上 下
2 / 32
元売れっ子?ラノベ作家、異世界へ行く

謎生命体?の会いました

しおりを挟む
 「ん、ここは……」

 どれくらい経ったのだろうか。
 私は目を覚ました。
 感覚がおかしい。
 慌てて全身の筋肉の動きを確認する。
が、感覚がない。

 『まだ動かないでください』

 中性的な声が頭に響く。
私はその声に返事をしようとしたが声は出なかった。

 『上川涼介かみかわりょうすけさん、あなたはすでに死んでいます。
 今はあなたの生体エネルギーを補充している段階なので身体は動きません。
あ、思考は出来ますので考えることで会話らしきものは出来ます』

 私は疲れていたのでとりあえず動かず考えずジッとしていることにした。

……
…………
………………

 『……何も考えないのですか?』


 先程の声が話しかけてきた。

 「疲れているので……」

 つい返事をしてしまった。

……
…………
………………

 『状況を説明いたしましょうか?』

 「疲れているので……」

 『………』

……
…………
………………
……………………

 『先程、と言ってもあなたは死んでから1年・・以上経っています。
あなたは銀行強盗に頭を殴られ死んでしまいました』

……
…………
………………

 『……さて、死んだあなたが何故このような状況になっているかというと……』

 何事か説明を始めやがりました。
私はその言葉に反応を示さず、黙って聞いていることにした。

 『あなたが突き飛ばしてくれた女の子ですが、私たちが地球に送り込んだ進化のたねです。その女の子が死んでしまうと、人類文明の進化は数百年遅れることになったのです』

 少しドヤっという感じの言葉に私は盛大に脳内で溜息を吐いた。

『な、なんですか? そこは溜息を吐くところですか?』

 謎の声の疑問に私は思わず言い返した。

 「知りませんよ、そんなこと。
それに溜息を吐いたのは誰とも知れない誰かさんからいきなり話しかけられているからですよ。
私は疲れていると言ったはずですがね。
出来たら疲れが取れてからにしてほしいのですがね」
 
 私の、感情に任せて放った言葉に、謎の声は沈黙した。

 悪いけれど本当に疲れてるんだよなぁ。

 私は静かになったのを良いことに思考を放棄ほうきすることにした。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 どれくらい経ったのか、私は思考を再開した。
 突然目の前に光が差し、思わずを閉じた。

 目?

 死んだはずの私が何故まぶしいと感じ、思わず目を閉じたのか?
私は恐る恐る目を開いた。

 一応話は聞いていたので状況はある程度理解している。

 目を開いてみると辺り一帯には緑が生い茂り、花が咲き乱れる世界。
清浄な空気がそこら中を覆っている。
大きく息を吸い込むと清らかな空気が肺の中を駆け巡った。
地球の空気よりもはるかに美味しい。

 しかし違和感もある。
 何しろ昼間のように明るく景色も見えるのだが、何故か空は漆黒しっこくの闇なのだ。
 所々星のようなものもあり、星雲のようなものも見え、その闇を美しく彩っている。
まあ、考えても仕方がないので私は自分の身体の状態を確認することにした。

腕。
使い古された私の腕だ。

腹。
まあ、旨いもの食べて美味いものも飲んだからなぁ。(贅沢をしたわけではない【強調!】)
少しだけ出っ張った懐かしい腹が見える。

足。
相変わらず短いな。

頭。
絶滅寸前だ……。

 どうやら自分の身体ではあるらしい。
 何故肉体があるのかは分からないが、死んだ後の世界に肉体って必要なのか? な?
まあ、死ぬことなんて初めてのことだから、このようなものかもしれないが。




 『ああら、やっとお目覚めですか?』

 私が自分の身体の状況を確認していると不機嫌そうな声が頭の中に響いてきた。
少し前に私に話しかけてきた声だ。
とりあえず……、謝っておくかな。
なんとなく。
このような状況だとラノベのテンプレならば神様や上位の存在の可能性が高いしね。

 「あ、先程は申し訳ありませんでした。
なにぶん疲れていたもので失礼な態度をとってしまいました」

私の謝罪の言葉にそれ・・は溜息をついた。

 『……まあ、良いでしょう。
さて、もう一度今の状況を聞きますか?』

 不貞腐れたような謎の声の言葉に私は【ぜひお願いいたします】と思わず頭を下げたていた。
しおりを挟む

処理中です...