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元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ立つ

結果を確認し森の探索を開始しましょう

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 「さて、湖に沈めたものを回収しようか」

 久々に身体を暖め、温かい食事を食べ終えた私は火の始末を終えて湖へと向かう。
当然先程火おこしをした道具類は腕輪の中だ。
ついでに灰も入れておく。
残念ながら焚火はそのままでは腕輪に入らなかったので、バラバラにして入れた。

 昨日様々な物を沈めた場所に私は立つ。
湖の中に腕を沈め、掴みやすい物から取り出してゆく。

 当然一品ごとに鑑定を使う。 
気分が悪くなるのは諦め、出来るだけ範囲が広がらないように集中する。


 鑑定

 【木と石と蔦で出来たすきモドキ(中途半端に濃縮魔力水がしみ込んだマジックアイテム?】

 木と石と蔦で出来た鋤モドキ。
 濃縮魔力水に漬け込まれた道具。
 木と蔦の部分には十分に魔力が吸い込まれ強靭になっているが、石の部分にはほとんど魔力が吸い込まれていない。
中途半端なマジックアイテム?
 

 ……は?
 マジックアイテムになっていないのなら分かるんだけれどもさ、【マジックアイテム?】ってなにさ?
期待はしていなかった、キタイハシテイナカッタけどさ。
中途半端にマジックアイテム?というのが納得できないなあ。
 それに石のナイフは【濃縮魔力水浸透中】だったはず。
中途半端とはどういうことだろう。
まあ次を出してみてからだな。


 とりあえず鋤モドキを傍に置き、今度は石斧モドキを取り出す。


 鑑定

 【木と石と蔦で出来た石斧モドキ(中途半端に濃縮魔力水がしみ込んだマジックアイテム?】

 木と石と蔦で出来た石斧モドキ。
 濃縮魔力水に漬け込まれた道具。
 木と蔦の部分には十分に魔力が吸い込まれ強靭になっているが、石の部分にはほとんど魔力が吸い込まれていない。
中途半端なマジックアイテム?


 ……またか。
 しかし同じ共通点があるんだよな。
【石の部分にはほとんど魔力が吸い込まれていない】という共通点が。
因みにもう1本の石斧モドキも全く同じ結果だった。
何となく分かってきた。

 次に梯子を取り出す。
正直水を吸っているのでかなり重いと思われたがすんなりと引き上げることが出来た。


 鑑定

 【木と蔦で出来た梯子(高品質マジックアイテム)100%】

 木と蔦で出来た梯子。
 濃縮魔力水がしみ込んで出来たマジックアイテム。
 耐久性が格段に上昇しており、500キロの物が乗っても壊れない。
 また弱点でもある火に対しても耐性が出来ている。


 マジックアイテム、キターーーーーーっ!

 てか効果高っ。
 普通の木と蔦で出来た梯子では恐らく最高の物だろう。
少なくとも地球上では無かったはず。
もっともこの異世界ではそれ以上の物があるかもしれないが。

 しかしこれである程度の予測は出来た。
これを確信に変えるため最後に残った石のナイフを取り出す必要がある。
まあ、必要が無くても取り出すんだけれどね。


 鑑定

 【石のナイフ(高品質マジックアイテム)100%】
 
 普通の石に濃縮魔力水がしみ込んで出来た魔法剣。
 切れ味はそこらへんの鋼鉄の剣よりも上。
 また耐久性が飛躍的に上昇している。
 

 なるほどね。
石のナイフと石斧、鋤の違いか。
研いだか研いでないかだよな。
つまり研いだ時に穴が開いたか何かで水がしみ込んだと。
中途半端になったのは木や蔦は水がしみ込みやすかったのでその部分のみマジックアイテムになった。
だから中途半端……か。
しかし、研いだらしみ込みやすくなるとか……ねぇ。

 はぁ、異世界って地球の常識通じないのな。
ま、一緒なわけはないか。
しかしこれだと長年妄想してきた【異世界とはこういうものだ】という考えと地球の常識から離れないと拙いような気がする。
今までの常識に囚われていたら死を招く可能性もあると……。
それ以前にチャンスすら失いかねない、いろいろと。

 早くこの世界の常識を覚えなければ。
まずはここから出て人里へ行くのが先か、な?


 私は未完成の【マジックアイテム?】に細工をしてもう一度湖に沈めた。
細工と言っても1時間ほど石を研いでから湖に沈めただけだが。

 当然沈める前に鑑定をして、湖に沈める前の石のナイフと同じ鑑定結果が出たのを確認してから沈めてある。


 全てを終えた後、鑑定をしたマジックアイテムで気になったことを少し考えた。

 【石のナイフ(高品質マジックアイテム)100%】
 【木と蔦の梯子(高品質マジックアイテム)100%】

 この2つの最後、100%という数字だ。

 正直これが何を意味するのかが正確には分からない。
いや、ある程度は予測はつくがこれに関しては時間をかけて検証しようと思う。
何しろこれまでの常識が通じない世界だ。
慎重に行動しても損はないだろう。

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 湖に未完成のもの?を沈め、梯子を腕輪に収納し、石のナイフをベルトに差して私はもう一つやることを実行する。
 時刻は15時を過ぎているのでそれほど時間は掛けることが出来ない。

 拠点に出来そうな場所を探す。
特に岩場。

 正直今のままでは身体が持たないし、火を使うところが限られる。
今日成功した火熾し。
そしてその火を常に維持しておきたい自分がいる。
 
 毎回火を熾すのがメンドクサイだけなんだけど。

 という訳で私は森の中を探索し始めることにする。
この湖に来た時に湖の周囲に沿って探索をした。
今回は湖から離れた場所を探索する。
この湖にたどり着いた道は最後に回す。
もう一度見るのは見落としが無いかどうかを確認する為。
何しろあの時は水を求めて必死だった。
周囲などよく覚えていない。

 私はペットボトル2本に濃縮魔力水を詰め探索へと出かける。


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 まずはラピスの木の群生地から奥へと入ってゆく。
理由としては単純で見通しが比較的良いからだ。
枝のほとんどが頭より高い位置にあるうえに下草が少なく歩きやすいからだ。
 一応この湖にたどり着くまで使っていた棒を持って足元の確保は忘れない。
物を拾うのは当たり前だ。

 ほんの1時間程度でラピスの木の群生を踏破する。
そこから先は森だ。
特に代わり映えの無い森をゆっくりと進む。

 少し歩くと蔦と雑誌を割いたものを出し、木に括りつける。
それを何度も繰り返し1時間。

 時刻は17時近くになった。
当然日が沈み始めるので辺りは暗くなる。

 私は少しだけ速度を上げ、昨日寝た木のある場所へと戻るのであった。
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