こちら付与魔術師でございます

文字の大きさ
上 下
5 / 45
こちら付与魔術師でございます

こちら付与魔術師でございます Ⅴ 労働力を確保しましょう

しおりを挟む
 ん~、なんとか多機能カバンは作成できました。

 何をしたのかさっぱり分からない?

 あっ、そうですね。ではちょっと説明しておきましょう。

 あのカバンの三つの色のポケットは、それぞれの色の魔方陣お部屋に繋がっています。
 要は、外出しているところで買い物やアイテムを拾った場合、そこに放り込むと自宅に転送されるという仕掛けです。

 色の違い?

 そうですね。まず、青い魔方陣の部屋、これはルーミィと話していて思いついたのですが、部屋を丸ごと冷やしてみました。
 部屋の隅に置いた魔石には強力な冷気を発し続ける魔法が掛かっています。永続ではありませんよ。
 ちゃんと月に一度は、かけ直さなければなりません。これは改善の余地があり。
 用途としては、肉や野菜を置いておける空間を作っただけです。時空魔法で時間を止めても良かったのですが、ちょっと魔力の消費が激しすぎるので間に合わせです。
 それにルーミィの依頼の実験用なので取りあえずはこれでよいのです。
 えへん。

 つぎに赤い部屋ですがここは空気を乾燥させてみました。
熱を発し続ける魔法をかけた魔石と、先程使った冷気を発し続ける魔法の二つを同時に使い気温の変動をなくしてみました。
これは書物を保管するための部屋です。これで湿度などを気にせずに保管できます。
 これも1月ごとにかけ直さないといけないので要、改良です。

 最後の部屋、ここは貴重品を保管する部屋です。
 お金とかお金とかお金とか・・・・・・。いや、他にもあるのですが、ここだけは特殊な魔方陣を使いました。紫や黒ともつかない光は、古代遺跡から見つけた本に書かれていた魔法です。どうやら、この世界とは違う場所から魔力を供給し続ける術です。

 一度、私の師匠が普通の火球に混ぜて使ったのですが100mほどのクレーターが出来、大地が煮えました。そこで攻撃に使うことは禁止という取り決めをしました。
  あっ、当然、約束を破らないように二人とも制限の魔法をかけていますよ。
内容は秘密です・・・・・・(おぞましくて口にもしたくない・・・・・・)

 話を戻してっと、機能としては、空間魔法と組み合わせてあります。最後にノブに魔法をかけたのですが、あれは私のつけている指輪が鍵になっていて、私以外が開けて入ると生命体は空間の隙間に飛ばされるというしかけです。
 シンプルな罠ですが、抵抗は出来ないですね。組み合わせている謎の魔力が桁外れなので。
 ただね、生命体以外には効果ないですから、一度神殿に行って神聖魔法の使い手に対策を頼むか、何か自分で浄化系のアイテムを作る必要がありますね。
(ただ、付与魔術師のプライドとしては自分でやりたいのですが、神聖魔法、苦手なんですよ。信心深くないので)

 危険はないのかって?

 師匠の家で同じ物を作って2年ほど立ちますが問題は起こってないのでまぁ大丈夫でしょう。
 とりあえず、そのようなバッグを作ってみました。

 これで買い物や冒険にバック一つで行けるようになりました。

 ちなみにバッグから取り出すときにはあれが欲しいなと思えば取り出せるように空間を操作してあります。

   
  仕事を始めるために労働力を確保しないといけない。私は昨日作成したバッグを背負って冒険者ギルドに来た。
  ギルドに入ると大勢の冒険者達が依頼票などを物色したり、アイテムを見たりしている。受付にはこの間対応してくれた古代エルフのフォルテと数名が冒険者の対応をしていた。
  忙しそうだったので私は挨拶をせずに目的の素材売り場へ向かった。
 
「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」
 
  20代前半くらいの女性が声を掛けてきた。
 素材売り場には様々な商品が並んでいた。何かの牙や角、毛皮など様々な物がある。しかし、目的のものは無かった。
  
「あの、モンスターの全身骨格はありますか?」

 店員さんは少々お待ちくださいといって奥へと入り、10枚ほどの紙とやや大きめの水晶球を持ってきた。

「すみません、在庫は別の倉庫に保管してありますので、こちらのリストから選んでください。選んだ物をこちらの水晶球から映し出しますので質の確認は出来ます」

 いやいや、できないでしょ。実物を見ないで買わされるのか・・・・・・。
ん、取りあえずリストに目を通そう。

「あの、このカタログ、分類別になっていますか? 二足歩行だけで良いのですが」

「はい、じゃあ、二足歩行だけにしますね」

店員さんは2枚の紙を取り出した。意外と少ない。

「どのようなタイプがよろしいですか? オーガ、コボルト、ゴブリン、オーク、リザードマン、など30体ほど在庫がございます。それと変わり種でサイクロプスも1体あります」

サイクロプスなんぞいらん!でかい。店員の何気ない一言をスルーし、リストを上から眺めてゆく。ん~、めぼしい物は・・・・・・ある。でもなんで二足に?

「あの、ここにスキュラがあるんですけど・・・・・・」

私の問いかけに店員がリストを確認する。

「あら、記載ミスのようですね。申し訳ございません」

店員は謝りながらリストを戻した。

「これ、確認できますか?」

私はスキュラを指さした。

「あ、確認は大丈夫ですがスキュラは二足歩行ではありませんが・・・・・・」

「大丈夫です、お願いします」

 店員は分かりましたというと水晶球に品番らしき物を唱えた。水晶球から光が上へ伸び、スキュラの骨格を立体的に映し出す。
映像なので詳細は分からないがかなり状態は良さそうだ。これなら良い買い物になりそうだ。

「これ買います。いくらですか?」

店員は値段を確認し、紙に何かを書き出した。

「通常は金貨2枚ですが、割引価格で金貨1枚と銀貨7枚でいかがでしょうか?」

店員は微妙に割り引いてくる。もしかして・・・・・・不良在庫か?一瞬、私の心に不安がよぎる。
まぁ、いい。スキュラだったら労働力として以外にも使い勝手がある。

「いいですよ。で、物はどこに取りに行けばよろしいですか?」

「銀貨1枚で時間指定の配達が出来ますが?」

この店員、話の持っていき方がうまいな。

「じゃあ、配達でお願いします」

 私はそう言って金貨2枚を渡した。店員がすぐにおつりと水晶球を持ってくる。

「他には必要ございませんか?」

おっ、上客とみられたようだ。喰い付いてくるなぁ。

「いや、大丈夫です」  

水晶球に手をかざすと光りが指輪と水晶球の間を行き来する。

「はい、毎度ありがとうございます」

金銭のデータをやりとりすると私と同時に店員が立ち上がった。

「またのご来店をお待ちいたします」

そう言って店員は見送ってくれた。振り返ると、すぐに次の客に話しかけられている。もしかして、売り手No1かな?
可愛いし。
 そんなことを考えながら冒険者ギルドを後にしようとすると突然、後ろから声が掛けられた。
  
「カーソンさん・・・・・・でしたね」

 私の後ろに深紅の髪、深紅の瞳のエルフ、フォルテが立っていた。
結構買い物に時間をかけたようで受付周辺には冒険者達の姿はなかった。

「あ、フォルテさん。こんにちは」

 私は前回の失敗を繰り返さないように、笑顔で挨拶をした。もしかしたら少し引きつっているかもしれない・・・・・・

「今日はお買い物ですか?」

前回の失敗がなかったかのように話しかけてくる。

「えぇ、ちょっと骨格を買いに来ました」

 あ、まずかったかな?しかし、フォルテの表情に変化はなかった。まぁ、冒険者ギルドで冒険者を相手にしているのだ。
その程度でひるんでいては店員はつとまらない。

「あ、そういえば付与魔術師でしたね。ゴーレムでもお作りになるのですか?」

なんか興味があるようだ。しばらくフォルテと話していると、フォルテに突然腕を引っぱられ物陰に連れ込まれた。
ん?なんだろ? エフィルは深紅の眼でじっと私の目を見つめる。

「カーソンさん・・・」 

深紅の眼の中がゆらゆらと揺れている。
これは・・・・・・もしや、うれしい告白か? わたしは期待に胸を膨らませ次の言葉を待った。

「お仕事を依頼したいのですが」

ずりっ 微妙に滑ってしまった。ちょっとどきどきしていた自分が恥ずかしい。
いーち、にーい、さーん よし!

「えー、依頼にもよりますが、今うかがえる内容ですか?」

 エフィルはふるふると頭を振った。そんな簡単な依頼ではないらしい。話を簡単に聞くと、エフィルの姉と自分の髪と眼の色を変えるアイテムを作って欲しいということだった。今は仕事中なので、1週間後に店を二人で訪れるということにし、詳しいことはその時に・・・ということになった。

「はい、では1週間後の午前中に中央広場の私の店で・・・・・・」

 エフィルに挨拶をすると私は次の目的地である鍛冶ギルドへ向かった。

-----鍛冶ギルド-----

「こんにちは~、バートンさんいますかー」

 ギルドの受付に誰もいなかったのでバートンを呼んでみた。

「うぉ~い、ちょっとまってくれぃ」

 どこからかは分からないが返事が返ってきたので、近くにある椅子に座って待つことにした。
暫くすると奥からバートンが歩いてきた。

「おぉ、この間ぶっ倒れた兄ちゃんじゃないか!」

バートンが嬉しそうに駆け寄ってくる。私は軽く挨拶をし、用件に入った。

「こんにちは、今日は石材が鉱石を買いに来ました。ゴーレムを作りたいのですが、何かいい材料ありませんか?」

私の問いにバートンが にやり と笑った。

「さっき良いのが入ったぞぃ。玉鋼という金属でな、遙か東の国から流れてきた物じゃ。500kg程あるぞ」

玉鋼?なんだそりゃ?知らんなぁ。
500kg?いらんなぁ。そんな変な素材のゴーレムいらんし、数を作る気もない。

「ん~、そんな変なのいいですよ。それより2mくらいのゴーレムを2体作りたいので石材の良いのが欲しいんですが」

そう言うとバートンは渋い顔をした。

「ストーンゴーレムか。まぁ、あるにはあるがなぁ。表に見に行くか?」

私の返事を待たずにバートンは歩き出した。遅れないようについて行く。といっても歩幅が違うので、追い抜かないようについて行く。

建物の裏手には様々な石材や鉱石が大量に積まれていた。

「ほれ、いろいろあるぞ」

 大理石、石灰岩、砂岩色々な種類がある。一級品ではあるがどことなく気にくわない。ついでに色々と見せてもらう。
 金属系は基本的に鉱石ではなくインゴットとして置いてある。銅、青銅、鉄、銀、金 と様々な物が積まれている。
しかし、銅と銀、金は在庫量は少ない。それはそうだ。この国の貨幣はそれで出来ているのだから。
 暫く見ていると、私の目はある1つの金属の前で止まった。インゴットの形には成ってなく、むしろ火山弾のように全体がぼこぼことしている原石らしき物だ。
 しかし、美しい金属だった。どれくらいの変換効率があるか分からないが、ゴーレム1体分はあるように見える。その金属の前に止まっていると、バートンがにやにやしながら近づいてきた。

「それ、買うかい?」

 私はバートンの笑いが気になった。変な物を掴まされるのではないかという気持ちが心を支配する。バートンが自分の後ろに隠していた短剣を差し出した。それを引き抜いてみる。
吸い込まれるような美しさだ。普通の鉄とは根本的に違う。
なんというかこう、あー、とにかく言葉に出来ない美しさがそれにはあった。

「バートン、この短剣は?」

 私はバートンに尋ねた。バートンの口から思わぬ返事が返ってきた。

「その目の前の鉄。さっき言った玉鋼ってやつだが、これを5kg使うとこのような短剣になる。まぁ、短剣ではなく短刀というのが正式な名前らしいがな。どうする?買うか?今ならこの短刀をつけて金貨30枚で良いぞ」

1kgいくらだよ!
えーと、金貨30枚で銀貨600枚。銀貨600枚が銅貨・・・・・・60000枚か!
それを500で割って・・・・・・120枚か・・・。
高いわ!
だいたい良質の鉄で1kg銅貨50枚くらいだぞ。
しかも、定食屋の日替わりランチが12000回食えるぞ。
う~ん、考えるなぁ。しかも大きなゴーレムは作れない。せいぜい2m程度のゴーレムか1体か・・・・・・。
 剣を作るにしてもそこまでの技術はないしな。鎧や盾にするには重すぎる。
・・・・・・う~ん、もしかして。

「なぁ、バートン。これ、もしかして売れ残っているんじゃぁないか?」

私の言葉にバートンの顔が微妙に引きつった。思った通り!
やはり売れ残りを処分したかったようだ。ふふふふふ、これで主導権はこちらに移った。

「で、これ、いくらで仕入れた? もしかしてかなりの額じゃあないか?」

バートンの顔は赤くなったり、青くなったりしている。

「ああ!そうじゃよ、そのとうりじゃ! まあ、料金を支払えないやつからぶんどったものじゃがな。こっちも次の支払いがあるから売りたいんじゃ!」

吐き捨てるようにバートンはそっぽを向いた。ギルドも苦労してるんだなぁ。気をつけよう。

「で、なんとかこうてくれんかのぉ」

いや、にじり寄るな。頼む。むさ苦しい。私は躙り寄るバートンから逃げ出した。

「あー、分かった分かった。その値段で買ってやる。そのかわり300kgの良質な鉄をつけてくれよ。それともうひとつ探してもらいたいものがある」

我ながら無茶を言うと思いながら私とバートンは話し合いを始めた。
結局、バートンに32枚の金貨を払い、玉鋼500kgと鉄300kgを買うことになった。それともうひとつ・・・

「ヒヒイロカネという金属を探して欲しい」

 これが私の条件だった。バートンもさすがに唸っていた。オリハルコンなどより遙かに探すのが難しい金属だ。正式には金属ではないのだが・・・・・・。
あれはどちらかというと土の類いになる。
ただ、魔力を込める度合いで無制限に硬くなったり、中途半端に硬くなったり、魔力を帯びた物体になったりする。
要するに魔力に反応する変な物という感じだ。
 私は一度だけ見たことがあった。師匠の家で・・・・・・。
まぁ、あまり良い使い方はされてなかったのでみなまで言うまい。
言ったら殺されるし。

 取りあえず、知り合いすべてに当たってくれると言うことで話は付いた。例のごとく指輪の契約を済ませ、料金を渡す。
バートンは嬉しそうだった。火酒を飲みながら金が払えると歌っていた。
いいのだろうか、仕事中に・・・・・・。

 夕方に家へ運んでくれるように言うと、私は遅い昼食を食べるために町の中心へと戻った。

-----ルールウの店-----  

 中心街に戻った私は、そこら辺の屋台で適当に食事を買って食べた。まだ夕方まで時間があったためルールウの店に寄ることにした。

「こんにちは、ルールウ。景気はどお?」

私の挨拶にルールウは渋い顔をした。

「駄目だね、売れないよ」

そっけない返事が返ってきた。機嫌が悪いらしい。

「なに? なにか悪いこと言ったかなぁ」

私はルールウの顔をじっと見た。よく見るとなかなかの美人だ。20代とは違う美しさがある。身体も出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいて、なかなかセクシーだ。

「こぅら、なにジロジロ見てんの! お金取るよ」

ルールウが笑いながら脅してきた。本気ではないようだ。

「ん~、じゃぁ、お詫びに何か買おうか?」

私は半分冗談で言ってみた。ルールウの目がキランッと光る。

(あ、まず。本気になった)

私は自分の懐具合をそっと確認した。

 ルールウはいろいろな変わった物を出してきた。空飛ぶ絨毯やメデューサの眼球(魔力無し)、ユニコーンの角(癒やし効果なし)など
本気か!という商品がどんどん並んでいった。

「す、ストップ、買えませんよ。そんな高いの・・・・・・」

 私はルールウが嬉しそうに商品を出すのを必死で止めた。今出た商品はすべて、最低でも金貨100枚は下らない。買えるわけがない。
しっかし、どんな伝手持ってんだこの人・・・。

「え~、駄目?」

「駄目じゃ無く、無理です!」

 仕方ないなぁという表情で商品をしまい出す。まぁ、からかっていただけのようだ。ついでに虫干ししたな。

「はぁ~、玉鋼で作った剣でもあればなぁ・・・・・・」

私は先程買った玉鋼のことを考えながら呟いた。

「あるよ」

「はぃ?」

え~、聞き間違いでしょうか?

「じっ、じゃぁヒヒイロカネは?」

期待に胸をときめくかせ、思わず聞いてしまった。

「あ~、あれはさすがにないなぁ。ちょっと前に売っちゃったから・・・・・・」

ってかあったんかっ。どんな店だよ、ここ。

「玉鋼の剣、本当は刀っていうんだけど。それならあるよ。長いやつだけど」

そう言って出してきたのは反り返った、全長170cmくらいの剣だった。青とも緑ともつかない美しい色の鞘に収っている。

「え~っと、・・・・・・いくら?」

私は思わず聞いていた。コレクターの血が疼く。

「そうね~、これ売ってくれた鍛冶屋さんの道具と本、まとめて金貨30枚!」

30・・・・・・枚? 
あぁ、貯金がどんどん減ってゆく。収入ないのに・・・・・・。

 取りあえずすべての道具と、本を見せてもらった。道具はよく分からなかったが、本の中に使い方が書いてある。
30冊近い本は玉鋼の使い方から、付属していた道具の使い方、刀?の打ち方まで書いてある。
そして最後に一冊の本をめくってみた。

「・・・・・・買う」

私は背中に背負ったバッグから金貨を30枚取り出した。

「あら、早速使ってるのね」

 私がここで買ったバッグから金貨を出しているのをみてルールウが嬉しそうに微笑んだ。
きっとそれだけでなく売れたからだ、きっとそうだ。
 お金のやりとりを済ますと私はバッグの中に本を詰めだした。

「ちょっと、結構ぼろぼろよ、それ。そのままいれたら駄目になるよ」

 ルールウが注意するが30冊の本はすべて中に入った。そして買ったばかりの刀や道具も次々と中へ入れてゆく。それらは、背中の大きさくらいしかないバッグに面白いように吸い込まれていった。

「はぁ、なにそれ。どういう仕組み?」

 今度はルールウが目を見開いていた。どう見ても、物理的に不可能なことをしているのだ。

(ふふふ、見たか)
ルールウの驚く姿に私は少しだけ得意になった。

「ちょっとぉ、それどういう仕組みぃ?」

 ルールウの声が猫なで声になっていた。あぅ、なんか違和感ありすぎなんですけど・・・・・・。私は気を取り直して一言。

 「企業秘密です!」

 実際これは物を単純に移動させているだけなのだ。だからそんなに大したことはしていない・・・・・・つもりだ。
とりあえず、色々と聞いてくるルールウをごまかし、届け物が来る時間だと言って店を後にした。

-----自宅-----

 家に帰って先程ルールウの所で買った本や道具を整理していると、骨格と玉鋼、鉄が届いた。
・・・・・・スキュラってこんなにデカかったっけ?それは高さが3m近いスキュラだった。取りあえず裏の工房へ運んでもらう。
高さ的にはなんとか中へ入った。玉鋼は・・・・・・庭に積んでおく。鉄は工房へ運んでもらった。
とりあえず、帰り際にチップとして銀貨を1枚ずつ配り、今後もよろしくと言っておいた。重かっただろうなぁ。

 さて、本日のメインの仕事に掛かりますか。

 まず、魂の石と竜の牙を3つずつ持って来る。魂の石はランクが高いのを選び出す。竜の牙も同じ感じで選ぶのだが(ランクが高い方が良い)、竜の牙はどれが何の竜か分からないので大きいのから3つ持って来た。
 ちなみに竜のランク(神竜、古代竜、老竜、雷竜、火竜、緑竜、金竜、黒竜、銀竜、成竜それと次元竜)神竜と次元竜は神話の話、今一番危険な竜は古代竜。あとは個体別で、対応が面倒なのから並べてみた。

 まず、当面の労働力確保のため、スキュラの骨格標本を魔方陣の上に移動させる。もう一つの魔方陣に魂の石を置く(二番目に質の良い物)
これを融合させる。これで、生前のスキュラの命が魂の石に引き戻される。
 ただの骨格だったスキュラは突然動き出す。こちらを敵として認識したようで、攻撃して来た。ちなみに、まだ魂の石は融合していない。

 バジィ 

 魔方陣に張ってある結界が発動し、スキュラの動きを封じ込める。そこで私は語りかけた。

「こんにちは。久しぶりの自分の身体はどう? もっとも肉は付いてないけど・・・・・・、ここがいい?それとも元の場所に戻る?」

 スキュラは暫く考え込む様子を見せる。ちなみにこの行動、魂の石のランクが関係している。ランクが高いほど魂の復元率が高く、高度な考え方(知能、知識)を持つことが出来る。話すことは出来ないが、もし、文字を知っていたら筆談は出来る。
暫くしてスキュラはこちらに留まることに決めたようだ。

 ちなみに、すべてのゴーレムは所有者の魔力で動いているので、所有者が魔力の供給を切ると破壊される(正確には骨格や鉄に戻るだけ)
魂の石に私の魔力の楔を刻み、融合魔法を掛ける。両方が光り出し、魔方陣が解放される。魂の石は頭骨の裏側に埋め込まれる。
スキュラは久しぶりに動けるので嬉しそうだ。自分の足を動かし、楽しそうにしている。

「スキュラ、取りあえずこっちの魔方陣にあそこの鉄を半分運んで欲しいのだが?」

スキュラはうんうんと頷いて鉄と魔方陣の間に入り流れ作業で鉄を移動させてゆく。

(ありゃっ、予想以上に良い買い物だったかも)

ものの数分で150kgの鉄がすべて魔方陣の上に積み上げられた。
 まず、魔方陣に魔力を流し、鉄のインゴットを液体に変える。液体に変えたからといって魔方陣の外には出ない。
鉄が液体として溜まったら、もう一つの魔方陣に竜の牙を置く。
鉄の方にゴーレムの姿をイメージし、形成してゆく。ある程度出来た段階で、竜の牙と融合させる。
ここで竜の牙は分解され、鉄の中に溶け込んでゆく。
このまま形成を続け、形を完成させる。とりあえず2mくらいのアイアンゴーレムの完成だ。
魂の石を使わなかったのは、鉄には魂がなかったためで、竜の牙を使ったのは生きていた頃の竜の魂を利用したかっただけである。
そしてアイアンゴーレム自体は、使った竜の牙が生前持っていた能力を引き継ぐことになる。
 ちなみにこのゴーレム女性の形をしている。まぁ、そこら辺にあったヴァルキリーの挿絵をイメージして作ったからそうなっただけなのだが・・・・・・。
ゴーレムに邪な心は持たないよ。うん。
 私は、出来上がったアイアンゴーレムとスキュラに外にある玉鋼を中に運び入れるように指示を出した。2体(2人?)はすぐに作業に掛かった。
その間にもう1体、アイアンゴーレムを作成する。

 500kgの玉鋼はすべて作業所の中に運び込まれた。ちなみに大きい塊はスキュラが運び、小さい物はアイアンゴーレムが運んだようだ。
 スキュラはまだ身体(骨)の感覚になれていないらしく、細かな作業が出来ないらしい(筆談が出来た)
 アイアンゴーレムは雷老竜だったようで、人間に変化する感覚が残っていたため、すぐに身体には慣れたらしい(こちらも筆談可能だった)
 もう1体のアイアンゴーレムは火竜が元だったようで、簡単な筆談程度しか出来ない。(やっぱり、姿はヴァルキリー・・・・・・)
 とりあえず、本日の作業は終わったので、3体のゴーレムには適当にくつろぐように言って作業所を後にする。
(外出するなと暴れるなとはきちんと言ってある)

こうして、カーソンの作業所に3体の労働力が増えた。
しおりを挟む

処理中です...