エレメント ウィザード

あさぎ

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第2章3部

優しい簪

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 3人の眼下には切り立った岩壁と浸食の激しさを物語る土砂流出の中に溶融状態の岩石質物体、いわゆるマグマがゆっくりと、しかし激しい火の粉をまき散らしながら動いてた。
 黒と灰色が混ざった重い空気が濛々と立ちこめている。緑は一切無い。ゴツゴツとした黒い石と乾いた灰の白、そして液状の赤黒さだけがこの世界を支配しているようだ。

 シリアは思わず息を呑む。そして信江さんの背をギュッと強く握りなおした。

 「スゴイ光景だ・・・。」

 ジェシドの声も緊張している。ここから落ちたら一瞬であの世行きだろう。

 「岩や石から常に炎が噴き出している。あれは何が燃えているんだ?」

 炎の海とも言える劫火渓谷デフェールキャニオンを前に、セリカも驚きを隠せなかった。

 「地下にあるガスが噴出して燃えているという説が1番信憑性が高いと言われているよ。あの炎が火精霊サラマンダーの呼吸だと唱えた学者もいる。もちろん、立証はされていないけど、夢があるよね。」

 ゆっくりと飛ぶ信江さんの背に乗った3人は劫火渓谷デフェールキャニオン魔術中央図書館アバンダントセントラルライブラリーの中間地点の上空にいた。
 熱風渦巻く黒煙の中は視界が悪い。呼吸をするだけで熱く重い空気が身体中に充満し、自然と浅い呼吸を繰り返しがちになっている。

 「暑いな。」
 「えぇ、とっても暑いですわ・・・。」

 セリカとシリアは額にかいた汗を軽く拭き取った。

 「火蜥蜴ひとかげの粉を使用してもこの暑さか・・・。やはりアイテムの力を借りないと越えることは難しかったね。セリカ君、シリア君。水分補給を忘れないようにね。」

 ジェシドはカバンから水筒を差し出した。

 「ありがとうございます、ジェシドさん。用意がいいですわね。」
 「2人には僕のクエストに付き合ってもらっているわけだから当たり前だよ。
 僕1人じゃこの景色は見ることはできなかった。とても貴重な経験をさせてもらっているよ。」
 「気にするな。ジェシドのアイテムがあったからこそだ。こんな迫力のある雄大な自然は初めて見たよ。」
 「そうだね。セリカ君が勝ち取ってくれた火蜥蜴ひとかげの粉と、シリア君が出してくれた信江さん。そして僕のアイテムでこの場に立てている。」

 すると急にセリカはジェシドの前に乗り出してきた。
 前のめりに話すセリカは珍しく笑っている。

 「ジェシド!これはチームワークというやつではないか!?」

 その顔にジェシドもつられて笑ってしまう。

 「うん!素晴らしいチームワークだよ!」
 「そうか!やっぱりな!」
 「セリカ、嬉しそうですわね。」
 「あぁ!私は昔から1人で居ることが多かったから、みんなで何かを成し遂げるという経験に乏しいんだ。だからこうやって力を合わせることはとても新鮮だ。」

 思わぬセリカの過去にシリアは黙ってしまう。シリアの心情を素早く読み取ったジェシドは声のトーンを変えず続けた。

 「1人より複数の方が力は倍増するよね。支えてもらうことができる存在は大切だ。」

 そして腕時計を見ると頭の中で素早く予想時間を計算する。

 「この速度で行けばあと10分ぐらいでACLへ着くはずだ。信江さん、頑張ってくれ。」

 ジェシドが信江さんの頭を優しく撫でると、大きく翼を羽ばたかせ速度を上昇させていった。
 セリカは後ろを振り返った。後方の景色も大して違いのない地獄と比喩できる恐ろしい光景だ。
 しかし、たとえ体に受ける風が熱風だとしても、不思議と心地よいと思えるのはなぜだろう。
 業火を一望しながらセリカは首を傾げた。ドクンドクンと脈打つ心音が劫火渓谷デフェールキャニオンの炎と共鳴しているような錯覚に陥るのだ。
 正体を探ろうと辺りをキョロキョロするセリカに、シリアの声が響いた。

 「あれ?・・・さっきより暑さを感じなくなりましたわ。」

 確かに皮膚に纏わりつくジリジリとした熱さと、足元から込み上げてくる熱による汗もおさまりつつある。

 「本当だ。・・・ということは・・・!」

 前方にいるジェシドは頷いた。

 「うん。劫火渓谷デフェールキャニオンを抜けたようだ。そしてあれが――。」


 3人は目の前に現れた巨大な景色に口を閉ざす。上空には白い靄がかかりその全貌を伺い知ることはできない。が、それは視界を埋め尽くす圧倒的な緑だった。

 「あれが!」
 「・・・!」
 「うん。――魔術中央図書館アバンダントセントラルライブラリーだ!」






 そこは小さな村だった。
 劫火渓谷デフェールキャニオンから1番近いこの村は気温が常に30度を超える気候の中にあった。
 建物は木材をしっかりと組み、草木を編んで作った天井や壁は風を通しやすい構造となっている。
 滅多に雨が降らないらしいが、この村には作物や果物がたくさん栽培されてあった。
 ブツブツと言いながらメモを確認して歩くオルジの足元には、乾燥した砂煙がたっている。

 (目撃情報に目立った違いはない・・・。複数いたら厄介だと思っていたけど、ここに出る霊魔は1体と見ていいようだ。ただ、目撃されている時間に統一性は見られないか・・・。いつ出現するかは分からないってことだな。)

 村に到着したテオとオルジは、手分けして霊魔の目撃情報を聞きに回っていた。しかし、思っていた以上に村が小さかったので、手分けした分の聞き込みはすぐに終わってしまったのだ。

 「これならテオと一緒に回ってもよかったな。・・・さて、テオはもう終わったかな。」

 キョロキョロと辺りを見回すと、聞き慣れた声が聞こえてくる。

 「テオって、図体も存在もデカイから見つけやすいよな。」

 声のした方向へ歩いて行くと、案の定そこにはテオがいた。
 身振り手振りを交え誰かと話している。

 「テオ!聞き込みは終わったの?」

 おっ!と言って振り返るテオの顔は上機嫌だ。

 「オルジ! 婆ちゃん、さっき言ってたのがコイツ!!オレの親友のオルジっていうの!」

 親指でオルジを指さしながら説明する隣には、小柄なおばあさんが座っていた。
 腰と背が曲がっていて手や顔には深いシワが刻まれている。白髪のお団子には椿の飾りが付いた簪が差してあった。
 オルジはおばあさんに軽く頭を下げた。

 「ど、どうも。」

 おばあさんはニコニコとオルジを見ている。

 「まぁまぁ、あなたもあの学園の生徒さんなのねぇ。わざわざこんな村に来てくれてありがとうねぇ。」

 小さく細い両手が伸びてきた。きっと握手を求められているのだろう。
 オルジがおずおずと片手を出すと温かい手に包み込まれた。乾燥した両手には骨と血管が浮き出て見える。

 「オレが死んだ旦那さんの若い時に似てるんだって!なぁ~婆ちゃん。
 だからオレの今まで武勇伝を聞いてもらってたんだ!」

 相槌を求められたおばあさんはまたニコニコと笑った。

 「こんな辺鄙な村に若い人が来るなんて、めぇずらしいからねぇ。久しぶりに誰かとお話できて、嬉しぃねぇ。」
 「だろっ!じゃあ次は初めて霊魔と戦った時の話な!あれは――」
 「ちょっとテオッ!!」

 オルジはテオの肩を思いきり引っ張った。

 「いててて・・・!何だよ、オルジ?」
 「何だよじゃないでしょ!ここに来た目的は果たしたの?こっちの聞き込みはもう終わったよ!」

 あっ!と口の形をしたテオはすぐにおばあさんの方へ向き直った。

 「婆ちゃん!俺の武勇伝の続きはまた今度ね。最近、婆ちゃんも霊魔を見たか?」

 すると、さっきまでニコニコしていたおばあさんの顔が曇っていく。

 「やっぱり見た事あるんだな。どんなんだったか教えて欲しいんだ。」

 おばあさんは手を摩りながら俯いた。簪に付いている椿の花が揺れると、ゆっくりと口を開いた。

 「・・・ワタシは怖くて、すぐに家に入ったもんだからあまり覚えてなくてねぇ。」
 「何でもいいんです。小さな特徴でも何でも。」

 オルジは食い下がる。

 「そうだねぇ。あれは耳かねぇ。長い耳をしとったような・・・。あと、鋭い眼光が月に照らされて光っておった。恐ろしい姿だったよぉ。」
 「婆ちゃん、ソイツは2本足で立ってた?それとも4本足だった?」
 「んん~~。4本足だったような気がするねぇ。そこの野菜畑の所をクンクンと匂っておったよぉ。」

 おばあさんはそのまま口を噤んでしまった。その時の記憶を思い出しているのだろうか。
 さっきまで笑っていたおばあさんの元気を奪ってしまったようで2人は申し訳ない気持ちになる。
 ここは早々に切り上げるべきだとオルジが思った時だった。

 「あそこの畑って言ったけど――。」
 「おい、テオッ・・・!」

 オルジは、さらに情報を聞き出そうとするテオの腕を引っ張ろうとした。しかしテオの明るい声に動きが止まる。

 「あれって婆ちゃんの畑?なにを作ってるか見ていい?」

 指さした野菜畑にはみずみずしい野菜がたくさん実っている。
 おばあさんは顔を上げた。

 「えぇ~よ。え~よ。私の自慢の畑なんじゃよぉ。」
 「へぇ~。婆ちゃん、案内してよ。」
 「ええけど、ワタシはちょっと足が悪ぅてなぁ。歩くのに時間がかかるでなぁ。」
 「おっけー!じゃあ・・・」

 テオはおばあさんの前に中腰になった。きっとおばあさんを背負おうとしているのだろう。

 「えぇ~よ、え~よぉ。ワタシは重いからぁ。」
 「オルジ!」
 「うん。・・・ちょっと失礼しますね。」

 オルジはおばあさんの腰を持ち上げ立たせると、テオの背中に身体を乗せる。
 するとテオがおばあさんを支えながらゆっくりと立ち上がった。

 「ひゃぁぁ~~!高いのぉ~。」
 「婆ちゃん、大丈夫。絶対落とさないから。しっかりつかまっててな。あと、婆ちゃん全然重くないぜ。」

 小柄なおばあさんを軽々持ち上げると、怖がらせないようにゆっくりと畑まで歩いて行く。オルジもその後を追いかけた。
 テオは畑の中から目立つ赤色の実を指さした。

 「婆ちゃん、この赤い実はなに?見た事ない実だな~。」
 「そ、それはコジャの実じゃぁ。潰して乾燥させると酸味のある調味料になるんじゃぁ。」
 「へぇ~、興味あるな~!じゃあ隣のこの大きな葉は?」
 「それはイグシ草といってのぉ。作物を包めば長期保存できる葉っぱなんじゃよぉ。」

 テオのおんぶに慣れてきたのか、おばあさんの顔にはあのニコニコの顔が戻っている。

 「この葉を乾燥させて飲むと美味しいんじゃよぉ。あなたらにも後で淹れてあげるわぁ。」
 「本当か!サンキュー婆ちゃん。」

 こう見れば、本当のおばあさんと孫のようだとオルジは思った。
 昔からテオの周りには誰かが必ずいた。ムードメーカーとして場を盛り上げる能力に長けているのだ。
 明るい性格も相まって、テオのいるクラスは自然と騒がしくなる。きっと1年の実戦《バトル》クラスも賑やかなのだろう。

 それに比べて・・・
 オルジは胸をギュッと握った。あの太陽のような幼馴染とは随分と対照的に見えるだろう。目立った特徴のない普通の生徒だ・・・。

 お茶を淹れると言ったおばあさんを下ろすと、テオは縁側に腰を下ろした。
 オルジはメモを取り出す。

 「村の中で聞いた霊魔の特徴は一致している。ここに出る霊魔は1体と考えていいと思うよ。ただ出現時間が定まってないから監視は必要となってくるかもね。」
 「一致した特徴って?」
 「・・・やっぱり聞き込みしてないだろ?」

 一致している特徴を知らないってことは、村の人から聞き込みをしていないってことだ。案の定、テオは舌を出しておどけた表情をした。

 「ったく・・・。おばあさんが唯一言ってくれた特徴も当てはまってる。耳が長くて全身の毛が逆立って見えたって。狼に近いって言っていた人もいる。目が赤く光っていたっていうのも一致しているよ。」
 「耳が長くて、目の赤い狼のような霊魔か・・・。」
 「さっき、何で2本足か4本足か聞いたの?」

 気になっていたのだ。テオにしては何かしらの意図を含んだ質問の仕方だったからだ。

 「ん~~? 霊魔って何だろうなって思ってさ・・・。」
 「何を今さら・・・。悪意や怒り、負の感情を植え付けられた精霊のなれの果てでしょ。」
 「まあ、そうなんだけどさ。一体、何をもって霊魔と位置付けているんだろうなーって。」
 「・・・というと?」
 「俺たちって霊魔と対峙する機会が少ないじゃん。だから実際何を基準に霊魔と認めるのか、曖昧なんじゃないかと思ってよ・・・。」
 「テオのくせになにを真面目に――」
 「あのなぁ、俺だって真面目に考える時だってあるんだよ。」
 「はは、そうだね。とりあえず分かりやすいのは霊魔の刻印だよね。」
 「刻印が分かりづらい場所にあったとして目視できなかった場合、ソイツを霊魔と認める判断材料は何なんだ?」
 「んーー。確かに咎人の意思やイメージが反映される霊魔の姿は認識しづらいかもしれない。」
 「だろ?」
 「でも、あの学園には結界が張ってあるからそう簡単に霊魔は入って来れない。霊魔を見る機会は貴重だ。」
 「オレたちは霊魔に対して知識が不十分すぎるんじゃないかと思うんだ。だから霊魔が起こす次の行動も予測すらできない。」

 テオは親指の爪を軽く噛んでいる。その横顔は真剣そのものだ。
 オルジはテオが考えていることが何となく分かった。

 「だから今回みたいに霊魔の情報を探して欲しいってクエストがあるんだろ。しっかり調査して学園に情報を届けようよ。」
 「うん、それはもちろんだ。でもよ――」

 その時、部屋の襖がゆっくりと開いた。

 「暑いじゃろうてぇ。あまり冷えてないけど飲みなぁ。」

 グラスとお茶をお盆に乗せたおばあさんがニコニコして部屋に入ってきた。
 2人は瞬時に空気を変えてみせる。目くばせもサインも必要ない。阿吽の呼吸でお互いの思っていることを理解する。

 「婆ちゃん、ありがとー!喉カラカラだよ。」
 「ありがとうございます。」

 テオとオルジはお茶の入ったグラスを受け取ると、一気に飲み干した。

 「プッハー!うまいよ、婆ちゃん!」
 「本当だ。美味しい!」
 「じゃろう、じゃろう。丹精込めて作った畑のお茶だからおいしぃよぉ。」

 空になったグラスに再びお茶を満たしながらおばあさんは誇らしげに笑った。

 「そういえばおばあさん、この村には雨がたくさん降るんですか?」

 2杯目を受け取ったオルジが気になっていたことを聞いてみた。

 「おばあさんの畑もだけど、この村の畑にはとても立派な作物がたくさん実っています。十分な日光と水分がないと、あんな色艶のいい野菜は出来ません。」

 うんうんと頷いたおばあさんは乾いた手を合掌した。

 「これも火精霊サラマンダー様のお陰じゃのぅ~。火精霊サラマンダー様のお恵みによって私らは生かされておるのじゃ。」
 「火精霊サラマンダー様?それって劫火渓谷デフェールキャニオン霊域サクラのことが関係しているのですか?」

 再び、うんうんと頷いたおばあさんは話し始めた。

 「この村には地下から劫火渓谷デフェールキャニオンの沢にある新鮮な水を引いているんじゃ。
 村の真ん中に井戸があってのぉ。いつでも新鮮な水を利用できるようにしておるんじゃ。絶え間なく供給される水は私らの生活を支えてくれる大変ありがたい水なんじゃぁ~。」
 「水なのか?劫火渓谷デフェールキャニオンから引いてるってことは温泉とかじゃないのか?」
 「とても冷たいわけではないけどもなぁ、熱いお湯でもないのぉ。キラキラと輝く水は、そのまま飲めるほど美味しいんじゃよぉ。」
 「へぇ~!」
 「どんな仕組みで水を引いているんですか?」

 おばあさんは首をひねった。

 「さぁのぉ。爺さんが生きていた頃だったから忘れてしもぅたなぁ。
 村の男たちが協力して今の井戸を作ったんじゃよぉ。爺さんも参加して働いておったんよぉ。」
 「へぇ~!じゃあそのおじいさんの姿に婆ちゃんは惚れたわけだ!何たって、オレにそっくりなイケメンだからなぁ!」

 からかわれたおばあさんはコロコロと笑う。頬に赤みがさして、まるで少女のようだ。すると、頭の簪を取って見せてくれた。

 「そうじゃのぉ。ふふふふ。
 この簪は死んだ爺さんに祝言の時に贈られたものでなぁ。高価なものじゃないけどって行商から購入してくれたんじゃぁ。嬉しくてんなぁ。私の宝物なんじゃぁよぉ。」

 手入れが行き届いている簪がキラリと光る。

 「とても、きれいです。」

 お世辞ではない。椿の簪はおばあさんによく似合っていた。

 「ありがとうねぇ。贅沢な生活はできんけど、火精霊サラマンダー様の御加護のおかげでワタシらは豊かに生きられる。きっと、霊魔からもお守り頂いとると思うんよぉ。感謝せんといけんねぇ。」

 おばあさんは劫火渓谷デフェールキャニオンの方向に手を合わせた。
 テオはその姿に立ち上がる。

 「婆ちゃん、ご馳走様!オレたちそろそろ行くよ!」

 オルジも立ち上がる。

 「美味しかったです。ありがとうございました。」
 「ありゃぁ、もう行くんかぃ?」

 おばあさんは寂しそうな顔をした。

 「うん。オレたちも婆ちゃんを守るから。また絶対来るから、その時にオレの武勇伝の続きを聞かせてあげるな!」
 「またお茶を飲みに来させてもらいます。」

 その言葉に、うんうんと頷いたおばあさんに笑顔が戻る。

 「気を付けていってこんしゃいねぇ。」
 「うん、行ってきます婆ちゃん。」
 「行ってきます。」

 おばあさんに手を振り、村を出た2人の足は速足だった。

 「劫火渓谷デフェールキャニオンで霊魔の正体を確認しよう。学園に報告して、討伐してもらんだ。」
 「おぅ。いつ霊魔が人害を及ぼすか分からないからな。早急にクエストをクリアしようぜ。」

 2人が向かう先には劫火渓谷デフェールキャニオンが見えている。
 テオは自分の拳が熱を帯びているのを感じた。そしてこれは、気温のせいではなくおばあさんが淹れてくれたお茶の温かさのせいだと思った。
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