エレメント ウィザード

あさぎ

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第2章4部

霊魔の製造

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 「がはっ!」
 「っっ!!」
 「テオ君ッ!!オルジ君ッ!」

 一気に形勢は逆転された。
 攻撃の要であるテオとシリアは動けない。気配に敏感なオルジも、器には魔法力は残っていないだろう。
 残されたジェシドは、意識が朦朧としているシリアの肩を強く握った。

 「くっ・・・!」

 目の前には服の埃を払う執事姿の霊魔が立っている。

 (テオ君の連打や正道さんの攻撃をあれだけ受けていたのに・・・!)

 ダメージを感じさせない姿にジェシドは唇を噛んだ。
 そんなジェシドの気持ちを読み取ったように、イカゲは後ろで手を組み胸を張って見せた。

 「諦めなさい。私はあのような霊魔とは格が違うのです。」

 牛の仮面が傾く先には炎の弾を放出し続ける狼の霊魔が居る。傍若無人に動き回るその姿は、確かに知性も何も感じられない。

 「き・・・君が他の霊魔と違うということはよく分かったよ。実力がまるで違う。」
 「おや。先程の火精霊サラマンダー使いの人とは違って、あなたは話ができるようだ。」

 テオたちを瀕死状態にし、さらに自分を称賛するジェシドの反応にイカゲは気を良くした。

 「あなた方が悪いのですよ。私はあなたたちに興味などなかったのに。」
 「もっともだ。君がこんなにも強いとは思わなかったんだ。」
 「そうでしょう、そうでしょう。私は霊魔の中でも特別な存在。あんな獣と一緒にされたら困るのです。」

 イカゲが頷くと、コツコツと牛の仮面が揺れて音が鳴る。

 「あぁ、悪かったよ。霊魔という存在を一括に考えていた僕らが浅はかだった。」
 「ふふふ。あなたはよく理解している。」
 「でも分からないな。」
 「おや、何がですか?」
 「君みたいな強い霊魔と、知能も何もない霊魔がどうして一緒に行動しているんだい?戦力は君1人で充分だろう?」

 ジェシドの言葉に自尊心が満たされていくのを感じる。イカゲは満足げにため息をついた。

 「私は必要ないと言ったのですがね。連れて行けと言われたのです。おおかた、使役権限の実例報告も兼ねていたのでしょう。」
 「なるほど、君は誰かに頼まれたわけだ・・・。でも必要なかったね。君の実力があれば他の霊魔なんて足手まといだろう。」
 「ええ、意思疎通はできないし、勝手な行動はするし・・・本当に邪魔な存在です。それでも情報を得る為には仕方がなかったのです。」
 「情報をもらう為に誰かの依頼を受けたってことだね。君みたいな特別な霊魔に交換条件を持ち出すなんて失礼な人だな。」
 「ええ、本当ですよ。それでも私には術がなくて頼るしか無かった。あんな人間、私にかかれば一捻りで殺せるというのに。」
 「そりゃあそうだろうね。君の強さは上級魔術士ハイウィザードさえも手を焼くだろう。」
 「魔術師ウィザードなんて赤子のようです。あんな弱い人間が魔術師ウィザードを輩出する学園の講師をしているなんて、本当に信じられませんよ。」
 「・・・。学園の講師に頼まれるなんてやっぱり君は特別な霊魔なんだね。その失礼な講師は、君にこの村を襲えと言ったのかい?」
 「いいえ、村を襲ったのは人間が抵抗してきたからです。素直に素材を引き渡せばこのような惨状にはならなかったでしょうに。」

 イカゲは小さく首を振った。

 「素材・・・?この村には特別な素材があるのかい?それは興味深いな。」
 「特別な物質とかではありませんよ。・・・そうですね、あなたには私の努力の成果をお見せしてもよいでしょう。」

 イカゲは一瞬姿を消したがすぐに戻ってきた。まるで自分の宝物を自慢するかのように嬉々とした様子で。
 イカゲの手から、重く硬い物を引きずる音がする。その正体は、鎖に繋がれた檻のようなものだった。

 「それは・・・?」
 「素材ですよ。新鮮なね。」

 土でできた頑丈な檻は影に隠れ一目では中の様子を伺い知れなかった。周囲の炎が照らし出す光の波により、幾つかの光る球体が点滅しているように見える。それが人間の目だと気付くのにそう時間はかからなかった。
 ゆらりゆらりと燻る炎にタイミングを合わせ目を凝らせば、顔の輪郭や頭などが明瞭になっていく。視覚から得た情報を元に、脳が想像から明確な映像としてその檻の中に数体の人間の姿を描き出す。
 檻の中にいる正体が分かった時、ジェシドは強い衝撃を受けた。

 「子ども・・・!?」
 「ご明察。人間の子どもですよ。」

 ジェシドの様子を気に留めることなく、イカゲは得意げに声を弾ませる。

 「これを集めてくるように言われたのです。実験に使うのでしょう。」
 「実験、だって・・・?」
 「ええ。霊魔を生みだすためには、大前提として多くの咎人が不可欠です。その咎人を作るには、まず従順な霊魔を生みだす必要があるのです。」
 「・・・何を、言っているのか、意味がよく・・・」

 日頃から難解な数式や方程式と向き合っているジェシドだが、イカゲとの会話からは、的確な解答を導き出せずにいた。そんなジェシドの様子に、イカゲは腕を組み首をひねる。

 「あなたたちでは到底辿り着くことのできない技術を私たちは持っているということです。そして、その方法はあなたたちには理解できないことでしょう。」
 「ぼ、僕は魔術師ウィザードより技術者を目指しているんだ。君の言うとおり理解できないかもしれないが、教えてくれないか。人間の子どもを使って、何の実験をするというんだ・・・?」

 イカゲはジェシドを窺う素振りを見せる。その沈黙はとても長く感じた。

 「・・・まぁ、あなたたちは全員殺しますから問題無いでしょう。優秀な私が説明してあげます。」

 背筋を伸ばしたイカゲは手を胸に当てる。

 「そもそも、霊魔を生みだす咎人ですが、人間が咎人へ変身する条件は非常に面倒で骨が折れるとか・・・。しかもその難題な条件を満たしたとしても、1人の咎人に対し使役できる霊魔は1体だけ・・・。これは大変非効率です。
 そして例え霊魔を使役したとしても、生まれるのは通常霊魔ノーマルという使えない霊魔だ。」
 「ノ、通常霊魔ノーマル?」
 「ええ、通常霊魔ノーマルは感情や意思を持ちません。誰に、何の目的で使役されたのかなんて疑問さえ抱かないでしょう。
 霊魔同士だからといって、味方意識や協力なんて無縁の話です。何も分からぬまま暴虐を繰り返すだけのただのゴミです。
意思のない霊魔を使役するなんて無価値で無駄なこと・・・。ならば、最初から言う事を聞く霊魔を生み出せばよいのです。」
 「どうやって・・・?」
 「簡単です。元々思考や感情を持ち、正確な判断ができるものと混ぜればよいのです。」
 「混ぜる、だって・・・?」

 突拍子の無い話にジェシドは眩暈を覚える。

 「ええ。意思のある霊魔を効率的に生産できないか模索した結果、生き物と霊魔を混ぜ合わせる実験を開始し、思考のある霊魔を作り出すことに成功したのです。それを私たちは融合霊魔ヒュシュオと呼んでいます。
 「融合霊魔ヒュシュオ・・・」
 「まずは動物と霊魔を混ぜ合わせました。動物にも思考や感情はありますからね。
 しかし、やはりそこは動物。感情のコントロールができず、作られた融合霊魔ヒュシュオは凶暴化しました。そうあれのようにね。」

 イカゲは狼の霊魔に視線を向けた。

 「見て分かるように、使い物になりません。やはり動物は適していないという結果から、次に選んだのは知恵のある人間でした。」
 「な、なんだって・・・!?」
 「ただしこれがとても弱かった。その辺で見繕ってきた人間は実験に耐えられず壊れていきました。例え融合霊魔ヒュシュオになったとしても、薄っぺらい思考を持ったことで逃げ出したり、自死を選択したりして全く役に立たなかったのです。
 やっぱり弱い人間はダメですね。失敗作というやつですよ。」
 「・・・。」
 「もちろん、中には成功した例もありますよ。元々魔法力の器が大きかったり、特別な力を持っていた人間は、優秀な融合霊魔ヒュシュオとして存在しています。
 しかし、試行錯誤を繰り返す実験の中である副産物と懸念が発生します。それは付加機能として同時に霊魔と融合したのです。」
 「なんだ、それは・・・?」
 「霊魔の刻印を知っていますか?使役された証として刻まれるものです。使役した咎人の意識を植え付け、霊魔をコントロールする役目を果たすもの。
 霊魔が言う事を聞かなければ、意識を操り支配することができます。しかし、その効果は使役した1体の霊魔にだけと限られたものでした。
 もし使役した咎人が消えたら、その霊魔を御するすべが無くなるという問題があったのです。それを解決したのが、先ほどの副産物である【使役権限】です。」
 「使役権限?」
 「使役権限とは、使役した咎人ではない人でも霊魔を操れるという今までの不自由を取り払うものでした。しかし実例は乏しく、どの範囲までの命令を聞くかは未だ解明されていないのです。」
 「ま、待ってくれ。そもそも、その刻印で霊魔をコントロールできるというならば、咎人に歯向かう霊魔なんて存在しないはずじゃないのか?」
 「通常霊魔ノーマルを制御するなら大いにその役目を果たせるでしょう。しかし、人間という不純物を混ぜた融合霊魔ヒュシュオの刻印は、その効果を大幅に低下させました。そこはやはり人間の『意識』が関わっているのでしょう。
 さらにここで使役権限と一緒に発生した懸念に頭を悩ませることになります。使役権限と同時に発生したのが【自給強化】です。」
 「自給強化・・・?」
 「ある1体の融合霊魔ヒュシュオが隙を見て咎人の監視下から逃げ出しました。成功例として生まれたその融合霊魔ヒュシュオは逃げ出した先で魔術師ウィザードと出会います。まだ融合霊魔ヒュシュオの存在が出回っていない当時、意思のある霊魔を珍しく思った魔術師ウィザードは研究所へ連れて行こうとしました。それに抵抗した融合霊魔ヒュシュオ魔術師ウィザードを殺し、さらに肉体を喰らったのです。」
 「く、喰らった?・・・」
 「魔術師ウィザードを喰った融合霊魔ヒュシュオは自分の能力が大幅に上昇していることに気付きました。それが自給強化の始まりだと言われています。」
 「・・・。」
 「そう。実験で生み出された融合霊魔ヒュシュオは、生き物を喰らうことで自らの力を増幅させることができたのです。」
 「なん、だって・・・!」
 「最初に融合霊魔ヒュシュオ魔術師ウィザードを喰ったことは偶然だったかもしれません。ただ自給強化とは、実験で作られた融合霊魔ヒュシュオの深層心理に、人間の欲求なり相手への誇示が残っていたことが影響した天性なのでしょう。もしくは、人間の姿と思考を奪った咎人への反逆心か・・・。」
 「自給強化とは、喰った生き物のエレメントや能力を引き継ぐものなのか?」
 「おおよそ、そうでしょうね。」
 「おおよそ・・・?」
 「刻印も効かない自給強化をした融合霊魔ヒュシュオの強さは咎人を遥かに凌駕するものでした。だからサンプルを取ろうにも捕まえる前に咎人が殺されてしまい正確なデータが取れなかったのです。
 増幅の種類は融合霊魔ヒュシュオによって違いがあり、統一性は見られない。肉体が強化されたり、魔法の威力が上がったり、優れた頭脳を身につけたりと様々に報告されています。
 融合霊魔ヒュシュオを作り出した途端に起こる自給強化による暴走の被害は、拡大しつつありました。自給強化の起因を調べた研究者たちは、人間だった時の『記憶』と『意識』が関係していると結論付けます。そこで混ぜる物を変更することにしたのです。」
 「それが、子ども・・・!?」

 ここでイカゲは得意げに胸を反らした。

 「そうです。人間だった時の『記憶』が短い子どもの思考は、大人に比べ従順でシンプルでした。さらに筋力も体力も無い子どもと混ぜて作られた融合霊魔ヒュシュオは大人のソレと比べ脆弱だったのです。
 精神も肉体も掌握しやすい子どもを使うことで自給強化の脅威を抑えることに成功した研究者たちは、原因である『記憶』と『意識』を操作することにしたのです。」
 「・・・子どもだからといってそんな簡単に・・・!」
 「抵抗するならば思考を支配して感情を失わせればいい。言うことを聞けばうちに帰れるとウソをつけばいい。役に立てば褒美を与え優劣を分からせればいい。」
 「なんて、ことを・・・」

 ジェシドは震える拳を必死に抑える。

 「そもそも、子どもなんて力ずくでどうとでもなりますが、融合霊魔ヒュシュオの質に『記憶』と『意識』が関係するのなら時間をかけるしか仕方ありません。エサとして育てるのも結構手間なんですよ。」

 やれやれ、と言わんばかりにイカゲは両手を肩の位置まで上げて見せた。

 「ある程度まで育てた操り人形の子どもと霊魔を混ぜ合わせ、意思のある従順な融合霊魔ヒュシュオが誕生したことで、実験は大成功・・・かと思いきや、優秀な融合霊魔ヒュシュオが出来上がる確率はまだ半数以下。
 現在でも子どもを素材としたサンプルが必要なのです。だからこうやって、今でも素材を集めているというわけです。」

 呼吸をしているはずなのに息苦しさを感じる。今まで感じたことの無い感情がジェシドの中で渦巻いていた。
 ジェシドはイカゲを思いきり睨みつけた、が、そんな視線にイカゲはクイと首を揺らす。
 視線の先には、血で口を真っ赤にした狼の霊魔が地面に鼻をこすりつけていた。

 「見てみなさい、あの醜い霊魔を・・・。あれは霊魔と狼を混ぜた融合霊魔ヒュシュオです。喰いものを探しているんですよ。
 1度生き物を喰らえば欲求のままに力を求め続けます。まぁ、私から見れば通常霊魔ノーマルと大した差はありませんけどね。
 そうだ、あの脳無しに私が捕まえた素材を喰わすというのはどうでしょう。知恵が芽生え、少しは役に立つのではないでしょうか。」

 支えていたシリアを静かに下ろす。閉じられた瞳がピクリと動いた気がした。

 「いや、それとも私が喰う・・・?いやいや、私がこの世で口にしたいのはあの方の肉体だけ・・・。いやいや、そんな恐れ多い・・・。」

 (咎人の変身についてまだ聞き出せていない・・・でも、でも!!)

 「そうだ!それよりも、早くこの素材を持っていき最後の情報を!!そうすれば、やっとシトリー様に・・・!」
 「限界だっ・・・!その汚い口を閉ざせっ!!」

 ジェシドは脱兎の勢いで走り出した。
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