呟き

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安綱(坂上田村麻呂)完結

安綱-6

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 山の麓、元々陣を敷いていた場所に戻った。報告を聞くと特に変わったことは無かったと言うことだ。田村麻呂は全ての部隊長を集め今までの経緯を説明する。一瞬、何故その場で討たなかったのかと避難めいた言葉も上がったが、悪黒王から鈴鹿御前を離反させたと伝えると皆が黙った。それほど、最初の夜討ちの刻の衝撃が強かったのだろう。

 「それで、だ。相手は五千程になると言うことだがこちらの戦力の報告を頼む」
 
 田村麻呂も一応把握はしているが今現在の戦える数を把握しておく必要があった。都に援軍を求めても間に合わないからだ。すぐに報告が上がる。

 「こちらは山に向かわれる前に把握している数が二千八百です。これは街道に配置したり山の周囲を警戒している部隊全てを合わせた数です。それと田村麻呂様が連れて行った五百が全てになります」

 五百のうち死者は五十余名。合計で三千二百五十程が戦える数になる。およそ五千対三千。微妙な数値だ。陣地を使わず平原での争いという約定を結んでいるのでかなり難しい。田村麻呂は各兵種の数を確認する。戻ってきた兵はすべて元の兵種に戻し済みだ。

 「まず槍隊が千二百、剣隊が千五百、弓隊が四百五十、騎馬が七十、以上が今の全戦力になります」

 田村麻呂は思案する。やはり弓隊の損害が多い。半数近くが最初の夜討ちで討たれたことになる。当然動けない者の中にも様々な兵種の者達がいる。この者達は後送して安全圏まで避難させる必要があった。
 懸念材料がもう一つある。それは鈴鹿御前の配下で山を降りてきた者達だ。彼らは降りてすぐに散ると思っていたが、この宿営地から五里ほどの距離に集団として残っている。数は二百以下だし、戦闘に出られる者は百より遙かに下だ。それでもあの夜討ちの力を考えると無視は出来ない。その対応のために三百は戦力を残しておく必要があるのだ。
 壊滅させるという意見も出たが、即座に却下した。基本的に田村麻呂は降伏した相手を受け入れることにしている。それは田村麻呂の信条だ。逸る部下を一喝して押さえ込む。

 「それで田村麻呂様。相手の数は正確に五千なのでしょうか?」
 
 次の話に切り替えた部隊長の一人が聞いてくる。これは正直田村麻呂にも分からない。鈴鹿御前からの情報だからだ。それに悪黒王が勝算が無い戦いを挑んでくるとは思えない。そのために山戦の者を悪黒王の配下が動く度に貼り付けてある。そして鈴鹿御前との連絡役も森の中に潜ませてあった。

 「うむ、そこに関しては分からぬ。ただし万に届くことは無いだろう」
 
 万という数を聞いて全員に緊張が走る。五千対三千なら戦い方でまだ勝てる。しかし万対三千は絶望的だ。近くの荘園などに援軍を頼んでもそれほどの数にはならない。第一、これはあくまでも野党の討伐だ。戦力の追加は認められないだろうし田村麻呂の評価にも関わる。田村麻呂はその評価という所は気にしていないのだが配下達は相当気にしていた。都では足の引っ張り合いが多い。引き摺られる弱みを見せては駄目なのだ。

 「とりあえず陣形を考えよう。基本的には全面に騎馬を全て並べる。その後ろに槍兵で方陣を組む。方陣の中央に弓兵を配置。剣兵は二隊に分けて槍兵の左右に。儂と護衛兵は弓兵の更に内側に入る。場合によっては最前線に出ることにする」

 そこまでは全員が頷いて了承する。
 
 「後方の陣地には負傷兵で比較的軽傷の者と百の兵を騎馬兵を覗いて均等に配備。鈴鹿御前の隊には動いた報告が入り次第方陣の後方を崩し、三百を足止めに向かわせる。このような対応を考えておるがどうかのぉ」

 田村麻呂の言葉に方陣を崩すのは危険だという意見が上がる。その者の意見としては最初から三百を引いた部隊で方陣を造り、三百は遊撃隊として方陣の後方にもう一つの方陣を組んで待機。正面の戦況次第では即、相手側面から錐陣で突撃という方針を打ち出した。これには田村麻呂も唸る。

 「そうじゃな。方陣を崩すのは下策かのぉ。よし、三百の方陣の指揮はお主に任せる。今は五十人隊の部隊長じゃな。今から位を三つ上げる。励めよ。しかしあくまでもこの戦場での位じゃ。勝って都に戻ったら正式に位を上げる」

 そう言って全員に視線を向ける。田村麻呂は唖然とした表情を浮かべる先程の部隊長を指さして大声を上げた。
 
 「皆も励め! 勝てば恩賞を五倍にする。勝って生き残れ! 活躍した者には位も上がるように申請しよう!」

 陣幕にいた全員から【おう!!!】という声が上がり各部隊は訓練に入るのであった。
 
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 「で、周辺の者達の集まりはどうだ?」
 
 悪黒王は次々と戻ってくる配下達に周囲の村の者達が協力をしてくれるかの確認をしていた。村というのは普通の農村では無く、悪黒王のような盗賊のような集団のことだ。

 「はぁ、それが中々首を縦に振りません。やはり坂上田村麻呂という銘が効いているようです。それと鈴鹿御前様のことが・・・・・・漏れています」
 
 盗賊達の情報網は速い。そして以外とあっさり秘匿している情報も漏れる。悪黒王はこの辺りでも最大の勢力を誇っていた。特に武に関しては鈴鹿御前に敵う者はいない。悪黒王も決して弱いわけでは無い。寧ろ強者に近い。それでも鈴鹿御前の力は圧倒的だった。

 「ええぃ、倉の中から銭を一袋ずつ持って行け。それで駄目なら終わった後滅ぼしてくれるわ!」
 
 この近辺には大小併せて百以上の盗賊がいる。総勢五千はかき集められるはずだ。もっとも最大勢力であった悪黒王のところが壊滅状態で各地から呼び戻した兵力でも八百が良いところ。周辺の盗賊達が協力する利益は少ない。悪黒王は今まで散々世話をしてきた者達にそっぽを向かれたことに腹を立てていた。

 「今のところ半分の五十は兵を出してくれましたがそれでも二千程です。それに質もあまり良くありません」

 集まってきたのは食い詰めた小集団といくつかの有力な盗賊達で、後は盗賊とも呼ばない程の農民に毛が生えたような者ばかりだ。その者達は鍬や鋤などを抱えている。幸いなことに武器はあるのでそれを与え攻撃力だけは上げることが出来る。後は喰わせ、残りの日を訓練に当てるだけだ。

 (最悪逃げを考えねばならぬか・・・・・・。鈴鹿御前が動けばまだ何とかなるが、力で言うことを効かせることは出来ないからな・・・・・・)

 ここで悪黒王は鈴鹿御前の配下を野に下らせたことを後悔していた。その者達を人質状態にして鈴鹿御前を戦わせればまだ勝機はあっただろう。そして他の村の連中も馳せ参じたはずだ。

 (・・・・・・そうか、夜襲という手もある。五昼夜を律儀に守る必要は無いのだ。約束の前日に夜襲を・・・・・・。そうだ、それで行こう)

 悪黒王は腹を決め、とりあえず集まった者達への猛訓練を始めるのであった。
 
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 悪黒王と田村麻呂が兵を引いて二日目の夜。鈴鹿御前は籠もった倉の中で文を書いていた。



 『坂上田村麻呂様
   悪黒王の下へは現在二千程が集まっております。予想以上に兵を集めるのに
  苦労しているようです。ただ急に夜間に訓練を始めました
  これは夜討ちをかける訓練だと思われます。どうやら約束の日を違えるつもり
  のようです
  動きがあれば矢文を放ちますのでお気を付け下さいませ
  
   それとこのようなお願いを、このような時にするのは憚られるのですが、こ
  の戦が終わり生きておりましたら田村麻呂様のお側へお仕えさせていただきと
  うございます
  よろしくご検討いただければ嬉しい限りでございます             
                               鈴鹿   』



 鈴鹿御前は文を書き終えた後、蔵の床下に隠してあった弓を取り出す。矢に文を括り付けゆっくりと窓の外へ狙いを定める。一町先に田村麻呂の配下を置いておくという情報を別れ際に聴いていた鈴鹿御前は、力を調整しながら矢を放つ。文付きの矢は弧を描いて暗闇の森の中へと消えていった。
 矢を放ち終えた鈴鹿御前は蔵の中で座り込み顕明連を鞘から抜く。大通連と小通連の間ほどの長さの大刀は窓からの月明かりで艶めかしい光を発していた。

 「美しい・・・・・・。わたくしもこう在りたいものです・・・・・・」
 
 顕明連を見つめる鈴鹿御前は正直焦っていた。田村麻呂が攻めてくる直前にこの顕明連が輝き、三千大千世界から文殊菩薩と普賢菩薩が現れたのだ。そして二人の菩薩は鈴鹿御前に絶望を告げた。それは鈴鹿御前が生きていられるのは二十五まで、後五年しかないと言うことだ。
 何故かと問うても天に定められた命だとしか答えては貰えなかった。元々悪黒王とは持ちつ持たれつで流れで夫婦めおととなっただけだ。それなりに楽しかったがここ暫くは関係が良くなかった。
 そこに坂上田村麻呂という人物に出会い、菩薩からのお告げが下ったのだ。鈴鹿御前は攻めてきた田村麻呂と再度剣合わせをして自らが惹かれている、いや、恋をしていることに気づかされたのだ。語り合えた剣合わせ。それを邪魔した悪黒王。そしてその場で全てを否定された自分。
 鈴鹿御前はそこでもう一度自分の好きに生きようと思った。たとえ都で処刑されてもだ。先程の矢文で自分の気持ちは伝わるはずだ。そして会えたら真正面から剣合わせで語らず、自らの口から出る言葉で恋を語ろうと決心していた。
 剣を置く。そしてもし許されるのであれば田村麻呂の側で最後の時までを暮らそう。この顕明連のように美しい心で、時間が許せば田村麻呂の子を産みたいとまで思っていた。
 月明かりの中、顕明連を見つめる鈴鹿御前の目からは自然と涙が流れ出ていた。悲しいわけでは無い。絶望の中でも最後に縋ることができる可能性があることを嬉しく想っての涙だ。
 蔵の外から聞こえる訓練の音など耳にも届かず、鈴鹿御前は艶めかしい光を放つ顕明連を見つめ、不確定な未来を夢見続けるのであった。

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 「う~む。これはまた・・・・・・」
 
 田村麻呂の元に山戦の者から文が届いていた。ゆらゆらと美しい文字で書かれた文を眺めながら田村麻呂は悩んでいた。側近が何があったのか聞いてくる。田村麻呂は何とも言えない表情を浮かべ先の用件だけを伝えた。

 「悪黒王が夜討ちをかけてくる可能性があるようだ」 
 
 田村麻呂は文をそっと甲冑の隙間へ仕舞い、側近に伝えた。その言葉に全員の顔に緊張が走る。山と陣地の間の地形はほぼ把握できていた。後は前に出る方陣と後ろに控えている方陣の連携の確認だけだ。ただそれが上手くいっていない。先日大抜擢された部隊長はいきなりの大部隊の指揮に手間取っていた。

 「そうなりますと先日昇格させた部隊長では心許ないですな。すぐにでも交代させましょう」
 
 側近の一人が指揮官の交代を具申する。しかしそれは一度煽った士気を大幅に下落させるだろう悪手だ。田村麻呂もそれが分かっているので交代はしないつもりだった。それにもう一つの情報が正しければ交代させる必要も無い。

 「もう一つ情報がある。相手はこの二昼夜で二千程しか集まっていないようだ。しかも今訓練をしているそうだ」
 
 田村麻呂のもう一つの情報に側近達は微妙な表情を作る。
 
 「それはこの近隣全ての盗賊が一点に集まらないということでしょうか? それとも民を戦力にしたということでしょうか?」
 
 側近達が気にしているのは挟撃や回り込みだろう。にわか仕込みの民が戦力にならないのは分かっているからだ。問題は挟撃や回り込みで真正面から五千と当たるのと、不意に横から出て来られるのでは戦闘のやり方が根本的に変わる。たとえ頑強な方陣を組んでいても、倍近い戦力が二つに分かれ挟んできたら手に負えない。方陣を戦の最中に別けるのは最悪の手段だ。

 「まあ、鈴鹿御前の見立てが五千という数だったからのぅ。悪黒王の求心力が落ちていると捉えるのが正解じゃな」

 実際、悪黒王の拠点から盗賊達への使者には全て山戦の者がついて回っている。そしてある程度の情報は得ていた。
 
 【動かない勢力が多い】
 
 これが山戦の情報からもたらされた結論だった。これは田村麻呂と山戦の頭、側近の中でも副将しか知らないことだ。それはまだ言わない。緊張の糸が切れては戦えないからだ。

 「とにかく後陣の方陣の訓練を急げ。それと日が沈む前に兵達には食事を取らせ、そのまま休息に入らせろ。それと歩哨の数を倍に増やせすのじゃ」

 田村麻呂はそれまで言うと解散と言って側近達を外へ出す。そして副将に残るように言い護衛にも外へ出るように伝えた。



 「どうなさいました田村麻呂様。何か問題でも?」
 
 副将は何があったのかと真剣な表情になる。田村麻呂は甲冑の隙間から先程の文を取り出し、一瞬躊躇った後、頭を掻きながら副将に見せた。文を読み、最後に副将は大きな溜息をついた。そっと文を返す。田村麻呂はもう一度甲冑の隙間に文をしまい込んだ。
 
 「で、どうなさるおつもりでしょうか?」
 
 副将はにやりと笑っていた。田村麻呂は憮然とした顔になる。
 
 「実はのぅ、儂も惚れたのじゃよ・・・・・・」
 
 顔を真っ赤に染めた田村麻呂を見ながら副将は声を立てずに笑った。
 
 「朝廷のことをお考えなのでしょう? 問題は無いのではありませんか? ここのところ田村麻呂様は休まれていません。 悪黒王を討った後はこの地の平定と称してこのままの部隊で各地の盗賊を潰して過ごせば良いではありませんか。ついでにあの者の配下もこちらに組み込めばこの部隊は更に強くなります。二~三年掛けてみるのも良いかと思いますが? それにあなた様はまだ独り身。問題も無いでしょう」

 副将はいたずらっぽい笑みを浮かべながら意見を述べる。田村麻呂は【ふん】と鼻から息を吐いた。

 「他が納得するかのぅ」
 
 田村麻呂は自らが率いる部隊のことを考えていた。確かに自分は鈴鹿御前に惚れている。お互いに思い合っているということはこの文で分かった。後は部隊の者がどう取るかだ。指揮官が戦最中に敵の将と恋仲になったなど何を言われるか判ったものでは無い。

 「大丈夫でしょう。世の中そのようなものですよ」
 
 副将は【あまり悩まないで良いと思います】と言って外へと出て行った。後に残った田村麻呂は上を見上げて大きく息を吐くのであった・・・・・・。
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