。その代わり服をいくつか欲しいな。それと……替えの下着……とか」
ミルトは顔を真っ赤にして小さな声で呟いた。恥かしいなら言わなきゃいいのに……。まあ無いものは仕方がない。しかし、買い物に竜牙兵を付けるわけにはいかない。そんなことをすれば街が大混乱になる。
女性物の衣服を抱えて歩く竜牙兵なんざシュール以外の何者でもない。私は戻ってきた竜牙兵にユーリカを呼びに行かせる。
ユーリカはまだ御者の訓練明けで眠っているはずだ。申し訳ないが起きてもらおう。今日はまだいろいろと忙しくなりそうだ……。
私には存在と言った意味が分かっていない。以前は次元の狭間で生きていたと聞いてはいたがそれは漠然と別の世界で暮らしていたものだと思っていた。
「そういえば私がここへ来た時にデセプションサークルを作るとき二人のことを聞いたっけ?」
二人は私の言葉に黙って頷いた。
「確かに私たちは自分たちの一族が古代エルフで次元の狭間で生きてきたと言いました。でもそれは嘘です。実は私たちはこの世界、正確にはこの星、空よりも更に上に存在していました。あ、ちなみに別次元にいたのは確かです」
バスティの説明を私は黙って聞き入っていた。まぁ、秘密はあるだろうとは思っていたがね。それよりも空より上って何だ? 空より上が存在し、何より星という言葉が出てきた。そして次元の狭間は嘘だけど別次元にいたとはどういうことだろうか?
そもそも星とは一体何なのだろう。
私はバスティが飲み物を口に運んでいる内に質問をする。
「君たちの事、魔法と精霊のことを聞く前にまず質問する内容が増えた。 まず【星】とは何だ? 空より上とは?」
私の問いに飲み物で喉を潤したバスティが答える。
「そうですね、まずカーソン様の認識を確認いたします。カーソン様はこの世界をどのような感じで理解されていますか? 例えばこの大地の事などは?」
私は質問に質問で返された。普通は失礼に当たる事だが、それが【星】や【空より上】を語るために必要なのだろう。そう思いこの大地について考える。
この世界はかなり広大な土地で構成されている。その中ではこの王国も大陸の中の一王国。中の上といった規模だろう。大国と呼ばれるところは2、3カ国存在する。国力はこの国の倍近い。更に海を渡った所にもかなり大きな陸地があると伝わっている。最も、伝わっていると言われているのは誰もその土地へ行ったことが無いからだ。
その辺りのことを師匠の所にいる時に尋ねたことはあるが、まだ知る必要は無いと言われそのまま忘れていた。そしてその答えを知る人物?が目の前にいる。
実際、私はこの世界は球体ではないかと思っている。もっともこの世界の常識では世界は巨大な平面になっており、地の果てには虚無の世界が拡がっているとされている。そしてその再先端は今なお拡がり続けているのではないかというのが定説だ。それ以外は異端者として扱われる。教会などからも弾圧は受けることはないが白い目で見られることが多い。当然、魔術師の者たちからも……。
それでも私は自分の意見を曲げることはない。そう師匠に教わってきたからだ。だから異端といわれている意見をそのまま述べる。
「ああ、そういう認識なのですね。やはりカーソン様は優秀です」
バスティはキラキラとした目で私を見つめてくる。思わず目を逸らしたくなった。その様子を察したのかフォルテが続きを話し始めた。
「そう、カーソンさんが言う通りこの世界は球体になっています。ある一定の距離を進むと出発点へきっちりと戻ってきます。もっともこれは本当に真っ直ぐに進んだ場合ですが・・・・・・」
ふむ。まずはこの世界が球体だということが分かった。ということは空はこの球体を覆っているということになる。
「そしてまず空より上というのはこの星が浮かんでいる場所のことを指します。そして星というのは夜、空に浮かぶ光、その一つ一つが星と呼ばれるものです」
フォルテはそこで言葉を句切った。私の顔色を伺っている。正確には理解が追いついているかを計っているのだろう。
私の知識の最大値を大きく超えている。先日【リッタイホログラフ】から得た知識だけでも理解の範疇を超え封印したのに、今日このわずかな時間で得た知識も理解の範疇を超えようとしているのだ。かろうじて理解は追いついているが、許容範囲を超えるのも時間の問題だろう。
しかし夜、空に浮かんでいる光全てがこの世界と同じ【星】と呼ばれるもの・・・・・・。この世界と同じものがあれだけの数あると言うことだ。驚き以外の何物でも無い。
「あ、夜空に浮かぶ星、全てがこの世界のように生物が存在するわけではありません。もっとも様々な形で生き物はいますが・・・・・・。私たちが特に驚いたのは、先日会った次元竜のシャヴォンヌさんです。あの存在は宇宙でも活動できますし、次元を渡ることすら可能です」
フォルテは【私たちにも可能です】と続けた。そして何故この星にいるのか疑問に思っているそうだ。
もっとも私の関心は更に新しい言葉に興味が湧いていた。【宇宙】とは何だ? ここまででまだ魔法と精霊の話に辿り着くことすら出来ていない。それなのに次々と新しい言葉と知識が湧き出してくるのだ。
私の知識欲は際限が無い。
【リッタイホログラフ】では難しく言われていたことも、二人の噛み砕いた話方から理解しやすいのかもしれない。もっともその噛み砕いた説明のおかげで付いていけているように思われるが……。
私は更に話を続けるように言うがあっさりと打ち切られた。
「で、とりあえず私たちのこと、この星以外のことは後日説明しますが、魔法と精霊の関係についてです。これは魔法はそこかしこにある魔力の元を使い、それを力に変換して使っていると理解されていますね?」
更なる知識を求めたかった私だが本来の目的、魔法と精霊の話題に無理矢理変更してくれたのでそこには黙って頷いた。
頷いたのだが疑問は残っている。そう、私の使う高音高速言語魔法だ。これはまだ理解できていない。この世界の魔法とは少しだけ理論形態が違う。特に威力が桁外れなのだ。だから余程の時以外は使わないことにした。
「そう、カーソンさんや魔術師の皆様が魔力の元と呼んでいる物、正確には魔力と呼ばれる物質はこの星に引き寄せられたカスのような物質でしかありません」
そこでフォルテが区切りを入れる。私はかろうじて付いていけているがユーリカはすでに諦めたらしく宙を眺めながらポリポリとお菓子を食べていた。
今度は喉を潤したバスティが話し始める。
「そして精霊の使う精霊魔法。これは精霊の力を借りてということになっていますが、正確には人間や魔物よりも精霊の方が魔力の元に近い物質で構成されている、そしてそれは純粋な魔力に近く、且つ物質への理解力が大きいということです。当然ですよね、自分の体のことですから。
ただ、人間のように自らの身体の構成や構造を知らない者もいます。精霊は自分の身体がどのような物質で構成されているかをほぼ完全に理解しています。
それで精霊がいくつかに分けられているのはその分野、自分の身体に理解度が高いということです。ちなみに精霊が普段見えないのは体を構成している魔力が薄いからです。精霊魔法の言語と人間が呼んでいるもので精霊の意思を近づかせることで魔力が集まり、濃密な身体を作り出し具現化するのです」
精霊に関しては精霊自体が魔力に近い存在であり、魔力の元、自らの身体への理解力の差という事が分かった。しかし、それだと説明が付かないことがある。神聖魔法と高音高速言語魔法だ。
私はまだ魔法と精霊魔法に関して確実には理解していなかったがその事にも触れてみる。神聖魔法に関しては普通に答えてくれたが、高音高速言語魔法に関しては微妙な表情を浮かべ、回答を躊躇っていた。
「神聖魔法に関しては人の思いが魔力に左右しているということです。それは生物の頭の中、脳と呼ばれる物が入っているのですが、人はそこで思考や記憶をしています。その一部が思い込みにより突出して発達したことで傷を塞いだり、病気を治したりすることが出来るようになるのです。
そしてその思い込みが宙に漂う物質に作用し回復や癒やしの効果として使っているということです。
それとカーソン様の使う高音高速言語魔法ですが・・・・・・。
あれはこの星にある薄い物質を集めて使うのではなく空の更に上、宇宙から直接物質を集めて使う方法です。だから威力が桁外れですし、危険な威力が出るのです
ちなみに我々の使う攻撃法とほぼ変わりません。もっともここ数千年使ってはいませんが」
私はそこまで聞いて、なんとなくだが理解が出来たような気がした。高音高速言語魔法に関してはまったくだが……。
私は溜息をつくしかなかった。人や魔物が魔法をどのようにして使うかが一気に解明出来てしまったのだ。魔法の原理などもすべては一つの物質で構成されているということだ。
これだけ理解することが出来れば魔法の研究が飛躍的に伸びる。そして様々なこと、今まで魔法で出来なかったことが現実的に出来るようになるという確信が持てた。
ふと視線をバスティとフォルテに向けると二人は不安そうな表情を浮かべている。何かを言いたそうな表情だ。
「どうした? 何かほかにいいたいことがあれば今のうちに聞いておきたいが?」
私は少し強い口調でゴチック姉妹に問いかける。二人は顔を見合わせもじもじとしていた。やがて意を決したようにバスティが口を開く。
「責めないのですか?」
バスティの声は暗い。目もわずかながらに潤んでいる。
「ん~? なぜ責めないといけないのかな? 私は寧ろ嬉しくてたまらないのだが?」
そう私は今まで200年近く研究した成果が一気に崩壊し、真理に近づけたことで寧ろ満足しているのだ。別に責めるつもりはない。どうやら二人は何かを誤解しているようだ。
「まだ、私たちの正体も明かしていませんし、それにいろいろとカーソンさまが研究し悩まれているのを知りながら知識をお教えしませんでした。だから……」
ふむ。そういうことね。私としては知識さえ手に入れば問題ないんだがね。それと後は老後まで商人として暮らせれば問題ないのだが……。
「まあ、話したくなったら話せばいいさ。こっちから無理に聞くことはないよ。それに二人の美女を放り出すほど間抜けじゃあないなぁ」
私の言葉に二人は目をパチクリさせ、バスティはうっとりと、フォルテはジトッとした視線を向けてくる。
「とりあえず二人とも馬車を使って自分の道具を持っておいでよ。私もかなり準備をしないといけないからさ」
私はとりあえず二人に家に帰るように言う。正直彼女らの正体なぞどうでもよい。厄介なのはうちの師匠だけで十分だ。これ以上頭痛の種を抱えたくない。
二人はしばらく黙っていたが荷物を取ってくるといって家へと帰っていった。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
私は二人が帰った後、竜牙兵を6体ほどを呼ぶ。
「さて、お前たちは今から出来上がったメイスを積み込んでもらう。2体一組でかかってくれ」
私の命令が下ると竜牙兵達はすぐに動き出した。私も手を加えていない馬車のほうに歩き出す。
馬車の止まっている場所に着く寸前、私は家に向かい歩いてくるミルトを見つけた。背中に大きなリュックを背負っている。どうやら私たちと共に旅に出るようだ。
私はミルトの歩く速度を見て慌てて竜牙兵を1体呼ぶ。そしてミルトの元へ駆け寄った。
「……ミルト、何を背負っているんだ?」
私の問いにミルトは気が抜けたようにその場に座り込む。ガシャリという音がリュックの中から聞こえてきた。
「ミ、ミルト。まさか退職金の金貨千枚担いでいるんじゃあないよな……」
ミルトは【てへへ】という笑顔を浮かべた後、リュックを背中からはずす。すぐに竜牙兵が走ってきてミルトのリュックを担ぐ……が、ビクともしない。それはそうだ。金貨千枚なんぞ普通は持てるはずはない。しかもそれだけではなさそうだ。
リュックの中から短剣や本などがのぞいている。
「ミルト、荷物はそれで全部なのか?」
私の問いにミルトは力なく笑う。
「……うん、他は全部処分したから。今あるのはお金と宝石、本、それと短剣、あとは変えの服が2着かなぁ」
ん~、ミルトは変わっていると思ってはいたが予想以上に痛い子らしい。しかし全部処分しなくても私を呼べばすぐに馬車を手配したものを……。
私の考えていることを察したのかミルトは薄っすらと笑う。
「わざと処分したんだよ。この街から離れるにはケジメが必要だったんだ。だから必要なものだけを持っているんだよ。気にしなくていいよ」
私とミルトが話していると先ほど荷物を抱えきれなかった竜牙兵がもう1体竜牙兵を連れて戻ってくる。そして2体がかりでミルトのリュックを抱え馬車へと積み込みに行った。
「とりあえず退職金は返す。その代わり服をいくつか欲しいな。それと……替えの下着……とか」
ミルトは顔を真っ赤にして小さな声で呟いた。恥かしいなら言わなきゃいいのに……。まあ無いものは仕方がない。しかし、買い物に竜牙兵を付けるわけにはいかない。そんなことをすれば街が大混乱になる。
女性物の衣服を抱えて歩く竜牙兵なんざシュール以外の何者でもない。私は戻ってきた竜牙兵にユーリカを呼びに行かせる。
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