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第3章2部
ぶつかる主張
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サージュベル学園内にある神殿は、ささやかな規模でありながらも厳かな空気をまとっていた。華美な装飾は抑えつつ質の良さをうかがわせる精巧な造りの建造物には、あちこちに花と植物が彫刻されている。幅数メートルを超える4本の柱は樹木を思わせる出で立ちをし、そこから伸びる天蓋にはステンドグラスが施され、そこから溢れる陽の光が神秘的な空間を演出していた。
神殿の真ん中に置かれる円卓は大理石で造られている。なめらかな肌触りと高級感あふれる佇まいが、ここへ集まる者を優しく誘っているように思えた。
「なっ、興味深いだろ?オレの二日酔いにもすぐに気づいて薬草を渡してきたんだぜ?」
「あなたは素面の時のほうが珍しいでしょう。」
「ガッハッハッハッハッ!!!違いねー!!」
そんな厳かな雰囲気に似合わぬ豪快な笑い声に誰もが目を向ける。しかし、その声の主が、あの有名なアシェリナ・ブライドリックだと気付くと、それは好奇の眼差しへと変わっていった。
「また会ってみてーな、あのセリカって生徒に。」
「アシェリナ・・・これから魔法属性評議会ですよ。もっと緊張感を持ってください。」
「緊張なんてしねーもん。」
両腕を頭の後ろで組んだアシェリナはふんぞり返る。いつもなら、そのふてぶてしく堂々とした態度に腹が立っただろうが、この場では頼もしい限りだとミトラは思った。
「本当に・・・」
「あん?」
「本当にこの場に参加してよかったのかい、アシェリナ。」
ミトラの顔色は悪い。顔が丸く健康的だった昔の面影がないことに、アシェリナは心の中で舌打ちをうつ。
「盛大な祭りみてーなもんだろ?」
「これからの時間はそんな陽気なものじゃないですよ。」
「別に構いやしねーよ。使えるもんは使っとけ。」
「あなたが政治的役割を担う必要はないんです。」
アシェリナはミトラの頭に優しく触れる。
「この評議会の代表がお前なんだろ。なら、俺がここにいる意味なんてそれ以上にねーよ。」
「アシェリナ・・・。」
「そうですよー。この学園にとってアシェリナ君は最強のカードなんですから。」
ひょっこりと現れた男にアシェリナは眉をひそめた。ボサボサ頭を輪ゴムで止め、ヨレヨレの白衣に身を包んだその男の足元には、左右違うスリッパが並んでいる。
「よぅ、シャノハ博士。相変わらず胡散臭ぇな。」
「ひどいですね、アシェリナ君。」
カラカラと笑うシャノハの目は、しかし笑っていなかった。
「あんたも参加するのか?」
「異質な霊魔の存在を認めちゃいましたからねー。元老院からの指名なんですよ。」
もちろんそれもあるだろう。しかしシャノハがそれだけの理由で評議会に参加するとは思えない、とミトラは気づいている。
魔法域の高水準維持。それがシャノハの本当の目的だろう。エレメント研究において、実証研究を続けるために必要な精度の高い設備と環境。そしてその名をあてにした実験対象物の持ち込み。それらを実現するためには、連合からの評価と莫大な資金が必須なのだ。
この男のエレメント開発技術は偉材だ。しかし、自分の欲求を満たすために、必要なものならば他人の命など簡単に差し出す目の前の人間を、ミトラは決して信用していない。
「シャノハ博士。結界の方は・・・?」
「問題ないですよ。」
ミトラは小さく頷いた。
「何だ?結界がどうした?」
「各機関の要人がこれだけ集まる機会はなかなか無いからね。そこを狙った敵に侵入されないように、シャノハ博士には結界の調整をお願いしたんだ。」
「この学園の結界は危険を脅かす存在は基本的に入って来られません。その加減を少し強くして、咎人と霊魔は決して入ってこられないようにしたんですよ。」
「咎人は元人間だぜ?そんなことができるのか?」
「確かに同じ物質ですからねー。ただそこは咎人の微弱な反応を検知させて識別させることで実現させました。」
聞いても分からない。さらにそのカラクリを説明されても理解できないだろう。アシェリナは早々に考えることを放棄した。
「サージュベル学園代表。そろそろ始めましょう。」
静かだが凛とした声が会話を遮る。
ライトグレイのフードをかぶるこの人物は、連合からの使者である。顔の見えない不気味な出で立ちと、その声で周囲の喧騒をかき消すと、すぐにその場から離れた。
「そうですね。」
ミトラはぐるりと周囲を見渡す。それぞれの代表がすでに席についていることを確認したミトラは大きく息を吸った。
「それでは、これより属性魔法評議会を挙行いたします。」
会場全員がその場から立ち上がる。魔法域の安寧をかけた評議会が幕を開けた。
評議会は序盤から熱を帯びた話し合いを展開していた。
気候変動に伴う影響を訴えるのは西の魔法域、ノスタミザを治めるインネだ。
「わらわの魔法域は他の地域に比べ気候が安定しない。また気候災害が起こった場合、他の魔法域への要請に依存する状態が続いておる。気候に左右されない自国強化のために、変則的な気候と共存する方法を考えるとともに資金が必要である。」
大きく胸がはだけた着物は鮮やかな群青色だ。散りばめられた色とりどりの橘が艶やかさを演出している。
人員流失と貧困層拡大を問題にあげるのは、東の魔法域であるハドリジスを治めるマソインだ。
「我が国では深刻な人員流出が問題となっている。優秀な人材が魔法域から出ることで、富裕層と貧困層の差はこれからもますます広がるだろう。平等な雇用に備える魔法域の活性化と安定した地盤を整える費用が必要なのは当然のことである。」
褐色の肌と鍛えられた体躯は剛健な存在感を放っている。低く威圧的な声にエリスは思わず身をすくませた。
「や、やっぱり属性魔法評議会は迫力があるわね、菲耶・・・。」
ヒソヒソと隣に座る菲耶に話しかければ、小さく頷く気配が肩から伝わった。
「どこも切実な悩みだナ。」
目の前では白熱した話し合いが続いている。
その時、アシェリナの怒気を含ませた声が会場内に響き渡った。
「おいっ!それはどういうことだっ?」
会場は一瞬静まり返った。が、その後に落ち着いた声が続く。
「そのままの意味ですよ。」
「あぁっ!!?」
「ここ数年、サージュベル学園の魔法技術は他の機関に比べ群を抜き、独走状態になっていることは周知のとおりです。卓越した技術はもちろんですが、潤沢な資金、珍しいサンプル、高スペックな設備環境など、好条件が揃っての実績といえるでしょう。」
きっかりと分けられた七三の髪型にスクエア型のメガネをかけた長身の男に視線が集まる。北の魔法域であるシムリを治めるオクリタだ。
ミトラは顔を上げる。その視線はひどく冷たいものだった。
「さらに今回の咎人と霊魔の関係性及び霊魔製造における素材解明の論文を発表・・・。この発見は本当に偶然なのかどうか、些か疑問が残ると言ったのです。」
「サージュベルの自作自演だと言いたいのですが、オクリタさん。」
ミトラは努めて冷静な声を出した。
「そんな自作自演だなんて・・・。」
ズレたメガネを直すオクリタの目が鋭く光る。
「今回はその論文と歪な霊魔の存在を認めたシャノハ博士殿が臨席されるということで、詳しい内容をご教授いただけることを楽しみにしていたんですよ。」
オクリタの視線の先には、足を組み、その上で指をクルクルと回すシャノハが、口元だけ笑ってみせた。
「そうだねー。最近、今までとは違う特徴を持った霊魔の目撃情報が急激に増えている。その背景には、不可解な行方不明者の増加が起因していることに間違いはないだろう。」
「サージュベル学園には魔法技術検証のためにさまざまな素材が持ち込まれているじゃないですか。その中に、行方不明者が含まれているのではないんですか?」
会場がザワザワと騒ぎ出す。
「残念ながら、人間の検体は見たことがないねー。僕個人としてはそんな検体、しかも、まだ生存している状態で運ばれてくるのが1番理想的なんだけどなー。
例え生存していたとしても、自我を失っていたり、言語能力の乏しい個体だと余計な手間と労力が必要となってくる。僕、面倒くさいの嫌いなんだよねー。」
シャノハの目の奥が鈍く光った。
「誰か自分の身体を差し出してくれないかなー。それで、意識がある状態で身体を開かせてもらえると大変ありがたいんだけど。」
不気味に笑うシャノハに、オクリタはゴクリと唾をのんだ。
「オクリタさん。根拠のない憶測は控えていただきたい。サージュベル学園の中でも、家族が行方不明となって苦しんでいる人がいるのです。私たちが霊魔製造に関わっているなんてありえません。」
ミトラの怒りを抑えた低い声にエリスは思わず身をすくめた。
「そ、そんなつもりはありません・・・。ただ、偏る資金分配は魔法技術の格差を広げるばかりです。魔法域で魔法教育に隔たりがあるのは不平・不満を生むだけではありませんか?」
「それを守るのが機関の役割だろうが。金が無くても工夫次第でより良い政策はできる。難癖をつけるな。」
「あなたは恩恵を受ける側だからそう言えるのです。技術格差が広がり情報共有も明確ではない。自国を守るためにどの機関も必死なのです!」
ミトラはチラリと連合の使者をみた。ローブのせいで顔は見えない。どうせ見えたとしても、きっと表情一つ崩していないだろう。
「わらわの魔法域でも行方不明者が増えていると報告が上がっている。霊魔製造に人間、特に子供が絡んでいるならば早急に根本を叩かねばならんじゃろう。」
「同じく。より詳細な情報開示を要求する。」
「切迫している状況はどこも同じです。罪のない人たちが犠牲になるなんて許せない。みなさんの共通意識が同じ方向を向いているなら、手を取り助け合えるはずです。」
会場のほとんどがミトラの言葉にうなずく。しかしオクリタだけは鼻で笑うような仕草を見せた。
「なんだよ、まだ納得してねーのかよ。」
「手を取り助け合う信頼関係さえ築けていない状況では説得力がありません、」
「なんだってっ!!?」
アシェリナが今にも飛びかかりそうな勢いでオクリタに詰めよる。
ミトラがアシェリナを制止しようとした時だった。
大きな爆発音が会場内に響き渡る。神殿がわずかに揺れ、誰かの小さな悲鳴が聞こえた後に、キィィンンという高い音がした。
一瞬、反応が遅れたミトラたちの前に、3つの影が姿を現したのだ。
神殿の真ん中に置かれる円卓は大理石で造られている。なめらかな肌触りと高級感あふれる佇まいが、ここへ集まる者を優しく誘っているように思えた。
「なっ、興味深いだろ?オレの二日酔いにもすぐに気づいて薬草を渡してきたんだぜ?」
「あなたは素面の時のほうが珍しいでしょう。」
「ガッハッハッハッハッ!!!違いねー!!」
そんな厳かな雰囲気に似合わぬ豪快な笑い声に誰もが目を向ける。しかし、その声の主が、あの有名なアシェリナ・ブライドリックだと気付くと、それは好奇の眼差しへと変わっていった。
「また会ってみてーな、あのセリカって生徒に。」
「アシェリナ・・・これから魔法属性評議会ですよ。もっと緊張感を持ってください。」
「緊張なんてしねーもん。」
両腕を頭の後ろで組んだアシェリナはふんぞり返る。いつもなら、そのふてぶてしく堂々とした態度に腹が立っただろうが、この場では頼もしい限りだとミトラは思った。
「本当に・・・」
「あん?」
「本当にこの場に参加してよかったのかい、アシェリナ。」
ミトラの顔色は悪い。顔が丸く健康的だった昔の面影がないことに、アシェリナは心の中で舌打ちをうつ。
「盛大な祭りみてーなもんだろ?」
「これからの時間はそんな陽気なものじゃないですよ。」
「別に構いやしねーよ。使えるもんは使っとけ。」
「あなたが政治的役割を担う必要はないんです。」
アシェリナはミトラの頭に優しく触れる。
「この評議会の代表がお前なんだろ。なら、俺がここにいる意味なんてそれ以上にねーよ。」
「アシェリナ・・・。」
「そうですよー。この学園にとってアシェリナ君は最強のカードなんですから。」
ひょっこりと現れた男にアシェリナは眉をひそめた。ボサボサ頭を輪ゴムで止め、ヨレヨレの白衣に身を包んだその男の足元には、左右違うスリッパが並んでいる。
「よぅ、シャノハ博士。相変わらず胡散臭ぇな。」
「ひどいですね、アシェリナ君。」
カラカラと笑うシャノハの目は、しかし笑っていなかった。
「あんたも参加するのか?」
「異質な霊魔の存在を認めちゃいましたからねー。元老院からの指名なんですよ。」
もちろんそれもあるだろう。しかしシャノハがそれだけの理由で評議会に参加するとは思えない、とミトラは気づいている。
魔法域の高水準維持。それがシャノハの本当の目的だろう。エレメント研究において、実証研究を続けるために必要な精度の高い設備と環境。そしてその名をあてにした実験対象物の持ち込み。それらを実現するためには、連合からの評価と莫大な資金が必須なのだ。
この男のエレメント開発技術は偉材だ。しかし、自分の欲求を満たすために、必要なものならば他人の命など簡単に差し出す目の前の人間を、ミトラは決して信用していない。
「シャノハ博士。結界の方は・・・?」
「問題ないですよ。」
ミトラは小さく頷いた。
「何だ?結界がどうした?」
「各機関の要人がこれだけ集まる機会はなかなか無いからね。そこを狙った敵に侵入されないように、シャノハ博士には結界の調整をお願いしたんだ。」
「この学園の結界は危険を脅かす存在は基本的に入って来られません。その加減を少し強くして、咎人と霊魔は決して入ってこられないようにしたんですよ。」
「咎人は元人間だぜ?そんなことができるのか?」
「確かに同じ物質ですからねー。ただそこは咎人の微弱な反応を検知させて識別させることで実現させました。」
聞いても分からない。さらにそのカラクリを説明されても理解できないだろう。アシェリナは早々に考えることを放棄した。
「サージュベル学園代表。そろそろ始めましょう。」
静かだが凛とした声が会話を遮る。
ライトグレイのフードをかぶるこの人物は、連合からの使者である。顔の見えない不気味な出で立ちと、その声で周囲の喧騒をかき消すと、すぐにその場から離れた。
「そうですね。」
ミトラはぐるりと周囲を見渡す。それぞれの代表がすでに席についていることを確認したミトラは大きく息を吸った。
「それでは、これより属性魔法評議会を挙行いたします。」
会場全員がその場から立ち上がる。魔法域の安寧をかけた評議会が幕を開けた。
評議会は序盤から熱を帯びた話し合いを展開していた。
気候変動に伴う影響を訴えるのは西の魔法域、ノスタミザを治めるインネだ。
「わらわの魔法域は他の地域に比べ気候が安定しない。また気候災害が起こった場合、他の魔法域への要請に依存する状態が続いておる。気候に左右されない自国強化のために、変則的な気候と共存する方法を考えるとともに資金が必要である。」
大きく胸がはだけた着物は鮮やかな群青色だ。散りばめられた色とりどりの橘が艶やかさを演出している。
人員流失と貧困層拡大を問題にあげるのは、東の魔法域であるハドリジスを治めるマソインだ。
「我が国では深刻な人員流出が問題となっている。優秀な人材が魔法域から出ることで、富裕層と貧困層の差はこれからもますます広がるだろう。平等な雇用に備える魔法域の活性化と安定した地盤を整える費用が必要なのは当然のことである。」
褐色の肌と鍛えられた体躯は剛健な存在感を放っている。低く威圧的な声にエリスは思わず身をすくませた。
「や、やっぱり属性魔法評議会は迫力があるわね、菲耶・・・。」
ヒソヒソと隣に座る菲耶に話しかければ、小さく頷く気配が肩から伝わった。
「どこも切実な悩みだナ。」
目の前では白熱した話し合いが続いている。
その時、アシェリナの怒気を含ませた声が会場内に響き渡った。
「おいっ!それはどういうことだっ?」
会場は一瞬静まり返った。が、その後に落ち着いた声が続く。
「そのままの意味ですよ。」
「あぁっ!!?」
「ここ数年、サージュベル学園の魔法技術は他の機関に比べ群を抜き、独走状態になっていることは周知のとおりです。卓越した技術はもちろんですが、潤沢な資金、珍しいサンプル、高スペックな設備環境など、好条件が揃っての実績といえるでしょう。」
きっかりと分けられた七三の髪型にスクエア型のメガネをかけた長身の男に視線が集まる。北の魔法域であるシムリを治めるオクリタだ。
ミトラは顔を上げる。その視線はひどく冷たいものだった。
「さらに今回の咎人と霊魔の関係性及び霊魔製造における素材解明の論文を発表・・・。この発見は本当に偶然なのかどうか、些か疑問が残ると言ったのです。」
「サージュベルの自作自演だと言いたいのですが、オクリタさん。」
ミトラは努めて冷静な声を出した。
「そんな自作自演だなんて・・・。」
ズレたメガネを直すオクリタの目が鋭く光る。
「今回はその論文と歪な霊魔の存在を認めたシャノハ博士殿が臨席されるということで、詳しい内容をご教授いただけることを楽しみにしていたんですよ。」
オクリタの視線の先には、足を組み、その上で指をクルクルと回すシャノハが、口元だけ笑ってみせた。
「そうだねー。最近、今までとは違う特徴を持った霊魔の目撃情報が急激に増えている。その背景には、不可解な行方不明者の増加が起因していることに間違いはないだろう。」
「サージュベル学園には魔法技術検証のためにさまざまな素材が持ち込まれているじゃないですか。その中に、行方不明者が含まれているのではないんですか?」
会場がザワザワと騒ぎ出す。
「残念ながら、人間の検体は見たことがないねー。僕個人としてはそんな検体、しかも、まだ生存している状態で運ばれてくるのが1番理想的なんだけどなー。
例え生存していたとしても、自我を失っていたり、言語能力の乏しい個体だと余計な手間と労力が必要となってくる。僕、面倒くさいの嫌いなんだよねー。」
シャノハの目の奥が鈍く光った。
「誰か自分の身体を差し出してくれないかなー。それで、意識がある状態で身体を開かせてもらえると大変ありがたいんだけど。」
不気味に笑うシャノハに、オクリタはゴクリと唾をのんだ。
「オクリタさん。根拠のない憶測は控えていただきたい。サージュベル学園の中でも、家族が行方不明となって苦しんでいる人がいるのです。私たちが霊魔製造に関わっているなんてありえません。」
ミトラの怒りを抑えた低い声にエリスは思わず身をすくめた。
「そ、そんなつもりはありません・・・。ただ、偏る資金分配は魔法技術の格差を広げるばかりです。魔法域で魔法教育に隔たりがあるのは不平・不満を生むだけではありませんか?」
「それを守るのが機関の役割だろうが。金が無くても工夫次第でより良い政策はできる。難癖をつけるな。」
「あなたは恩恵を受ける側だからそう言えるのです。技術格差が広がり情報共有も明確ではない。自国を守るためにどの機関も必死なのです!」
ミトラはチラリと連合の使者をみた。ローブのせいで顔は見えない。どうせ見えたとしても、きっと表情一つ崩していないだろう。
「わらわの魔法域でも行方不明者が増えていると報告が上がっている。霊魔製造に人間、特に子供が絡んでいるならば早急に根本を叩かねばならんじゃろう。」
「同じく。より詳細な情報開示を要求する。」
「切迫している状況はどこも同じです。罪のない人たちが犠牲になるなんて許せない。みなさんの共通意識が同じ方向を向いているなら、手を取り助け合えるはずです。」
会場のほとんどがミトラの言葉にうなずく。しかしオクリタだけは鼻で笑うような仕草を見せた。
「なんだよ、まだ納得してねーのかよ。」
「手を取り助け合う信頼関係さえ築けていない状況では説得力がありません、」
「なんだってっ!!?」
アシェリナが今にも飛びかかりそうな勢いでオクリタに詰めよる。
ミトラがアシェリナを制止しようとした時だった。
大きな爆発音が会場内に響き渡る。神殿がわずかに揺れ、誰かの小さな悲鳴が聞こえた後に、キィィンンという高い音がした。
一瞬、反応が遅れたミトラたちの前に、3つの影が姿を現したのだ。
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