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元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く

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 『という訳です』

 謎の声の説明を聞き終わった私は思わず溜息を吐いた。
 なんか溜息が多いな、二人とも。

 どうやらこの謎の声は三次元より遥か高次元の生命体らしい。
私たちの住んでいた宇宙で生命の管理をし、徐々に生命の徳を上げ、高位の存在へとかくを上げるという作業をしているらしい。
う~ん、テンプレ。

 ちなみに何故そのようなことをしているのかを聞いたら【それは分からない】という答えが返ってきた。
どうやら謎の声高位の存在も【そうしないといけない】という感覚でやっているということだった。

 では、何故死んだはずの私がこのような状況になっているかというと、前に言われた通り、地球の人類、文明を進化させるために送り込んだ女の子を助けたお礼だということだ。

 「で、これから私はどうすれば良いのですか?」

 そう、60歳という年齢で生き返らせてもらったのだが、それで生き返らせてもらってもなあという感覚が生まれていた。
何しろ人生が行き詰まっていたので、何某なにがしかのお礼をもらって地球に戻してもらっても、い先短い自分にはあまり良いことはないのだ。
 特に身内がいるわけでもなく、今現在結婚もしていない身としては自分の書いたラノベのように剣と魔法の異世界へと転生させてくれたほうが良い。
そのように考えていると高位の存在が話しかけてきた。

 『ラノベ? 剣? 魔法? 今までの地球ではなく、そのような世界へ行きたいのですか?』

高位の存在は暫く静かになった。
何も言っていないんだけどなぁ。



 「痛ったいわ!」

 突然私の頭を、これまでに経験したことの無いような痛みが襲う。
 あえて近い痛みは足の小指をぶつけた痛みと男の急所を蹴り上げられた時の痛み、そして尿路結石にょうろけっせきの痛みを足したような痛みだ。
その痛みは永遠のような時間続き、私は意識を手放した。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 『……気が付きましたか?』

 思わず飛び起きた私に高位の存在が声を掛けてきた。若干申し訳なさそうだ。
私は慌てて頭を振って頭を触る。
一瞬、死ぬ前に殴られたことの後遺症が出たのかと思ったのだ。

 『ごめんなさい。あなたの記憶を覗かせていただきました』


……
…………
………………



 「あんたかっ!」

 私は思わず叫んでいた。
 だって痛かったんだ。思わず叫びたくもなるわ。

 『ご、ごめんなさい!!!』

 慌てた様子で詫びを入れてくる高位の存在。
 私はその様子に思わず笑ってしまった。
何しろ人を生き返らせるほどの能力を持った存在が慌てた様子で謝ってくるのだ。
これもラノベに出てくるようなテンプレの神様みたいだったのでつい。

 ちなみに高位の存在は見えてはいない。
但し、その場所にいるという存在感が半端ない。
詫びを入れたのが手に取るように分かるほどだ。



 『と、とりあえず、眠っている間にあなたの記憶に検索を掛けてみました。
結論から言えばそのような世界はあります。
別宇宙ですけれど……』

 ふむ、やはり異世界は存在するのか。
別宇宙?
無問題っ!


 『ちょうどブラックホールの中で一つ不安定になっている場所がありますので、そこをつつけば別世界へ飛ばせますよ』
 
 私はその言葉に頭の中で小躍りしていた。
何しろ今まで自分の希望、願望で書いてきた世界に行けるのだ。
思わず踊り狂ってしまった、脳内で……。

 『はぁ、送るのは構わないのですが戻ることはほぼ不可能ですよ? 
本当に物理法則や遺伝子すら違う世界に行きたいのですか?
私には分かりませんね』

 ふん、浪漫ろまんだ。

 『今の世界で生き返らせて貰うくらいでしたら異世界に行かせてほしいです』

 私の言葉に高位の存在は暫く黙った。  


 『……まあ、良いでしょう。
ではそちらの世界に行くにはあなたの遺伝子をかなりいじらなくてはいけません。
また暫く眠ってもらうことになりますが、よろしいですか?』

 私は大きく頷いた。
 異世界に行くにしろ年齢的な問題もある。
 身体に色々と気に入らないこともあった。
 テンプレ的にはこの老体を若返らせ、細マッチョにして、顔の造形ぞうけいを変えてもらえるはずだ。
当然、異世界仕様に様々なところを変えてくれるだろう。
そう願望が頭を駆け巡っていた。

 『言っておきますけど、外見は多少はいじることは出来ますが基本的には若返らせる程度ですよ。中身はかなり変わりますが……』

 …… orz 

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