エレメント ウィザード

あさぎ

文字の大きさ
39 / 135
第2章

魔術師への条件

しおりを挟む
 「ここまでとは。」
 「信じられませんわ。」
 「こんなの見た事ないよ~。」
 「驚愕。」

 セリカの机を囲んだシリアたちは目の前に広げた紙を見て口々に感想を述べた。
 席の中央には腕を組んだセリカが座っている。
 机の上には平均点を大きく下回る答案用紙が何枚も広がっていた。

 「ひどい点数だな・・・、これ。」
 「完全追試対象ですわね。」

 答案用紙を手に取ったシリアとテオはため息をもらした。

 「ふぅむ。」
 「ふぅむ・・・じゃないよセリカ~。テストボロボロじゃん!」
 「あぁ、全く理解できなかった。」
 「理解できていないなら一緒に勉強しましたのに・・・。」
 「一緒に勉強?」
 「それすら思いつかなったって顔ダナ。」
 「あぁ、そんな経験はない。」
 「あれだけの魔法が使えるし、授業も涼しい顔して受けていたから余裕だと思っていたぜ。」
 「魔法は感覚だ。授業は分からない単語で溢れていた。」
 「あれは固まった顔でしたのね。」
 「ふぅむ。ここまで難解だとは・・・。」

  しかしこの場で腕を組み、眉をひそめたのはセリカだけではなかった。

 「ちょっと!何で私が呼び出されているのよ!?」

 そこにはエリスが仁王立ちをして睨んでいる。

 「だって~実戦バトルクラスで成績が一番いいのはエリスじゃん。」

 「それがどう関係あるのよ!?」
 「勉強を教えてやれよ、エリス。」
 「な、何で私が・・・。」

 歯切れの悪いエリスの様子にロイがテオに耳打ちをした。

 「エリスってセリカが苦手なの?」
 「う~ん、あれはセリカの考え方ややり方に戸惑ってる・・・って感じかな。」
 「ふ~ん。」

 その空気はセリカにも伝わったようだ。

 「問題ない。1人でできる。」

 根拠のない自信を振りまくセリカにテオが口を出した。

 「いやいや、さすがにこの点はまずいだろ。実戦バトルクラスの追試者はお前だけだぞ、セリカ。」
 「それに、追試の点数も悪ければポイントも貰えませんわ。」

 その言葉にセリカがピクッと反応をする。

 「聞こうと思っていたんだが、そのポイントとは何だ?ライオス先生も言っていたが・・・。」
 「あなた、そんな事も知らずにこの学園に来たの?」

 エリスは呆れた声を出した。セリカはコクコクと頷いている。
 机に広がった答案用紙を片付けながらシリアが口を開いた。

 「このサージュベル学園は普通の学校と違ってポイント制を導入していますの。授業を受け、単位を埋め、テストで点を取れば進級や卒業できる学校とは違い、各々がポイントを所持していないと進級はおろか、退学になってしまうのがこの学園の規則ですの。」
 
 セリカは首をかしげた。

 「そもそも、この学園には実戦バトルクラスと創造クリエイトクラスの他にもクラスが存在するのか?」
 「あとは医療メディカルクラスがありますわ。私たち高等部は2年制です。ですが最短2年で卒業できるということになっています。」
 「最短?」
 「えぇ。それぞれのクラスには1年のうちに取得しなければならならないポイント数があるんです。そのポイントを2年生になるまでに所持していないと進級ができず、修練ラッククラスに入ることになります。」
 「修練ラッククラス?」
 「まぁ、留年ってことだね~。落ちこぼれのクラスってこと!」

 手を頭の後ろで組み、飄々とロイが頷く。

 「ロイッ!」
 「おっと。」

 シリアが窘めるとロイは慌ててテオを見上げた。テオは難しい表情をしている。
 咳払いをしたエリスが、自分のノートに分かりやすく図を描いて見せた。

 「いい?通常だと『実戦バトルクラス1年生→実戦バトルクラス2年生→卒業 魔術師ウィザード検定→魔術師ウィザード』になるの。やじるしの部分には必要なポイントと検定合格への合否が入るわ。
 でも修練ラッククラスに入ると、『実戦バトルクラス1年生→修練ラッククラス→実戦バトルクラス2年生→卒業 魔術師ウィザード検定→魔術師ウィザード』という風に3年在学することになるの。」
 「なるほど。最短2年で卒業というのはそういうわけか。でも修練ラッククラスに入ったとしても、またポイントを持てばそれぞれのクラスに戻れるのだろう?簡単じゃないか。」

 セリカはエリスが書いた修練ラッククラスのところに赤線を引く。

 「そう思うわよね。でもね、修練ラッククラスが次の2年生のクラスに戻る時は、通常のクラスで所持しないといけない2倍のポイントが必要なの。」

 エリスはセリカが持っていた赤いボールペンを取り、修練ラッククラスの下に『2倍のポイントが必要』とつけ加えた。

 「2倍・・・。条件がさらに厳しくなるのか。」
 「そうよ。さらに修練ラッククラスでも所持ポイント数が足りていなかったら、問答無用で退学になるわ。2度目の修練ラッククラスは無いってことね。」
「ポイントはどうやって得られるんだ?」
「テストの結果と課題はもちろん、学園に貢献する奉仕活動などでポイントは得られますわ。テストの順位もポイント加算されますし、今回の『Twilight forest静かなる森』の実習もその対象でしたの。だからそれが無効となってしまったのはちょっと痛手ですわね・・・。」
 「じゃぁ、ジン先生が言っていたラピス結晶を持ってこられなかった奴は転科っていうのは・・・?」
 「即行、修練ラッククラス行きってこと!」

 ロイは手刀で自分の首を切る仕草をした。

 「そんなに厳しい実習だったのか・・・。」

 何も考えていなかったとはいえ、自分の考えの浅はかさにセリカは肝を冷やした。

 「当たり前じゃない。この学園は優秀な魔術師を輩出する為に存在しているのだから。学習内容は難解で、実習だって厳しいと有名だけど、厳正で精錬された卒業生にはそれだけの価値と肩書きが得られる。魔術師ウィザードへのエリートコースがこの学園なのよ。」
 「エリスのご両親はこの学園の卒業生なんだ。ね、エリス。」

 菲耶フェイがエリスの肩に軽く手を添えた。

 「へぇ。エリスのご両親はすごいんだな!」

 セリカは羨望の眼差しを向ける。その視線はエリスの表情をこわばらせた。

 「べ、別に! 両親と私は関係ないわ!それより、もういいかしら?私、自習したいから! 菲耶フェイ、今日も付き合って!!」
 「承知・・・。」

 そう言うと、エリスと菲耶は教室から出て行ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/01/01、第一章の36話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...