113 / 135
第3章4部
還る霊魔
しおりを挟む
「シトリー。お前、今回の作戦は不参加だったろう、というか・・・謹慎処分じゃなかったっけ?
勝手に柱石五妖魔であるイカゲを動かして、結果、あいつらに殺されたってことでの責任で。」
「イカゲは元々私の霊魔よ。自分の霊魔を使って何が悪いのよ。」
「あの方の前でもそんな減らず口が叩けるのかよ。それでゼロがどんな目に遭ったか知らないわけじゃないだろ?」
「っ・・・!でも、仕方ないじゃない・・・。もとはと言えば、ゼロが全然、相手に、してくれないから・・・。」
「イカゲのやつが色々な情報をゲロっちまったおかげで、しわ寄せがこっちにも来てんだよ。」
「あいつらを皆殺しに出来なかったのはあんたの実力でしょ、ファルナ!責任転嫁しないでよ。」
「ふん、これから殺すんだよ。特にアイツだけは許さねー。」
「あいつって・・・アシェリナ・ブライドリックのこと?っていうか、あんたあの双子の霊魔は?」
鋭い殺気が肌を刺す。いつもと違うファルナの様子にシトリーはいち早く気付いたようだ。
「・・・そう。あの子たち殺られちゃったの・・・。じゃあ、私と一緒ね。」
「・・・一緒にすんじゃねーよ。」
「そうね・・・あんたと傷の舐め合いなんて願い下げよ。」
「魔集石を支給されてねーのに戦えるのかよ。俺のは貸さねーぞ。」
「要らないわよ、あんなもの。私はあの女をこの手で殺さなきゃ気が済まないのよ。
あんたこそ、霊魔無しであの英雄とか言われている奴と戦えるの?」
「はっ!余計なお世話だよ。策はある。利用されっぱなしは癪に障るからな。」
「ふぅん。くれぐれもこっちの邪魔はしないでよ。」
「こっちの台詞だよ。」
2人は互いの標的に向かって同時に飛び出す。ファルナの剣をアシェリナは真正面から受け止めた。
「土精霊で硬化した剣か。すべてのエレメントを使えるなんて、その魔集石ってやつは随分便利だなっ!」
反動を利用して押し返したはずなのに、ファルナはそれを容易く薙ぎ払った。
(こいつ、力が・・・!?)
「今までの俺と同じだと思わないでほしいね。結界の中には限られた塵幼精しか無かったけど、ここには無限の原子があるんだ。」
そう言うとファルナは魔集石を振り上げた。
細かく震える粒子が集まり、石は少しずつ鮮やかさを増していく。
「魔法力の器という制限があるお前たちと比べてこっちは無限なんだよ。1つのエレメントしか使えないくせにエラソーにするんじゃねーよ!」
ファルナは鋭い風の鎌を振り下ろす。頭上で受け止めたアシェリナは短く息を吐きだした。
「ALL Element 風精霊」
詠唱を口に乗せただけで空気が大きくうねる。それはまるで大地が息吹いているようだった。
「颶風」
重い空気が一瞬で黒く渦巻く。
水精霊の上級属性魔法が放たれたと錯覚するほどの冷たい空気を吸い込んだファルナは思わず膝をついた。
「な、なんだ・・・体が・・・重い・・・」
顔を上げることができない。まるで肺が水に浸かったかのように呼吸がすることができないのだ。
「オレの風を吸い込んだな。」
「くっ・・・!」
「すぐに息が止まる。てめーは終わりだよ。」
そう言うとアシェリナは足早にその場を後にした。
残されたファルナは必死に呼吸をしようと首に爪を喰い込ませた。
(うそだろ・・・っ、一瞬で・・・!?これがあいつの魔法・・・英雄の実力というのかよっ・・・!)
脳裏に蘇ったのは2人の笑顔だ。
「・・・あ・・・ゃ・・・ふ・・・み・・・!」
このままでは済ませるわけにはいかせない。あの子たちは自分に魂を委ね霊魔になったのだ。
震える手の中でカチャリと石が鳴った。
(は、速いっ・・・・!!)
シトリーの炎はイカゲ以上の火力と熱量だった。
長身でしなやなか躯体から浴びせられる攻撃にセリカは手も足も出せずにいる。
反撃に転じようとも、すぐに姿を眩まされ予期しない場所からカウンターを受けるのだ
「影が多いっ・・・!」
イカゲは影を移動していた。ならば周囲の影に気を配ればよいが、瓦礫と化した建造物は現場に多くの影を造り出していた。
思考を阻止するように流れる攻撃は、確実にセリカの体力を削っていく。
その時だった。巨大なつむじ風がシトリーを空へ巻き上げたのだ。
「アシェリナ――!?」
「なにをちんたらとやっているんだ。」
「あいつは影に隠れたり移動したりするんだ。だから攻撃が――」
「ならばこうすればいいじゃねーかよっ、っと!」
そう言うと、アシェリナはさらにセリカを空へ舞い上げた。
「わっ――!ちょ、なにを――!」
「影が厄介ならフィールドを空に移せばいいだろう。空に影はねー。」
「ま、まて!私は風精霊は使えな――」
「じゃあ、てめーのエレメントで空中戦にもっていけ。」
無茶なことを、とセリカは瞬時に足場に氷を造り出す。
戦闘における瞬時判断には自信があった。それはあのヴァースキと幾度と戦ってきた経験から培われたものだろう。
氷を蹴りシトリーに太刀を浴びせると、再び氷の足場に着地した。
「ほぅ、やっぱりおもしろいな、あいつ。」
「ぐっ――!!ちょっと、ファルナはどうしたのよっ!?」
「オレがここにいるのが答えだよ。」
「まさか・・・!あいつ、もうやられたのっ――!?」
「とっとと片付けるぞ。合わせろセリカ!」
「・・・へ?」
両側からの攻撃を狙ったアシェリナの攻撃はしかし空振りに終わる。セリカが反応できなかったからだ。
「なっ――!合わせろって言ったろうが、このボケがっ!」
「き、急に言われても動けるわけがないだろうっ!」
「あぁんっ!?共闘の経験がねーのかよ!」
「ない。戦闘はいつも1人だった。」
「ちっ・・・!ミトラに教育課程を見直しさせねーと。」
「アシェリナは休んででいいぞ。ここは私がやる。」
「は?なにを言っている。2人でやった方が早いだろうが。」
「さっきから早く終わらせようとしているのはその顔色の悪さが理由だろう?」
「!」
「少しずつ呼吸が早くなっている。無理はしない方がいい。」
気付くわけがないと思っていた。戦闘において自分が弱っていると見せるのは命取りだからだ。
常に戦いの場に身を置いていたアシェリナにとって、それはまばたきををするかのような自然の振舞だったはずだ。
(こいつ――!!)
背筋がゾクリとした。胸の内から湧き出る高揚にアシェリナは思わず拳を握る。
しかしそれは長くは続かなかった。飛び出したセリカの先で、シトリーがニヤリと笑ったからだ。
「そうよね!そんな簡単に殺られるわけないわよねっ!!」
セリカも気付く。アシェリナの背後で研ぎ澄まされた殺意が光ったからだ。
「アシェリナッ!」
背後からの攻撃を受け身なく浴びたアシェリナは思わず振り返る。そこには足に風精霊を纏わせたさファルナが立っていた。
「おま――な、んで――」
ファルナの肺部分にキラリと石が光る。それは淡い浅葱色をしていた。
「風精霊の・・・」
「あぁ、エレメントストーンだ。肺に埋め込んで、吸い込んだあんたの魔法を中和させてもらった。」
「おまえ、死ぬぞ・・・。」
「死なねーよ。ここにはそれをも凌駕する2人の『絶望』がある。」
ファルナは指で肺を指さした。
「『絶望』だと・・・」
「文と文を霊魔として開花させた原動力は2人が積み重ねた『絶望』だ。2人が死んでそれが俺に還ってきた。ここには俺たち3人分の負の糧がある。
咎人はな、負の感情が多ければ多いほど強さを増すんだよ。お前を殺すまで膨れ上がる負の感情がある限り、俺は死なねー。いや、死ぬわけにはいかないのさ。」
治癒魔法をかけようとするアシェリナに、ファルナは即座に連撃を振りかざす。それを受け止めたのはセリカだった。
「くっ・・・!」
「やぁ、久しぶりだね、セリカ。あの森以来かな。」
力が強い。ファルナの不敵な笑みにセリカは剣を両手に持ち直した。
「こうやって話すのは初めてだよね。俺はファルナ。あの時はゼロが独占しちゃったからね。」
「ゼロ・・・?あいつも来ているのか?」
「うん、来てると思うよ。だって今回の計画主はあいつだからね。」
「一体何が目的だっ・・・!!」
「さぁね。あいつが考えていることなんて分からないよ。そもそも、あいつは俺たちの仲間なんかじゃないから。」
「え・・・?」
「それより、俺だけに構っていていいのかな?」
左脇に衝撃が走る。炎を纏わせたシトリーの蹴りはセリカを吹っ飛ばした。
「私を無視しないでくれない?戦う場所が地上じゃなくても関係ないのよ。」
シトリーの背には炎の羽が発現されていた。蝙蝠のような薄い羽をわずかに震わせると長い髪を手で払い風に躍らせた。
「お前のエレメントは元々、火精霊だったもんな。」
「昔のことなんて忘れたわ。それより、霊魔の力が還った咎人を侮りすぎよ。」
炎の障壁にアシェリナの剣が激しくぶつかる。剣に埋め込まれている石は爛爛と濁った色をしていた。
「厄介な武器ね。」
「いいだろう?扱える者がほとんど居ない希少もんだぜ・・・。」
「そう。でも、その扱う魔術師も、そろそろ限界みたいね。」
アシェリナは瞬時に盾を身構えた。横からファルナの攻撃が飛んできたからだ。
(ちっ・・・・!さすがに2人相手はキツイ――!)
鈍くなったアシェリナの様子に追い打ちをかけるように、ファルナとシトリーはタイミングよく攻撃を重ねていく。
ギリギリで凌ぐアシェリナの隙をファルナは見逃さなかった。
「しまっ――!!」
「死ねぇっっ!!!」
鋭く硬化した剣がアシェリナの体を突き抉ろうとした瞬間、渦巻く業火が2人の間に迸る。
あまりにも深い熱波にファルナとシトリーは距離を取らざるを得なかった。
業火から飛び出してきたセリカは、アシェリナを庇うように身構えると氷剣の切先を突き付けた。
勝手に柱石五妖魔であるイカゲを動かして、結果、あいつらに殺されたってことでの責任で。」
「イカゲは元々私の霊魔よ。自分の霊魔を使って何が悪いのよ。」
「あの方の前でもそんな減らず口が叩けるのかよ。それでゼロがどんな目に遭ったか知らないわけじゃないだろ?」
「っ・・・!でも、仕方ないじゃない・・・。もとはと言えば、ゼロが全然、相手に、してくれないから・・・。」
「イカゲのやつが色々な情報をゲロっちまったおかげで、しわ寄せがこっちにも来てんだよ。」
「あいつらを皆殺しに出来なかったのはあんたの実力でしょ、ファルナ!責任転嫁しないでよ。」
「ふん、これから殺すんだよ。特にアイツだけは許さねー。」
「あいつって・・・アシェリナ・ブライドリックのこと?っていうか、あんたあの双子の霊魔は?」
鋭い殺気が肌を刺す。いつもと違うファルナの様子にシトリーはいち早く気付いたようだ。
「・・・そう。あの子たち殺られちゃったの・・・。じゃあ、私と一緒ね。」
「・・・一緒にすんじゃねーよ。」
「そうね・・・あんたと傷の舐め合いなんて願い下げよ。」
「魔集石を支給されてねーのに戦えるのかよ。俺のは貸さねーぞ。」
「要らないわよ、あんなもの。私はあの女をこの手で殺さなきゃ気が済まないのよ。
あんたこそ、霊魔無しであの英雄とか言われている奴と戦えるの?」
「はっ!余計なお世話だよ。策はある。利用されっぱなしは癪に障るからな。」
「ふぅん。くれぐれもこっちの邪魔はしないでよ。」
「こっちの台詞だよ。」
2人は互いの標的に向かって同時に飛び出す。ファルナの剣をアシェリナは真正面から受け止めた。
「土精霊で硬化した剣か。すべてのエレメントを使えるなんて、その魔集石ってやつは随分便利だなっ!」
反動を利用して押し返したはずなのに、ファルナはそれを容易く薙ぎ払った。
(こいつ、力が・・・!?)
「今までの俺と同じだと思わないでほしいね。結界の中には限られた塵幼精しか無かったけど、ここには無限の原子があるんだ。」
そう言うとファルナは魔集石を振り上げた。
細かく震える粒子が集まり、石は少しずつ鮮やかさを増していく。
「魔法力の器という制限があるお前たちと比べてこっちは無限なんだよ。1つのエレメントしか使えないくせにエラソーにするんじゃねーよ!」
ファルナは鋭い風の鎌を振り下ろす。頭上で受け止めたアシェリナは短く息を吐きだした。
「ALL Element 風精霊」
詠唱を口に乗せただけで空気が大きくうねる。それはまるで大地が息吹いているようだった。
「颶風」
重い空気が一瞬で黒く渦巻く。
水精霊の上級属性魔法が放たれたと錯覚するほどの冷たい空気を吸い込んだファルナは思わず膝をついた。
「な、なんだ・・・体が・・・重い・・・」
顔を上げることができない。まるで肺が水に浸かったかのように呼吸がすることができないのだ。
「オレの風を吸い込んだな。」
「くっ・・・!」
「すぐに息が止まる。てめーは終わりだよ。」
そう言うとアシェリナは足早にその場を後にした。
残されたファルナは必死に呼吸をしようと首に爪を喰い込ませた。
(うそだろ・・・っ、一瞬で・・・!?これがあいつの魔法・・・英雄の実力というのかよっ・・・!)
脳裏に蘇ったのは2人の笑顔だ。
「・・・あ・・・ゃ・・・ふ・・・み・・・!」
このままでは済ませるわけにはいかせない。あの子たちは自分に魂を委ね霊魔になったのだ。
震える手の中でカチャリと石が鳴った。
(は、速いっ・・・・!!)
シトリーの炎はイカゲ以上の火力と熱量だった。
長身でしなやなか躯体から浴びせられる攻撃にセリカは手も足も出せずにいる。
反撃に転じようとも、すぐに姿を眩まされ予期しない場所からカウンターを受けるのだ
「影が多いっ・・・!」
イカゲは影を移動していた。ならば周囲の影に気を配ればよいが、瓦礫と化した建造物は現場に多くの影を造り出していた。
思考を阻止するように流れる攻撃は、確実にセリカの体力を削っていく。
その時だった。巨大なつむじ風がシトリーを空へ巻き上げたのだ。
「アシェリナ――!?」
「なにをちんたらとやっているんだ。」
「あいつは影に隠れたり移動したりするんだ。だから攻撃が――」
「ならばこうすればいいじゃねーかよっ、っと!」
そう言うと、アシェリナはさらにセリカを空へ舞い上げた。
「わっ――!ちょ、なにを――!」
「影が厄介ならフィールドを空に移せばいいだろう。空に影はねー。」
「ま、まて!私は風精霊は使えな――」
「じゃあ、てめーのエレメントで空中戦にもっていけ。」
無茶なことを、とセリカは瞬時に足場に氷を造り出す。
戦闘における瞬時判断には自信があった。それはあのヴァースキと幾度と戦ってきた経験から培われたものだろう。
氷を蹴りシトリーに太刀を浴びせると、再び氷の足場に着地した。
「ほぅ、やっぱりおもしろいな、あいつ。」
「ぐっ――!!ちょっと、ファルナはどうしたのよっ!?」
「オレがここにいるのが答えだよ。」
「まさか・・・!あいつ、もうやられたのっ――!?」
「とっとと片付けるぞ。合わせろセリカ!」
「・・・へ?」
両側からの攻撃を狙ったアシェリナの攻撃はしかし空振りに終わる。セリカが反応できなかったからだ。
「なっ――!合わせろって言ったろうが、このボケがっ!」
「き、急に言われても動けるわけがないだろうっ!」
「あぁんっ!?共闘の経験がねーのかよ!」
「ない。戦闘はいつも1人だった。」
「ちっ・・・!ミトラに教育課程を見直しさせねーと。」
「アシェリナは休んででいいぞ。ここは私がやる。」
「は?なにを言っている。2人でやった方が早いだろうが。」
「さっきから早く終わらせようとしているのはその顔色の悪さが理由だろう?」
「!」
「少しずつ呼吸が早くなっている。無理はしない方がいい。」
気付くわけがないと思っていた。戦闘において自分が弱っていると見せるのは命取りだからだ。
常に戦いの場に身を置いていたアシェリナにとって、それはまばたきををするかのような自然の振舞だったはずだ。
(こいつ――!!)
背筋がゾクリとした。胸の内から湧き出る高揚にアシェリナは思わず拳を握る。
しかしそれは長くは続かなかった。飛び出したセリカの先で、シトリーがニヤリと笑ったからだ。
「そうよね!そんな簡単に殺られるわけないわよねっ!!」
セリカも気付く。アシェリナの背後で研ぎ澄まされた殺意が光ったからだ。
「アシェリナッ!」
背後からの攻撃を受け身なく浴びたアシェリナは思わず振り返る。そこには足に風精霊を纏わせたさファルナが立っていた。
「おま――な、んで――」
ファルナの肺部分にキラリと石が光る。それは淡い浅葱色をしていた。
「風精霊の・・・」
「あぁ、エレメントストーンだ。肺に埋め込んで、吸い込んだあんたの魔法を中和させてもらった。」
「おまえ、死ぬぞ・・・。」
「死なねーよ。ここにはそれをも凌駕する2人の『絶望』がある。」
ファルナは指で肺を指さした。
「『絶望』だと・・・」
「文と文を霊魔として開花させた原動力は2人が積み重ねた『絶望』だ。2人が死んでそれが俺に還ってきた。ここには俺たち3人分の負の糧がある。
咎人はな、負の感情が多ければ多いほど強さを増すんだよ。お前を殺すまで膨れ上がる負の感情がある限り、俺は死なねー。いや、死ぬわけにはいかないのさ。」
治癒魔法をかけようとするアシェリナに、ファルナは即座に連撃を振りかざす。それを受け止めたのはセリカだった。
「くっ・・・!」
「やぁ、久しぶりだね、セリカ。あの森以来かな。」
力が強い。ファルナの不敵な笑みにセリカは剣を両手に持ち直した。
「こうやって話すのは初めてだよね。俺はファルナ。あの時はゼロが独占しちゃったからね。」
「ゼロ・・・?あいつも来ているのか?」
「うん、来てると思うよ。だって今回の計画主はあいつだからね。」
「一体何が目的だっ・・・!!」
「さぁね。あいつが考えていることなんて分からないよ。そもそも、あいつは俺たちの仲間なんかじゃないから。」
「え・・・?」
「それより、俺だけに構っていていいのかな?」
左脇に衝撃が走る。炎を纏わせたシトリーの蹴りはセリカを吹っ飛ばした。
「私を無視しないでくれない?戦う場所が地上じゃなくても関係ないのよ。」
シトリーの背には炎の羽が発現されていた。蝙蝠のような薄い羽をわずかに震わせると長い髪を手で払い風に躍らせた。
「お前のエレメントは元々、火精霊だったもんな。」
「昔のことなんて忘れたわ。それより、霊魔の力が還った咎人を侮りすぎよ。」
炎の障壁にアシェリナの剣が激しくぶつかる。剣に埋め込まれている石は爛爛と濁った色をしていた。
「厄介な武器ね。」
「いいだろう?扱える者がほとんど居ない希少もんだぜ・・・。」
「そう。でも、その扱う魔術師も、そろそろ限界みたいね。」
アシェリナは瞬時に盾を身構えた。横からファルナの攻撃が飛んできたからだ。
(ちっ・・・・!さすがに2人相手はキツイ――!)
鈍くなったアシェリナの様子に追い打ちをかけるように、ファルナとシトリーはタイミングよく攻撃を重ねていく。
ギリギリで凌ぐアシェリナの隙をファルナは見逃さなかった。
「しまっ――!!」
「死ねぇっっ!!!」
鋭く硬化した剣がアシェリナの体を突き抉ろうとした瞬間、渦巻く業火が2人の間に迸る。
あまりにも深い熱波にファルナとシトリーは距離を取らざるを得なかった。
業火から飛び出してきたセリカは、アシェリナを庇うように身構えると氷剣の切先を突き付けた。
0
あなたにおすすめの小説
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~
田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。
【改稿】2026/01/01、第一章の36話までを大幅改稿しました。
これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。
・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。
・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。
転生皇女はフライパンで生き延びる
渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。
使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。
……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。
自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。
そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。
「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」
※※※
死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。
※重複投稿作品※
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる