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第3章
似たもの同士
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殺し合いなんて冗談だと思っていたあの時の自分を叱咤したい。
疼く痛みに眉をひそめたセリカは、左腕を軽く押さえる。力なくぶら下がるそれは折れているだろう。
セリカは近くに落ちていた太い木を拾うと、慣れた動作で左腕の添え木にした。さらに、近くに生えていたハダヅミの葉を荒々しくもぎ取る。口に入れガムのように嚙み砕くと、苦味を感じたところでそれを勢いよく吐き出し、裂けた傷口に塗っていった。
あの男と始めた殺し合いの中で、骨折や裂傷程度なら自分で処置できるほどに、毎日の殺し合いは凄まじさを増している。
自生している植物の使い方や効能を教えてくれたのはすべてヴァースキだ。このハダヅミの葉もその1つであり、回復魔法が使えないセリカにとって命綱となっている。
その他にも、基本的な戦闘方法、地形と天気の活かし方、ケガの応急処置など生きるために必要な知識を毎日のように叩き込まれていた。
「・・・ちっ!」
あんなに疼いていた魔障痕がかわいく思えるほどに傷だらけになった体を見て、セリカはいら立ちを抑えられない。そして、この森のどこかにいるヴァースキを見つけるために意識を集中させる。
殺し合いをしようと言われたあの日、ヴァースキは幾つかのルールを決めた。
「殺し合いの時間は日の入りから日没までとする。それ以外はしっかり飯を食い、しっかり休むこと。次に体と記憶に変化があれば細かく報告すること。」
「記憶?」
「そうだ。お前は魔障痕が付けられた時の記憶が曖昧らしいな。どんな状況で、どんな霊魔にやられたか覚えていないのは、脳が意識的に当時の恐怖やストレスを遮断して己を守ろうとした自己防衛だ。オレとの殺し合いをしている時、ふと蘇る記憶があるかもしれない。」
「自分の命を狙い続けるあんたに話せというの?」
「感情の切り替えやコントロールは精霊を使役するのに必要な力だ。戦う時は憎め。それ以外は頼れ。」
「・・・それで、あんたを殺せたら魔法を使える方法を教えてくれるというの?」
「それは不可能だ。」
「え・・・?」
「お前がオレを殺す?触ることだって不可能だよ。」
ははっとヴァースキは笑いながらタバコを深く吸った。
「じゃあ、どうしたらいいのよっ!!」
「そうだな。お前の本気がオレに伝わったら教えてやるよ。」
「本気?」
「そうだ。本気で再び魔法が使えるようになりたいとオレに思わせたら方法を教えてやる。」
「そんなのあなたの都合じゃない!」
「そうだ。だが、お前に選択肢はない。」
「くっ!!」
「それと、もう1つ大事なルールがある。」
「まだあるの?」
「オレの事は、お師匠と呼ぶこと。」
「・・・え?」
「オレの水蛇を3カ月以内で捕まえたご褒美だ。オレのことを師と仰いでくれていいぞ。」
くゆらせたタバコの煙でハッキリとは見えない、が、ひどく腹の立つ顔をしているだろうとセリカは想像した。
「ほら、言ってみろ。」
「・・・。」
「どうした、照れているのか?」
「お・・・」
「うん?」
「おし・・・」
「そうだ、お師匠――」
「おっしょう!!」
「・・・はぁ!?」
「おっしょうよ。呼びやすいし、私はおっしょうと呼ぶ。」
「おっしょうじゃない、お師匠だ!」
「おっしょう!」
「この生意気な小娘め・・・!」
「小娘じゃない!そっちこそ名前で呼んでよ。」
「お前なんて小娘で十分だ!」
「だったら私もおっしょうと呼ぶわ!」
「ぐぬっ・・・!」
「ふんっ!」
ヴァースキとセリカは睨み合う。どちらも引く気は毛頭ない。
ヴァースキは短くなったタバコを指でピンとはねた。しかし落ちたタバコの先は既に黒く濡れている。
「お師匠と呼ばせてやるよ。」
「名前で呼んでもらうわ。」
そうして始まった2人の殺し合いはもうすぐ1年の月日が経とうとしていた。
くらっと脳が揺れる感覚でセリカは膝をつく。そして、周囲を警戒しながら木の影に身を潜めた。
「貧血か・・・血を流しすぎた。」
応急処置で血は止まっているが、体じゅうにある夥しい傷を見るとそれも仕方がないと納得せざるを得ない。
セリカは両足を木にかけ、足を頭より高くする体勢を取る。これもヴァースキから教えてもらったことの1つだ。
「こんなのイーブンじゃないわ・・・。」
毒づきながら深くため息をつく。
そもそも殺し合いなんて成立しないのだ。
魔法を使って殺そうとするヴァースキと、魔法が使えない自分が一体どうやって殺し合いをしようというのか。
これではただの嬲り殺しだ。だが、例えそれを訴えたとしても鼻で笑われて一発魔法を喰らわされるに違いない。(既に経験済みだ。)
「戦えないなら避けろ。地の利を活かせ。活路を見いだせ。」
ヴァースキは口元に笑みを浮かべ容赦なく魔法を発現し続ける。直撃すればただでは済まないと本能が騒ぐ。それほどにヴァースキの魔法には重く濃い殺意があった。
そんな生活のなかで、当たり前に無事でいれるわけがない。
セリカは何度も大怪我を負い、時には生死の境をさまようこともあった。それでもこうやって生きているのは、それこそヴァースキの都合によるものだろう。
「あの性悪ヤニ臭ジジィめ・・・。」
どうしてもあの男に一泡吹かせたい。しかし、極限まで研ぎ澄まされた剣で襲ってくる相手に、木の棒で挑む生活にも精神的に限界が来ている。
「もうイヤ・・・。疲れたよ、パパ、ママァ・・・。」
足を元に戻して座ろうとしたとき、セリカは咄嗟にその場を飛びのいた。不安定な体勢のせいで受け身が取れない。
(まずいっ――!)
セリカがそう思った時には、ヴァースキが発現した蛇が右腕に牙を剝いていた。
「あ゛ぅっ!!」
蛇を離そうと反射で動かした左腕に激痛が走る。
(そうだ、折れて――)
「隙だらけだ。」
笑いを含んだ冷徹な声がさらに魔法を口にすると、数十匹の蛇が容赦なくセリカを襲う。
「くぅぅ゛っっ!!!」
セリカは一目散に走り出すと、近くにあった大きな岩壁に思い切りその身をぶつけた。セリカと岩壁に挟まれた蛇が、パシャリと水となって消えていく。
ヴァースキが発現した魔法に触れないセリカは、物理的な物を使って魔法を消すしか方法がない。
さらに走り出すセリカを、ヴァースキはタバコを咥えながらゆっくりと追いかけた。
「うぅっっ!!消えろっ!消えろ、消えろっ!!」
セリカは切り立った崖の前で激しくその身を転がしていた。体に噛みつく蛇を潰し消そうと必死に踠いている。
いくつかの蛇は消え、そこだけ大量の雨が降ったかのように土が濡れている。濡れた土に混じる濁った赤は、セリカの傷から噴き出した血だろう。
「そんなところで暴れんでも。」
ヴァースキはその場に腰を下ろす。確か崖の先は深い谷底だったはず。川が流れているが、落ちたら命はないだろう。
「・・・っ、痛いよ・・・!ひっ、き、消えてよっ・・・!ぐすっ・・・痛いっ・・・!」
もだえるセリカはボロボロと涙を流した。皮膚の柔らかい部分に牙が突き刺さり、体を捩るたびに折れた左腕が悲鳴をあげる。開いた傷から血が溢れ、こんなに苦しいことはないと心が折れそうだった。
「もうイヤ、こんな生活・・・イヤ・・・痛い、苦しい・・・」
泣きながら痛みにあえぐ幼き少女の姿を前に、ヴァースキはタバコに火を点けた。
(そろそろ精神が持たないか。まぁ、ここまでよく持った方だな。中身が壊れてしまえば元も子も無い。)
細く息を吐くヴァースキは、未だに激しく暴れるセリカに近づいた。
「おい、そろそろ止めないと失血死するぞ。」
捕まえようとしたその時だ。勢いよく転がるセリカは、切り立った崖へその身を投げ出したのだ。
「お、おいっ!!!!」
慌てて伸ばしたヴァースキの手は、しかし届かない。
(しまった!自害を選択したかっ!!)
ヴァースキは急いで崖下を覗き込む。真っ暗な空間に、セリカの姿はすでに見えなかった。
「あのバカッ――」
その時、ヴァースキは気が動転してすぐには気付かなった。小さく荒い呼吸がすぐそこで息をひそめていることを――。
ニヤリと笑うセリカは、暴れていた時に拾った、太く長い棒に思い切り全体重をかけた。
「なっ――!」
ヴァースキのいる地面が大きく抉られる。グラッと地が揺れ、2人が居た崖が大きく傾いた。
(地がゆるい!――まさか、コイツ!!)
崩れる崖は泥濘んでいる。それが自分の魔法である水蛇と大量の血のせいだと気づいた時には、2人とも投げ出されていた。
(わざと足元を不安定にして、落ちたフリをしたまま木の棒を支えにぶら下がっていたのかっ!?)
2人は呆気なく谷底へ落ちていく。勢いよく落下しているにも関わらず、セリカは満面の笑みを見せた。
「巻き沿いだ、ざまーみろっ!」
「こんのっ、クソガキがっっ!!!」
勢いよく落下するヴァースキは、大きく舌打ちをするとすぐさま呼吸を整えた。
「ALL Element 水精霊」
ヴァースキの体から、スカイブルーの輝きと共に水精霊の紋章が浮かび上がる。
「水大蛇」
ヴァースキが静かに詠唱を口にすると、大量の水が現れ巨大な蛇へと姿を変える。白く滑らかなその姿は、神々しく光り圧倒的な気迫を感じさせるものだった。
大蛇はヴァースキとセリカをその滑らか体で包み込むと、崖下で勢いよく流れる河川にその身をトプンと静かに一体化させた。
疼く痛みに眉をひそめたセリカは、左腕を軽く押さえる。力なくぶら下がるそれは折れているだろう。
セリカは近くに落ちていた太い木を拾うと、慣れた動作で左腕の添え木にした。さらに、近くに生えていたハダヅミの葉を荒々しくもぎ取る。口に入れガムのように嚙み砕くと、苦味を感じたところでそれを勢いよく吐き出し、裂けた傷口に塗っていった。
あの男と始めた殺し合いの中で、骨折や裂傷程度なら自分で処置できるほどに、毎日の殺し合いは凄まじさを増している。
自生している植物の使い方や効能を教えてくれたのはすべてヴァースキだ。このハダヅミの葉もその1つであり、回復魔法が使えないセリカにとって命綱となっている。
その他にも、基本的な戦闘方法、地形と天気の活かし方、ケガの応急処置など生きるために必要な知識を毎日のように叩き込まれていた。
「・・・ちっ!」
あんなに疼いていた魔障痕がかわいく思えるほどに傷だらけになった体を見て、セリカはいら立ちを抑えられない。そして、この森のどこかにいるヴァースキを見つけるために意識を集中させる。
殺し合いをしようと言われたあの日、ヴァースキは幾つかのルールを決めた。
「殺し合いの時間は日の入りから日没までとする。それ以外はしっかり飯を食い、しっかり休むこと。次に体と記憶に変化があれば細かく報告すること。」
「記憶?」
「そうだ。お前は魔障痕が付けられた時の記憶が曖昧らしいな。どんな状況で、どんな霊魔にやられたか覚えていないのは、脳が意識的に当時の恐怖やストレスを遮断して己を守ろうとした自己防衛だ。オレとの殺し合いをしている時、ふと蘇る記憶があるかもしれない。」
「自分の命を狙い続けるあんたに話せというの?」
「感情の切り替えやコントロールは精霊を使役するのに必要な力だ。戦う時は憎め。それ以外は頼れ。」
「・・・それで、あんたを殺せたら魔法を使える方法を教えてくれるというの?」
「それは不可能だ。」
「え・・・?」
「お前がオレを殺す?触ることだって不可能だよ。」
ははっとヴァースキは笑いながらタバコを深く吸った。
「じゃあ、どうしたらいいのよっ!!」
「そうだな。お前の本気がオレに伝わったら教えてやるよ。」
「本気?」
「そうだ。本気で再び魔法が使えるようになりたいとオレに思わせたら方法を教えてやる。」
「そんなのあなたの都合じゃない!」
「そうだ。だが、お前に選択肢はない。」
「くっ!!」
「それと、もう1つ大事なルールがある。」
「まだあるの?」
「オレの事は、お師匠と呼ぶこと。」
「・・・え?」
「オレの水蛇を3カ月以内で捕まえたご褒美だ。オレのことを師と仰いでくれていいぞ。」
くゆらせたタバコの煙でハッキリとは見えない、が、ひどく腹の立つ顔をしているだろうとセリカは想像した。
「ほら、言ってみろ。」
「・・・。」
「どうした、照れているのか?」
「お・・・」
「うん?」
「おし・・・」
「そうだ、お師匠――」
「おっしょう!!」
「・・・はぁ!?」
「おっしょうよ。呼びやすいし、私はおっしょうと呼ぶ。」
「おっしょうじゃない、お師匠だ!」
「おっしょう!」
「この生意気な小娘め・・・!」
「小娘じゃない!そっちこそ名前で呼んでよ。」
「お前なんて小娘で十分だ!」
「だったら私もおっしょうと呼ぶわ!」
「ぐぬっ・・・!」
「ふんっ!」
ヴァースキとセリカは睨み合う。どちらも引く気は毛頭ない。
ヴァースキは短くなったタバコを指でピンとはねた。しかし落ちたタバコの先は既に黒く濡れている。
「お師匠と呼ばせてやるよ。」
「名前で呼んでもらうわ。」
そうして始まった2人の殺し合いはもうすぐ1年の月日が経とうとしていた。
くらっと脳が揺れる感覚でセリカは膝をつく。そして、周囲を警戒しながら木の影に身を潜めた。
「貧血か・・・血を流しすぎた。」
応急処置で血は止まっているが、体じゅうにある夥しい傷を見るとそれも仕方がないと納得せざるを得ない。
セリカは両足を木にかけ、足を頭より高くする体勢を取る。これもヴァースキから教えてもらったことの1つだ。
「こんなのイーブンじゃないわ・・・。」
毒づきながら深くため息をつく。
そもそも殺し合いなんて成立しないのだ。
魔法を使って殺そうとするヴァースキと、魔法が使えない自分が一体どうやって殺し合いをしようというのか。
これではただの嬲り殺しだ。だが、例えそれを訴えたとしても鼻で笑われて一発魔法を喰らわされるに違いない。(既に経験済みだ。)
「戦えないなら避けろ。地の利を活かせ。活路を見いだせ。」
ヴァースキは口元に笑みを浮かべ容赦なく魔法を発現し続ける。直撃すればただでは済まないと本能が騒ぐ。それほどにヴァースキの魔法には重く濃い殺意があった。
そんな生活のなかで、当たり前に無事でいれるわけがない。
セリカは何度も大怪我を負い、時には生死の境をさまようこともあった。それでもこうやって生きているのは、それこそヴァースキの都合によるものだろう。
「あの性悪ヤニ臭ジジィめ・・・。」
どうしてもあの男に一泡吹かせたい。しかし、極限まで研ぎ澄まされた剣で襲ってくる相手に、木の棒で挑む生活にも精神的に限界が来ている。
「もうイヤ・・・。疲れたよ、パパ、ママァ・・・。」
足を元に戻して座ろうとしたとき、セリカは咄嗟にその場を飛びのいた。不安定な体勢のせいで受け身が取れない。
(まずいっ――!)
セリカがそう思った時には、ヴァースキが発現した蛇が右腕に牙を剝いていた。
「あ゛ぅっ!!」
蛇を離そうと反射で動かした左腕に激痛が走る。
(そうだ、折れて――)
「隙だらけだ。」
笑いを含んだ冷徹な声がさらに魔法を口にすると、数十匹の蛇が容赦なくセリカを襲う。
「くぅぅ゛っっ!!!」
セリカは一目散に走り出すと、近くにあった大きな岩壁に思い切りその身をぶつけた。セリカと岩壁に挟まれた蛇が、パシャリと水となって消えていく。
ヴァースキが発現した魔法に触れないセリカは、物理的な物を使って魔法を消すしか方法がない。
さらに走り出すセリカを、ヴァースキはタバコを咥えながらゆっくりと追いかけた。
「うぅっっ!!消えろっ!消えろ、消えろっ!!」
セリカは切り立った崖の前で激しくその身を転がしていた。体に噛みつく蛇を潰し消そうと必死に踠いている。
いくつかの蛇は消え、そこだけ大量の雨が降ったかのように土が濡れている。濡れた土に混じる濁った赤は、セリカの傷から噴き出した血だろう。
「そんなところで暴れんでも。」
ヴァースキはその場に腰を下ろす。確か崖の先は深い谷底だったはず。川が流れているが、落ちたら命はないだろう。
「・・・っ、痛いよ・・・!ひっ、き、消えてよっ・・・!ぐすっ・・・痛いっ・・・!」
もだえるセリカはボロボロと涙を流した。皮膚の柔らかい部分に牙が突き刺さり、体を捩るたびに折れた左腕が悲鳴をあげる。開いた傷から血が溢れ、こんなに苦しいことはないと心が折れそうだった。
「もうイヤ、こんな生活・・・イヤ・・・痛い、苦しい・・・」
泣きながら痛みにあえぐ幼き少女の姿を前に、ヴァースキはタバコに火を点けた。
(そろそろ精神が持たないか。まぁ、ここまでよく持った方だな。中身が壊れてしまえば元も子も無い。)
細く息を吐くヴァースキは、未だに激しく暴れるセリカに近づいた。
「おい、そろそろ止めないと失血死するぞ。」
捕まえようとしたその時だ。勢いよく転がるセリカは、切り立った崖へその身を投げ出したのだ。
「お、おいっ!!!!」
慌てて伸ばしたヴァースキの手は、しかし届かない。
(しまった!自害を選択したかっ!!)
ヴァースキは急いで崖下を覗き込む。真っ暗な空間に、セリカの姿はすでに見えなかった。
「あのバカッ――」
その時、ヴァースキは気が動転してすぐには気付かなった。小さく荒い呼吸がすぐそこで息をひそめていることを――。
ニヤリと笑うセリカは、暴れていた時に拾った、太く長い棒に思い切り全体重をかけた。
「なっ――!」
ヴァースキのいる地面が大きく抉られる。グラッと地が揺れ、2人が居た崖が大きく傾いた。
(地がゆるい!――まさか、コイツ!!)
崩れる崖は泥濘んでいる。それが自分の魔法である水蛇と大量の血のせいだと気づいた時には、2人とも投げ出されていた。
(わざと足元を不安定にして、落ちたフリをしたまま木の棒を支えにぶら下がっていたのかっ!?)
2人は呆気なく谷底へ落ちていく。勢いよく落下しているにも関わらず、セリカは満面の笑みを見せた。
「巻き沿いだ、ざまーみろっ!」
「こんのっ、クソガキがっっ!!!」
勢いよく落下するヴァースキは、大きく舌打ちをするとすぐさま呼吸を整えた。
「ALL Element 水精霊」
ヴァースキの体から、スカイブルーの輝きと共に水精霊の紋章が浮かび上がる。
「水大蛇」
ヴァースキが静かに詠唱を口にすると、大量の水が現れ巨大な蛇へと姿を変える。白く滑らかなその姿は、神々しく光り圧倒的な気迫を感じさせるものだった。
大蛇はヴァースキとセリカをその滑らか体で包み込むと、崖下で勢いよく流れる河川にその身をトプンと静かに一体化させた。
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